「腹が減っては戦はできぬ」の言葉のとおり、人は食い物なしでは動けない。バイクはガソリンなしでは動かない。数年にわたり「ガス欠インプレ企画」で走り続けてきた筆者が、あまたのガス欠体験から究極のガス欠対策を解説。[後編]は「正しいガス欠対処法」だ!

大好きなバイク、知ってるつもり、乗れてるつもりでも、ミスやトラブルはつきものだ。ライダーがやらかしがちな「バイクあるあるトラブル」と、その対策を知っておこう。
ガス欠時に使える裏技はある?

無策のままガス欠すれば、ライダーは途方に暮れるほかない。(ヤマハ XSR125/三重県亀山市)
バイクを傾ければまだ走れる?
古くからバイク乗りの間では、ガス欠した時、フューエルコック側へバイクを傾ければ、タンクの反対側に残った燃料が流れ込み、少し余計に走れるようになるといわれてきた。事実そういうケースはあるものの、筆者が体験した範囲では、役に立つほどエンジンが回せたことはなかった。まず路上で転倒レベルまで大きくバイクを傾けなくちゃならないのが最大のネックだ。もしエンジンが回ったとしても、長く走れるほど回せるとは限らない。またバイクのフューエルタンクの構造は常に改良され続けていて、もともと底まできっちりガソリンが使えるマシンが増え、効果が期待しづらくなっている。軽量車なら試しても悪くないが、大きな期待はしないほうがいいだろう。
ガソリン代わりに酒で走れる?
これも昔からよくいわれているガス欠対策だ。いかにも嘘っぽいが、じつは酒に含まれるエチルアルコール(エタノール)は、ガソリンと同じように燃料として使える物質だ。だが「エタノールが燃料になる」ことと「エタノールを含む酒が燃料になる」ことはまったく別。それをごっちゃにしたことから、こんな話が生まれたのだろう。
もともとエタノールは、空燃比などを適切に調整しないとエンジンには使えない。しかも酒には、水や砂糖などエタノール以外の物質がたっぷり混ざっていて、それが故障を引き起こす可能性がある。酒を入れてバイクを走らせる裏技は、ちょっと楽しいホラ話と考え、実際に試すのはやめておこう。
ガス欠脱出法は?
ガス欠してしまった場合には、ライダー自身の安全確保、続発事故の防止、そしてリカバリーの順で考え、行動することがかんじんだ。いざというときパニックを起こさないよう、事前にリカバリーの知識をもっておこう。
予備ガソリンは最強の味方

筆者愛用のガソリン携行缶。いずれも「UN」規格を取得した1L容器だ。
最強のガス欠対策は、あらかじめ予備の燃料を持っておくことだ。手元にガソリンさえあれば、タンクのキャップをあけて継ぎ足すだけで、5分もかからずリカバリーできる。
ガソリン携行缶はカー用品店などで販売されている。バイクに積みやすい1L程度のものがおすすめだ。ただし容器は必ず規格を通った専用品を使おう。また携行缶には、たとえセルフスタンドでも自分で給油することはできない。作業は店員さんに依頼を。ガソリン購入時には、原則として本人確認や使用目的の記入も必要だ。
予備ガソリンは火気を避け、高温にならない安全な場所で、換気を十分にして保管しよう。バイクへの給油は、必ずエンジンを停止(といってもガス欠の場合、エンジンは停止しているはずだが)し、周囲の火気や交通状況を確認してから。また開栓時には、容器内の圧力が高まっていてガソリンが噴き出すといったトラブルが起きることもある。事前に製品の取扱説明書を読み込んでおこう。

いつもガソスタ前でガス欠してくれれば助かるのだが……。(ホンダ Monkey125 /静岡県 浜松市)
レスキューを呼ぶ
スマホなどで連絡がつけられ、レスキューの到着を待てるなら救援を依頼しよう。レッドバロンの「ロードサービスゴールドカード」をはじめ、JAFや保険会社のロードサービスでもガス欠等の救援が受けられるものがある。利用条件や費用を事前に確認しておけば安心だ。またJAFなら非会員でも費用を支払えば救援を依頼できる。ただし高額となるため、できれば事前に入会しておくとよい。
ガソリンを手に入れる
家族や友人の協力が得られるなら、ガソリンを持ってきてもらうのもいい。その場合でもガソリン専用の携行缶は必要だ。他のバイクのタンクから直接給油するため、石油ストーブなどによく使われる「ペコペコ」(サイフォン式手動ポンプ)を使う場合は、ガソリン対応のポンプかどうか、ホースの長さが十分かどうかを確認しておこう。
押し歩く

バイクを押し歩くときは、車両重量や距離を考慮しよう。
ガソスタまでの道が平坦で安全な一般道で、それほど遠くなく、軽量マシンに乗っているなら、押し歩くという選択肢もある。高速道路など、危険なルートでの押し歩きは絶対にやめよう。人間はおおむね1時間で4km歩けるが、バイクの押し歩きだと、せいぜいその半分程度の距離しか進めない。疲れるとバイクを倒しやすくなり、破損や事故の原因になるので、無理に長距離を押し歩こうとせず、安全な範囲にとどめることが大切だ。また途中にわずかでも上り坂があると進めなくなるから、傾斜の少ないルートを選ぼう。押し歩きは厳しいと思ったら、近くのパーキングなどにバイクを停め、あとで取りに戻るほうが安全だ。
ガス欠の根本原因は油断と慢心
さて、調子こいて「ガス欠マイスター」などと名乗り、えらそうに講釈をたれている筆者だが、じつは最近、ロケ中にガチのガス欠を経験した。札幌でバイクをレンタルして北海道の撮影に入った翌日、次のロケ地をめざして高速道路を走行中にガス欠。慣れないレンタル車両で、フューエルメーターの表示を確認する間もなく走り出してしまったこと、カタログ記載の燃費を事前に把握していなかったこと、距離感がつかみづらい北海道の道路環境などが重なって起きたトラブルだ。すぐにレスキューを依頼してリカバリーできたものの、あちこちに迷惑をかける結果となった。
ガス欠はバイクが起こすトラブルではなく、ライダーの油断と慢心が生むトラブルだ。まずは常にガソリン残量への目配りを忘れずに。それでもガス欠してしまった場合は、ライダー自身の安全確保、続発事故の防止、リカバリーの順で、落ち着いて対処してほしい。

いかにもプロらしい安全・迅速なガス欠救援。だがライダーのケアレスミスからリスクの高い作業をしてもらうことにはやはり胸が痛む……。
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