レッドバロンによる"絶版車を安全に乗るための取り組み”を探ってきたが、いよいよラスト。レッドバロンの「パーツ保証」によってコンディション好調な絶版車は、排気量を問わず多種多様。実際の乗り味を一挙掲載しつつ、まとめをお送りしたい。

取材協力:ヤングマシン

完調なのはホーネットだけじゃない、多彩な絶版車を試乗してみた

レッドバロンでは最長3年間、中古車にパーツ供給を含む修理体制を有償で維持する「パーツ保証」を付帯している。その仕組みを2回にわたって探ってきた。

部品が生産終了した不調バイクに乗ってみた【レッドバロン「パーツ保証」の秘密を探る! 前編】

本社工場に潜入! 絶版パーツをストックする巨大システムを探った【レッドバロン「パーツ保証」の秘密を探る! 中編】

前編ではホーネットの完調車を試乗したが、コンディションのいい絶版車はもちろんホーネットだけではない。店頭に展示されている中古車は、基本的に全て状態が良好。豊富なパーツストックと高度な整備技術、充実の設備に支えられている。

それを証明するため、排気量を問わず多種多様な試乗車がプレス向けに用意された。車両を解説しつつ、ミニインプレをお届けしよう。

RGV250Γ [SUZUKI '91年型] まさに戦闘機、32年前なのに今なおスゴい!

 [車両解説]
2ストレプリカブームの火付け役となったRG250Γ(ガンマ)の後継機として、’88年にデビューしたVガンマ。並列2気筒のRG250Γに対し、ライバルと同様、待望のV2気筒エンジンを搭載した。

完全新設計の心臓部は、2ストの泣き所である中低速トルクを補うため、1シリンダーあたり2つの排気デバイスを採用。それでも炸裂するような高回転パワーが特色で、腕に覚えのあるライダーに好まれた。

ボックス構造のアルミフレームやライバルと一線を画すスラントノーズしたカウルも独特。‘90年型でいち早く湾曲スイングアームを採用したほか、倒立フォークや前後17インチなどで足まわりを大幅に強化した。

■水冷2ストV型2気筒249cc 45ps/9500rpm 3.8kg-m/8000rpm ■乾燥重量139kg

[ミニインプレ]
今回用意された車両で最も古いのが、このVガンマ。45psを発生する2ストエンジンに、剛性感のある車体が生みだす走りはまさに戦闘機だ。現在の250ccクラスでは「制御しきれないかも?」と焦るほどのパワーはそうそう感じない。が、2ストレプリカは別格。低速域ではそれなりの力感なのに、パワーバンドに入るとドギャンと鋭く加速する。そこから昇天しそうなほど伸び上がる感覚がキモチイイ。

そして車体が軽くコンパクトだ。セパレートハンドルの前傾ライポジなので、アップハンのように振り回せるわけではないが、コーナリングでヒラヒラと駆け回れる。乾燥重量139kgということは装備重量で160kg程度と思われるが、これは現在のCBR250RRと比べても10kg近く軽い計算だ。

この個体は、走行距離37700kmとそれなりに距離が進んでいる。またVガンマは、ライバルのNSRTZRに比べてセールス面で及ばず、現在は流通するパーツが少ない。にもかかわらず状態は非常に良好で、外装がピカピカなのもスゴイ。

・・・・・・なお、余談ながら湾曲スイングアームの美しさはレプリカ勢でピカイチと思う。NSR250Rは直線的な「く」の字型だが、このVガンマではGPマシンのように優美な曲線を描いている!

GSX-R750 [SUZUKI '11年型] 軽さもパワーも優秀、まさにベストバランスだ

[車両解説]
アールナナハンの愛称で知られる、大型スーパースポーツの元祖こそGSX-R750。初代は世界初のバイク用油冷エンジンを当時はまだ珍しかったアルミフレームに積み、衝撃デビューを飾った。なにせ鉄フレームのナナハンは220kgオーバーが当たり前の時代に、179kgの乾燥重量を実現していたのだ。

年を追うごとに進化を重ね、’92年型で水冷ユニットを採用。’00年以降は新開発のGSX-R1000と共通イメージを与えられ、’06年型から600がベースモデルに。レースレギュレーションが4気筒1000cc4気筒600ccに変更され、750は徐々に影が薄くなってゆく。しかし各社がナナハンの販売を終了する中、スズキだけは開発を続行した。

’18年頃まで日本に逆輸入されたものの、既に生産終了。R750由来のエンジンを搭載するネイキッド=GSX-S750’21年型で殿堂入りすることになった。ただし規制が異なる北米では未だGSX-R750は現役でラインナップ中だ。

■水冷4スト並列4気筒749cc 150ps/13200rpm 8.8kg-m/11200rpm ■装備重量190kg

[ミニインプレ]
試乗したのはサイドラムエアを採用し、ホイールベースを短縮した’11年型。その後はカラーチェンジのみで、実質的な最終型となる。

中速トルクが薄い600、ハイパワーだけど重い1000に対し、‘00年代後半から「レース規則に縛られないナナハンがベストバランス」という評判が確立した記憶がある。また、‘01年モデルから自主規制で300km/hリミッターが装着されて以来、R750は最高速もリッターモデルに迫っていた。この辺りは当時のヤングマシン誌などで実証済みだ。

試乗したコースでは全開にできなかったけど、パワーと軽さのバランスは体感できた。出力特性は3パターンから選べるが、どれも基本的にフラットで扱いやすい。もちろん右手を捻れば、迫力あるサウンドを伴いつつ怒濤の加速を見せてくれる。

コーナリングも自然かつ安定感に溢れ、スーパースポーツによくある鋭さから生まれる不安感がほぼない。だからこそ大胆に攻めていける。走りは現代的で、何ら不足はないと感じた。

車両のコンディションはやはり良好。兄弟車のGSX-R600を含め、あまりメジャーな存在ではないけど、安心して乗り続けられそうだ。

Ninja250SL [KAWASAKI '15年型] ツインと一味違う、斬れ味鋭いスポーツシングル

[車両解説]
並列2気筒のNinja250が好調だった’15年に国内導入されたシングルスポーツ。心臓部はKLX250/DトラッカーX譲りの水冷単気筒DOHC4バルブだ。

SL」は「SUPER LIGHT」(軽量)の意で、その名のとおり軽さとスリムさを追求。専用の鋼管フレームや外装を新設計し、149kgという圧倒的な軽さとコンパクトなボディを実現している。ツインの現行Ninja250と比べると17kgも軽く、ホイールベースは40mm短い1330mmだ。

KLX250/DトラッカーXが排ガス規制に対応せず、国内販売は’17年頃に終了したが、その軽快な走りから中古価格は上昇傾向のようだ。

■水冷4スト単気筒249cc 29ps/9700rpm 2.2kg-m/8200rpm ■装備重量149kg

[ミニインプレ]
発売当時は250cc2気筒が全盛だっただけに「なぜ単気筒?」と思ってしまった筆者。しかし乗ってみると割り切り感のある、いいマシンだなと考え直した記憶がある。

エンジンは低速域からパンチ感抜群。ややタメのある中回転域を経て7000rpm程度から爽快に伸びていく。

車体はシートが高めで腰高感が強い。そこからブレーキングでFフォークを縮めてパタッパタッと軽やかに寝かし込める。Fブレーキはシングルだけど、慣れれば制動力に不足なし。正立フォークとユニトラックサスはセッティングが硬めなので、安心して荷重をかけられるのもいい。

この軽さは125ccに近い感覚。セパレートハンドルによりライポジは前傾が強め。総じて実にスポーティだ。

シート高は高めとはいえ、車体が非常にスリムなのでさほど足着き性は悪くない。まだ生産終了から日は浅いものの、専用パーツが多い車両だけに今後のコンディション維持に不安は残る。それだけにパーツ保証が受けられるのは安心だ。

以下、次回に続く!

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