バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は、なんだか地味な存在に思えるが、実は近年の高度化した電子制御技術には不可欠な、『電子制御スロットル』を紹介。

そもそも『電子制御スロットル』とは?

CBR250RRのスロットル

見た目は、普通のスロットル(アクセル)と変わらない『電子制御スロットル』。写真はCBR250RRのスロットル部分だが、よく見るとエンジンへと伸びるワイヤーがなく、配線のみになっている。フライ・バイ・ワイヤ、ライド・バイ・ワイヤ、スロットル・バイ・ワイヤとも呼ばれるが、日本語にすれば『電子制御スロットル』だ。

 

そもそも“ライダーがスロットルを捻ると何が起こるか?”の話をすると、スロットルを捻るとその動きがインジェクションユニットなり、キャブレターなりに伝わり“バタフライバルブ”が開く。このバタフライバルブが開くとエンジンへと流れる空気の流量が変わり、開ければその分だけエンジン回転数がアップし、閉じれば回転数が落ちる。エンジンへの混合気の供給量を変えることでエンジンの出力コントロールを行っているワケだ。

一般的なスロットルの構造は、ライダーがスロットルを捻るとワイヤーが引かれて、その動きで“バタフライバルブ”が開くようになっている。ところが『電子制御スロットル』には、そのワイヤーがない。というか操作が機械式じゃない。スロットル操作は電気信号に変換され、その信号を受けてモーターがバタフライバルブを開くというわけだ。

 

GSX-R1000Rの吸気系のカットモデル

GSX-R1000Rの吸気系のカットモデルで中央の金色の円盤のようなパーツがバタフライバルブ。写真はスロットル全閉の状態で、スロットルが開くと円盤が時計回りに回転し、ほぼ90度になった状態が全開。エンジンは混合気の流れが良くなると、その分だけ回転数が上がる。

『電子制御スロットル』のここがスゴイ!

①ライディングモード切り替えが可能になる

「な~んだ、モーターでバタフライバルブ動かしてるだけじゃん!? それのどこがすごいのさ?」と早合点してはいけない。電気信号でコントロールするってことは、ライダーのスロットル操作を“そのまま伝えなくてもいい”ってことなのだ。

例えば、スロットルを「1」開けたとしよう。この時、一派的なワイヤー式の場合はバタフライバルブに伝わる動きは当然「1」である。ところが『電子制御スロットル』なら、スロットル「1」の開け具合に対して、「2」にも「0.5」にもバタフライバルブの動きを変えられるということなのだ。

近年、ライディングモードを切り替えると出力特性が変わる機能を持ったバイクが増えているけど、それらのバイクの多くがこの『電子制御スロットル』による味付けで出力特性を変えている。

CBR250RRのメーター

250ccクラスのオートバイとして初めて『電子制御スロットル』を搭載したCBR250RRには、「Sport+」、「Sport」、「Comfort」の3種類のモード切り替え機能がある。このキャラクターの違いは、スロットルの開け具合に対してバタフライバルブの動きを変えることで作り出している。

CBR250RRの出力特性イメージ図

CBR250RRのモード切り替えによる出力過渡特性変化イメージ図。スロットル開度に対するバタフライバルブの動きを変えることで、エンジンの吹け上がりを穏やか(Comfort)にしたり、急進的(Sport+)にしたりして味付けを変えている。効能的には、カスタムパーツのハイスロ/ロースロの効果に近い。

 

②ライダーの操作をバイクがオーバーライド!

また『電子制御スロットル』は、アクセルの開け過ぎによるスリップダウンを防ぐトラクションコントロールの制御にも使われる。『電子制御スロットル』が登場する前のトラクションコントロールは、①プラグの点火タイミングのコントロール、②インジェクションによる燃料噴射のコントロールしか使えなかったが、『電子制御スロットル』が加わったことで、③バタフライバルブのコントロールも行えるようになった。

体感的には、①と②しか使わないトラクションコントロールは、ガス欠時の“失火感”のように不自然で、違和感の強いトラクションコントロール介入しかできなかった。ところが『電子制御スロットル』の導入により、①~③を複合的にトラクションコントロールの制御に使うことでより緻密化。

トラクションコントロール介入時には、ライダーがスロットルを開けていても③のバタフライバルブを閉じる制御をバイクのECUの判断で行うことでエンジン出力を抑える。おかげでプロライダーの繊細なスロットルワークのような、ごく自然なトラクションコントロール制御の介入が可能になったのだ。

『電子制御スロットル』を搭載したVストローム1050XT

スズキは『電子制御スロットル』導入以前より、スズキ・デュアル・スロットル・バルブ(SDTV)という、文字通り2つのバタフライバルブシステムを採用するトラクションコントロールシステムを導入。一つをライダーが操作するワイヤー引きとし、もう一つを電子制御用として、緻密なトラクションコントロールを作り出していたが、『電子制御スロットル』の採用でデュアルである必要がなくなった。写真は『電子制御スロットル』を搭載したVストローム1050XT。

 

③エンジンブレーキの強さも変更可能

『電子制御スロットル』のもう一つの効用がエンジンブレーキのコントロールだ。エンジンブレーキは、スロットルを全閉にすることで、エンジンの回転の抵抗が大きくなる現象だ。

ただこのエンジンブレーキ使用時に、『電子制御スロットル』がバタフライバルブを開くことでエンジンの回転抵抗が減る。つまりスロットル全閉時のバタフライバルブの閉じ具合を変えることによってエンジンブレーキの強さを変更しているのだ。

2017モデルのCBR1000RR

CBR1000RRは、2017年モデルから『電子制御スロットル』、ホンダでいうTPS(スロットルポジションセンサー)を搭載。これによりエンジンブレーキの強さの変更が可能になった。メーターにある「EB」がエンジンブレーキのパラメータで、走るステージや好みによって3段階の強さが選べるようになっている。

 

他にも、「クイックシフター」、「ウイリーコントロール」、「ローンチコントロール」といった機能も『電子制御スロットル』あってこその機能で、なかにはIMUと連動することで、エンジンブレーキによるスリップダウンを防ぐ「MSR(モータースリップレギュレーション)」のような機能もある。…がちょっと長くなりそうなのでそれらの機能は別の機会に!

 

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