那須モータースポーツランド(MSL)の那須トライアルパークでトライアルに挑戦! 後編ではいよいよ坂の上り下りとフロントアップをやってみる。1時間の実技講習でフロントアップはできるのか?
※上のアイキャッチ画像はネタバレではなく、撮影用に固定したものです(笑)。

坂のアップダウンでは大胆に腰を動かす!

土で作られた台形状のジャンプ台を「テーブルトップ」といい、これを使って上り下りの練習をした。高さは2mほどだけど、自分にはもっと巨大に見える・・・・・・。山中をバイクで少し走った経験はあったけど、ここまで急坂の上り下りはほぼ経験がない。

竹内支配人によると、上りは坂の角度に関わらず、身体を地面に対して垂直にキープするのが理想。腰が引けたヘッピリ腰だと坂の頂点で前輪が浮き上がり、最悪の場合、後転して「バックドロップ状態」になってしまう! これはオソロシイ。

イメージとしてはハンドルバーを腰に寄せるぐらい大げさにやるのがオススメとのこと。逆に前傾しすぎてもリアに荷重がかからず坂を上れない。
ギアは2速で、スロットルを開けて上り、頂上にさしかかあった辺りでスロットルを戻すとスムーズに登り切れる。頂上付近でスロットルを戻さないとジャンプしてしまう可能性があるので、戻すタイミングも大事だ。

↑竹内支配人のお手本。顔は真っ直ぐ前を向ける。地面と垂直にしたフォームと、スロットルを開閉するタイミングが重要。

 

↑悪い例。前のめりになりすぎると後輪に荷重がかからず、スリップして上りきれないこともある。


恐る恐る走ってみると、何とか上れた。その場でカメラマンの山内さんが写真を見せてくれたのだけど、頭の中では腰を前に突き出していたのに、実際は全然腰が引けていた・・・・・・! まぁ上がれたのでヨシとしましょう。

↑筆者の上り。なぜかアゴは出ているが(笑)、腰は引けている。これでも精一杯、腰を前に出しているつもりだったのだが、写真で見るとまだまだ。

下りでは逆に腰を大きく後ろに引くべし!

そして下りは、リアフェンダーに乗るぐらい腰をしっかり引く。下りではフロントが下がりリアが上がるため、ハンドルに荷重がかかっていると、前輪が平坦な地面に着いた時に前転してしまうのだ。

↑竹内支配人のお手本。「大げさにやった方が練習になりますし、膝は少し曲げた方がカッコいいです」とのこと。


さらに、下りでのブレーキは2パターンある。一つ目は、エンブレをかけた状態で下り、前輪がフラットな地面に着いた時点でゆっくり両方のブレーキで減速するというもの。二つ目は、クラッチを握りながら惰性で下りつつ前後ブレーキで速度調整するというもの。

後者の方が難易度が高いが、とにかく車体とハンドルを真っ直ぐにしてブレーキ操作するのが肝要。ロックして転倒の可能性があるからだ。

実際にやってみると何とかクリア。ブレーキはエンブレを使った。

↑上りよりはマシな気がするが、下りも自分の脳内イメージより腰が引けていなかった。もっと練習が必要ですな。


おっかなびっくりで何とか上り下りをクリアしたが、頭の中ではもっと大胆に腰を動かしていたハズなのに写真で見るとそうでもない。スムーズに走るにはもっと時間が必要だけど、障害物をクリアするのはとてもオモシロイと実感した。

大苦戦のフロントアップ! タイムアップも迫る

続いては、当初の目標だった「フロントアップ」だ。
文字どおり前輪を浮かせるテクニックだけど、ロードレースでよく見る「ウイリー」とは少し違う。ウイリーは、高速走行中に前輪を浮かせる技術だが、トライアルのフロントアップは停止かそれに近い状態で前輪を上げ、ほぼ前進しないのがポイント。前輪を上げるための技術と高度なバランスが必要で、ミッチリ練習してもマスターするのに1年以上かかるという。

↑モトGPなどのウイニングランで見られるウイリーは、走行したまま行う。一方、トライアルのフロントアップは静止状態から前輪を浮かせる。


原理的には後輪にかかる荷重を一気に増やせば前輪が浮く。
そのためには、クラッチを握った状態でスロットルを開け、パッとクラッチを離せばいい・・・・・と言葉にすれば簡単だけど、加減がわからない。スロットル開度が少ない場合は急発進で済むが、開けすぎると一気にフロントが上がってしまう。

さらに身体を使うのも大事だ。
スタンディングして歩く速度でゆっくり走りながら、上体を屈めてフロントフォークを一旦沈める。サスが伸び上がるタイミングに合わせてスロットルとクラッチを開け、フロントが浮いたらすぐスロットルを戻す。こうした「操作と動作の連動」はライディングカレッジにも通じていると思う。

目線は手前に置き、平坦な地面を探す。ミッションは2速。ハンドルは真っ直ぐにするのがポイントだ。
「パワーがあるバイクだと、スロットルだけで前輪が上がりますが、125ccはパワーが少ないため若干難しいです」と竹内支配人。ただし、慣れれば少しのアクションだけでフロントが浮くという。

「さすがにすぐできる人はいません」と竹内支配人。さっそくトライしたのだけど、ウォーンウォーンとスロットルを開ける音がこだまするばかりで、一向にフロントは上がらず。指一本でレバーを操作していたこともあり、腕はパンパンになりつつあり、汗だくになっている。

↑レクチャーされたとおりにやってみるが、難しい。上がる気配ナシ。


そこで、ちょっと休憩。ここまで順調だったけど、フロントアップは「無理かも」と思い始める。とはいえ、まだ時間はあるし、せっかくなのでギリギリまで粘ることにした。

ここで竹内氏支配人が「止まった状態でやってみましょう」と提案。両足を接地したまま、どの程度のスロットル開度とクラッチミートでフロントが上がるのか、感覚をつかんでみることにした。

↑上がっても危険が少ないように障害物の前で練習。


トライすること数回。3cmぐらい上がった! それから何度か試すと、ポンポンッと面白いように50~60cm上がるように。

↑何とか成功。アイドリングからスロットルをグイッと開け、同時にクラッチをつなぐとフロントが上がる。浮いたらスロットルを戻すのを忘れないように。


あまり高回転を使う必要はなく、アイドリングから回転を上昇させるのに合わせ、クラッチをポンとつなぐ。瞬発力を利用する感じだ。タイミングはピンポイントで、コツをつかむまで時間がかかったけど、一度感覚を覚えれば何とかなるようだ。

このまま走りながらのフロントアップに挑戦しようと思ったが、タイムアップ。体力も限界に近かった(笑)。

<まとめ>トライアルの学びはオンロードにも役立つ

トライアルを初体験してみたけど、技を磨いてできることが少しずつ増えていくのが楽しかった。なんとなく走れてしまうオンロードのサーキット走行とはかなり違うものだな、とも思う。

竹内支配人によると、「ロードレースで行き詰まった時に、トライアルで学んだステップワークが有効活用できる」とのこと。オンロードのプロライダーが、オフシーズンにトライアルを練習に取り入れるとよく聞くけど、そういうことなのだ。また、バイクに乗りながら、下半身や体幹を強化できるのもトライアルならでは。ウエイトトレーニングではなく、バイクに乗って鍛えられるのがいいらしい。

那須MSLでも、オンロードのスポーツ走行をした後、トライアルで遊ぶ人が結構いるらしい。1980年代にトライアルブームがあった影響もあり、年齢層は40~50代が多く、昔トライアルを経験した人もいるという。 

これでトライアルの講習は終了するが、那須MSLにはまだまだできることがたくさんある。次回記事では、どんなことができるのか紹介しよう!

↑筆者はオンロードのライセンスを取得済み(過去記事参照)。さらにトライアルのライセンスも取得した場合、専用のライセンスカード(紫色)が発行される。これは嬉しい!

 

前編はコチラ!
【初体験ルポ】トライアル初心者がフロントアップできるか?【前編】

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