ライディングジャケットに見る物価高騰の影響

▲第52回東京モーターサイクルショーでのレディスサポートスクエアの様子。メーカーやブランドの垣根を越え、女性のためのウェアがズラリ。プロテクターを備えたものも多いですよ
唐突ですが、物価高騰の影響を日々感じる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。バイク用品もその大半が海外で製造されており、円安のいま、価格はもちろんのこと標準装備品などにも影響が見られるようになってきました。
ライダーの多くが着用しているライディングジャケットも同様で、かつてのようにエントリーモデルからハイスペックモデルまでタイプ・シリーズごとに細かくラインナップするというよりは、趣味趣向や用途、それに合わせたデザインで幅を持たせることが多くなり、性能についてはすっかり二極化(実際は二極化できないタイプ・シリーズが多い)」してしまいました。
ジャケット内のプロテクターを確認してみよう

▲左が標準装備のウレタン製胸部プロテクターで、右側がCE規格レベル2をクリアした衝撃吸収素材「バイオエラスタン」を採用した「NANKAI SDP-C004 AIRTEC DC チェストプロテクター」(左右セット・税込2,200円)です
エントリーモデルと呼べるものがないブランドも増えて、総じてお値段はお高めに。また、ブランドの中核を成すようなレギュラー(普及)タイプにおいても使用素材や標準装備品に影響が見えており、スポーツジャケットなのにプロテクターが最も簡素なウレタンタイプというものも増えています。

▲CE規格レベル2であることを示す標示。EN1621-1は脊髄用以外のひじ・肩用などのプロテクターの衝撃吸収・保護基準を定義するものです。ちなみに脊髄用はEN1621-2、胸部用はEN1621-3という規格です
この辺は皆さんも一度、自分のジャケットのプロテクターを確認してみてください。プロテクターが入っていなくてもプロテクターを入れるためのポケットがあれば、別売りのプロテクターを入れることで対応できます。ポケットもついてないよという場合は、ジャケットの内側に着込むインナータイプのプロテクターウェアかジャケットの外側からでも装着できるアウタータイプのプロテクターを使いましょう。
なお、バイクウェア用のプロテクターには、欧州(EU圏・EC加盟国)が定めたCE規格と、国内用品メーカーらによる団体・JMCA(一般社団法人全国二輪車用品連合会)が定めた規格がありますが、どちらも同等の性能を持っています。その辺の詳しい話は下記を参照ください。
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プロテクターを身につけて、転倒や事故のリスクに備えよう
万が一に備えてプロテクターをより安全なものに交換

▲今回は、ドイツのCE衝撃試験機関と南海部品が共同研究の末に開発した、人体に無害なポリウレタンエーテル系素材とメモリフォーム素材をミックスしたプロテクター素材「バイオエラスタン」シリーズに交換しました。ひじ用(1,980円)・肩用(1,980円)・胸部用(2,200円)・脊髄用(3,300円)のすべてがCE規格レベル2で、合計すると税込9,460円。安心安全への投資ですね
さて、前置きが長くなりました。筆者は昨年にホンダCBR1100XXスーパーブラックバードを購入して以降「サーキットを走りたいなぁ」とは常々思っておりまして、先日、レッドバロン主催の「那須MSLスキルアップ走行会」(※プレ開催)に参加してきました。この辺の詳しい話は、ぜひ下記のリンク記事をお読みください。
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【購入レポート】那須MSLスキルアップ走行会をプレ体験! 楽しい!&自身と愛車の課題を再認識 <サーキット初走行 編>
愛車を購入してから初めてのサーキット走行会ということで、エントリーしたのはビギナークラス。同クラスの場合は、皮ツナギではなくライディングジャケットでも参加OKなのですが、プロテクターの装着が要件のひとつとなっていました。
そこで、当日着ていく予定のジャケット「NANKAI SDW-8136 ライトソフトシェルオールシーズンジャケット 」の標準装備プロテクターを確認してみると…、最も簡素なウレタンタイプ(CE等の規格ではない)がセットされていました。

▲ツーリング誌の取材でも活躍してくれている「NANKAI SDW-8136 ライトソフトシェルオールシーズンジャケット」。別売りのインナーも装着できて便利ですが、プロテクターの性能は上げておきたいところかもしれません

▲2枚の胸部プロテクターを比較しました。上が標準装備のウレタン製プロテクターで、下がバイオエラスタン製プロテクター。厚みが全然違いますね…
公道に比べればスポーツ走行を安全に楽しめるサーキットですが、走行速度は比べ物になりません。万が一の転倒なども考えて、より安全性を高めるべく、標準装備プロテクターをすべてCE規格レベル2のものに交換しました。

▲標準装備のウレタン製プロテクターを別売りのCE規格レベル2のプロテクターに交換しました。ひじ、肩、胸部、脊髄と全てのプロテクターをより安全性の高いものに変更

▲脊髄用を比べてみます。左は標準装備のウレタン製プロテクター、右はCE規格レベル2をクリアしたバイオエラスタン製プロテクターです
これにより、プロテクターは数段ハードなものとなり重さも増しましたが、安全には代えられません。ジャケットを着てみると、プロテクター装着部に重さは感じるもののジャケット生地が固定される感じもあって、逆に関節の動きにメリハリが出たことを感じます。プロテクターを内蔵する皮ツナギに近づいた感じですね。

▲ジャケットの裏地にあるプロテクター収納用ポケットから標準装備のウレタン製プロテクターを抜き取り、替わりにCE規格レベル2のプロテクターを入れます
プロテクターを交換したことの安心感は確実に増した

▲走行会当日は雨が降ったりもしましたが、万が一の転倒が頭をよぎっても、しっかりとした規格のプロテクターがダメージを軽減してくれると思うと気がラクになるんですよね
会場となった那須モータースポーツランド(栃木県)にはバイクの自走で向かったため、走行会では転倒しないように気を付けていましたが、やっぱりプロテクターがしっかりしていると安心感が増すという感覚はありまして、サーキット走行も十分に楽しめました。

▲万が一に備えておくと、安心して走れますよ。クルマと違ってライダーは生身ですから、ヘルメットやウェア、プロテクターの安全性能にはこだわりたいものです
皆さんもサーキット走行のみならず、通勤・通学やツーリングなどでより安心感が得られるようジャケットの中のプロテクターについてぜひ一度考えてみてください。