「腹が減っては戦はできぬ」の言葉のとおり、人は食い物なしでは動けない。バイクはガソリンなしでは動かない。数年にわたり「ガス欠インプレ企画」で走り続けてきた筆者が、あまたのガス欠体験から究極のガス欠対策を解説。[前編]は「正しいガス欠予防法」だ!

BRONCO ガス欠

大好きなバイク、知ってるつもり、乗れてるつもりでも、ミスやトラブルはつきものだ。ライダーがやらかしがちな「バイクあるあるトラブル」と、その対策を知っておこう。

ガス欠はどうして起きる?

世の中には一度もガス欠させたことのないライダーもいれば、しょっちゅうガス欠させるライダーもいる。運が悪いと誰にでも起きるパンクなどとは違い、ガス欠の原因はほとんどライダーの油断や判断ミスだ。いつどこで起きても不思議はないが、とくによく起きるケースを知っておこう。

次のガソスタが遠すぎて給油できず走れなくなるのがガス欠の典型的なパターンだ。日本の国道にも、まれに100km以上ガソスタがない路線があるし、高速道路なら150km以上にわたってガソスタ荒野が続くこともある。夜間などガソスタが閉まっている時間帯には、市街地付近でもガソスタにたどりつけないことがある。

またガス欠は長距離走行中だけに起こるわけではない。通勤などで日常的に近距離の移動を繰り返すライダーはガソリン残量に気がまわらなくなり、うっかりミスからガス欠させやすい。

シチュエーションで激変するリスク

天竜川 スズキ GSX-S125

大きな橋の上でのガス欠は、続発事故を招くリスクが高い。(スズキ GSX-S125/静岡県 新天竜川橋)

 

もしガソスタの目の前でガス欠したって嘆く人はいないだろう。逆に人里離れた山中で起きれば大問題だ。ガス欠は、状況によって深刻さが激変するトラブルの代表だ。

なかでも高速道路でのガス欠は、発生頻度もリスクも高い。高速道路上でのバイクの救援出動理由(JAF/2025年度)統計では、18.26%(約5回に1回)をガス欠が占めている。高速道路では、もし続発事故が起きればその結果も重大だ。また、ガソリン残量が少ないことを知りながら高速道路に入り、ガス欠すると「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」に問われることもある。

バイパスなどの高架道路も、高速同様ガス欠時のリスクが高い。ガス欠しそうになってガソスタまで走らなくてはならない場合には、たとえ遠回りや後戻りになっても、高速道路や高架式バイパス、アンダーパス、トンネル、大きな橋などの危険なポイントを回避しよう。

ガス欠したらどうなる?

スズキ バーグマンストリート125EX 藤枝市

このマシンは、ガス欠前にアイドリングストップの動作が不安定になり、スロットルレスポンスを乱しながらもしばらく走って停止した。(スズキ バーグマンストリート125EX / 静岡県藤枝市)

 

ガス欠直前の症状は車種によってさまざまだ。ガタガタ振動したり、駆動力のオン・オフを繰り返しながら徐々に止まることもあれば、なんの前触れもなく止まることもある。また前触れがあっても、完全停止までに走れる距離は千差万別だ。なかでも危険なのは、プスンと突然きれいに止まるタイプ。一瞬で駆動力を失うため、マシンを道路端に寄せるゆとりすらない場合もある。

どんな止まり方をするかは、実際に経験するまでわからない。ガス欠が近いと思ったときは、急な失速にそなえ、あらかじめ道路左端のポジションをキープして走ろう。できるだけ右折を避け、道路中央に寄らずに走れるルートを選ぶことも重要だ。

メーターとコックが予防のカギ

メーター ホンダ LEAD125

デジタルディスプレイにガソリン残量が表示されるコンビネーションメーター。(ホンダ LEAD125)

 

バイクのガソリン残量を知る方法はおおまかに二つある。

最近のほとんどのバイクにはフューエルメーターがあってガソリン残量を確認できる。デジタル表示メーターなら、たいていラスト1目盛りが点滅を始めたら※1、それが最終警告だ。警告が出たらなるべく早く給油しよう。
ふだんの給油タイミングは、残量が半分になった時がおすすめだ。ガス欠を防ぐためだけではなく、地震など災害時の防災備蓄としての意味がある。ただメーターは必ずしも正確とはいえない。車種によっては表示が過度にふらふらするものもあるからあまり神経質になることはない。

いっぽう旧車にはフューエルメーターが付いてないものが多い。給油時に燃料コックをONにして走り出し、ガス欠したらRES(リザーブ/予備燃料)に切り替えることで、ガソスタまで走る力を残せる設計になっている。だが給油時にRESからONに戻し忘れてしまうと、バイクが止まったときには、すでに予備燃料まで使い切っていた……という非常事態になる。切り替えを忘れないことと、走り出す前に、一度はコックの状態を確認する習慣をつけておこう。

ホンダ CB400SF  燃料コック

旧車に多い燃料コック。ON/OFF/RESを切り替えるタイプが一般的だ。(ホンダ CB400 SUPER FOUR)

 

航続距離はカタログ燃費から

最近のバイクのカタログには「WMTCモード値※2」による燃費が表示されている。昔からある「定地燃費」は一定速度で走り続けたときの燃費なので、実燃費とかけ離れた数値になることがあるが、2010年代から普及したWMTCモード値は、よくある道路状況(市街地、郊外、高速道路など)を再現したテストの結果だから、より実燃費に近い数字になっている。

WMTCモード 定地燃費 燃費

WMTCモード値と定地燃費では測定方法が違う。

 

ライダーや荷物の重さ、勾配などで燃費は変わるが、経験的には一般道の実燃費はWMTCモード値から数%マイナスの範囲に収まるケースがほとんどだ。なので自分のバイクの航続距離をまったく知らずに運転するよりは、フューエルタンク容量に、安全マージンを含めてWMTCモード値の10%マイナスを掛けた距離を大まかな航続距離の目安として頭に入れておくといい。もちろんこれは目安にすぎず、絶対に走れる距離ではない。たとえばダート林道を小排気量車で走ったりすると、ずっと低速ギアで走ることになるため、ふだんの半分の距離も走れずガス欠することもある。航続距離はざっくり把握したうえで、ゆとりある走行計画を立て、早め早めの給油を心がけよう。

カタログスペックの燃費は航続距離の目安になるし、ガス欠予防にも役立つ。だが、だからといっていつも必ずアテにできる数字ではないことは頭に入れておこう。

※1 フューエルメーターの表示は車種によって異なる。自分のバイクの表示内容はマニュアルで確認を。

※2 Worldwide-harmonized Motorcycle Test Cycleの略。日本語では「世界統一二輪車排出ガス試験方法」と呼ばれる。本来は排出ガス測定のための世界統一規格だが、2013年以降カタログなどに掲載されるようになり、燃費の指標として親しまれている。

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