ええ、仰りたいことは分かっております。「【その2】までやって、まだ真っ直ぐ走って止まるだけかよ!?」と……。恐縮です。深淵なるサイドカーの世界を少しでも皆さまに理解していただこうと、子細克明にヨタ話も入れつつ書き連ねているうちに長くなりました。そして今回も、ほぼ曲がるだけの話です(汗)。ぜひ最後までお楽しみくださいませ~(開き直り)!
Contents
三輪だから立ちゴケを恐れる必要は全くナッシング
正真正銘バイクの横に、もう一輪と“舟”の部分を加えて成立しているのがサイドカー。
当然のことながら、信号待ちのときに足を地面に着く必要はありません。自立しているため立ちゴケの心配は無用ということ!
さらには3人、舟の大きさによっては4人まで乗車が可能になりますし、同乗者を乗せなければ驚くほどの荷物を載せることができるのもサイドカーの魅力(ペットと旅をするオーナーの方も少なからずいらっしゃいますね。颯爽とゴーグルを装着したワンちゃんにも何度か遭遇……(^_^)v)。
しかし側車化は同時に、車体を傾けることで遠心力とバランスを取り、セルフステアでグイグイとカーブを曲がっていくバイクならではの運動特性と決別することでもあるのです。
「サイドカーライディングスクール」の基礎練習パートにおいて幾度もの失敗を乗り越え、何とかエンストをせずに発進ができ、戸惑いつつも加速そして減速までスムーズに行えるようになった筆者を待ち構えていたのは「まっ……曲がり方が分からんッ」というサードインパクト(?)でした。
直立状態のバイクで遠心力に立ち向かうのは大変!
バイク歴36年、トータル走行距離なら地球10周分近く運転してきて骨の髄まで染み込んでいる二輪車用スキルはポンとサイドカーに乗ったからといって、なかなかリセットできるものではなかったのです。
なまじ操作方法がバイクと同じということもあり、「あ、曲がるべきポイントが近づいてきた」というとき、二輪車同様のライディングをサイドカー(左カー)でラフに行なおうとすると、ろくに曲がれずビビるだけでなく左回りのコーナーならカー側が浮きます。
繰り返します。冗談みたいにあっさりと側車が遠心力によって空中浮遊するのです。
適切な対処をしないと最悪の最悪、転覆(ひっくり返ること)の可能性まで出てくることも……。
絶対的で冷徹無比な物理法則に“気合と根性”は通用しません。
側車の存在に対応した独特の運転テクニックが不可欠なので、慣れてないうちはとにもかくにも慎重かつ謙虚な姿勢でサイドカー独特の操縦に向き合うことが必要なのです。
具体的な“サイドカーの曲がり方”を列記していくと……
[左カーで右回りするときには]
①コーナー手前の直線部分で、バイクを運転しているときの半分くらいまで減速。前回ご紹介したとおりフロントブレーキはあくまで補助、リアブレーキが80%くらいの感覚で行いましょう。車体が安定します
②しっかりとニーグリップをしたまま上半身をグイッと右側へ向けて、視線は右コーナーの出口へロックオン!
③左の手のひらで左グリップを押すようにしてハンドルを切り、同時に右手はハンドルを引く
④スロットルを閉じたままにすると、左側にある側車が慣性の法則どおり先へ先へ進もうとしますので、その力を利用しつつターン!
⑤曲がり切ったらゆっくりと加速していき、コーナーを脱出します
側車のある方向へ曲がろうとすると○○が浮く!?
[左カーで左回りするときには]
①コーナー手前でバイクを運転時の半分……よりもっと、ズバリ3分の1くらいまで減速。「遅すぎでしょ!」と思うかもしれませんが、これは④への伏線です
②しっかりとニーグリップをしたまま、上半身をグイッと左側へ向けて視線を左コーナーの出口へ。そのとき側車の存在を忘れてしまうと路肩やガードレールに衝突するので要注意!
③右の手のひらで右グリップを押すようにしてハンドルを切り、同時に左手はハンドルを引く
④右回りとは真逆で、スロットルを少しずつでも開けながらカーブを曲がっていきましょう(そのために過度なほどの減速が必須)! すると側車側が慣性の法則どおり“重し”的な役割を果たしてくれますので、バイク側が左へ左へ巻き込まれるように進路を変えていくのです
⑤出口が見えたらハンドルを戻し、直線になったらスロットルオープン!
なお、左カー車が左回りをしている最中にアクセルを急に開けると、前述のとおりカー側が空中浮遊を開始してしまいます。そこで慌ててスロットルを戻すとカーは地面に接地しますが、車両全体が外側にはみ出してしまう……という悪循環に陥りますので警戒が必要です。
安全に反復練習できる“場”は絶対的に必要
大切なのは「バイクとは全く違う乗り物だ」と早々にアタマを切り替えて、巨大な振り子である側車の挙動を常に意識することですね。
「サイドカーライディングスクール」の会場は安全かつ広大なクローズドコースですので、ちょっとやそっとの“やらかし”をしでかしたところで全く問題なし。
筆者も何回「うわっ、ヤバい!」と心拍数を増大させたことか……。
それでも失敗を恐れず反復練習をしていると、慣性の法則を味方につけるサイドカーならではの走り方が少しずつ分かってきて……面白い! まさにこれは「知的なゲームだ!」と、ひとりで興奮しておりました(笑)。
感嘆符の途切れない濃厚な時間は、まだまだ始まったばかりなのです! (つづく)
【参加者インタビュー④⑤】大木伸一さん 嶋田友美さん
【参加者インタビュー⑥】吉田盛一さん 63歳