バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの? そのメリットは!?」なんて今更聞けないし…。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はバイクの燃料であるガソリンの『ハイオク』。エンジンの仕様によって使える燃料が変わるというお話だ。
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そもそも『ハイオク』ガソリンとは?
『ハイオク』は、正式にはハイオクタンガソリンといい、文字通り“オクタン価”の“高い(ハイ/high)”ガソリンのことで、無鉛プレミアムガソリンとも呼ばれる。では、オクタン価とは……、いきなりここから話を始めるとちょっと難解なので、まずは4サイクルエンジンの動きをおさらいするところから始めていこう。
4サイクルエンジンの行程動画
①燃焼/圧縮された混合気にプラグが点火し燃焼。膨張力がピストンが押し下げ、動力が発生。②排気/押し下げられたピストンが惰性で今度は押し上げられ、シリンダー内部の排気ガスを押し出す。③吸気/ピストンがさらに惰性で動き、下降することで今度は混合気を吸い込む。④圧縮/ピストンが再び上昇し、吸い込んだ混合気を圧縮する。再び①の燃焼へ戻る……というのが4ストエンジン、つまり4ストローク1サイクルエンジンの動きだ。
今回の『ハイオク』が関係するのは、④の“ピストンが再び上昇し、吸い込んだ混合気を圧縮する”部分。ピストンによって混合気をぎゅぎゅっと圧縮したところへプラグで点火して一気に膨張させるわけだけど、混合気をどれくらい圧縮するかで膨張力(=エンジンパワー)の出方が変わってくる。圧縮比が低いエンジンよりも高いエンジンの方が発生する膨張力が強く、理論的には圧縮比14、つまり混合気を14分の1の体積にギュッと圧縮したときが、一番大きな膨張力を引き出せると言われている。
ならば圧縮比はなるべく14に近くなるように設定すればいいじゃない!?……と思うかもしれないが、そううまくはいかない。圧縮比を高くすると混合気はエンジンの熱で自然発火しやすくなり、プラグで点火する前に燃え出してしまうのだ。これがいわゆる“ノッキング”という現象だけど、圧縮されかかったところで異常燃焼による膨張が始まってしまうものだから、ピストンが押しあがろうとしているのに内部では膨張が始まってしまう。ピストンを反対に押し下げようとする力が発生するものだからエンジン的には非常によろしくない状況が起きる。このノッキングが起こると、名称どおり「コッカカカ……」というノック(叩く)するような音を伴ってエンジンが咳き込む。上昇しようとストロークするピストンが無理矢理押し下げられそうになって出る、エンジンの悲鳴に他ならないのだ。
当然ながら異常燃焼/ノッキングはエンジンによくない。1度、2度の発生ならどうこうということはないけど、日常的に起こるようになると確実にエンジンにダメージが蓄積してしまう。この高圧縮比エンジンの弱点である自然発火による異常燃焼を防ぐために必要なのが『ハイオク』ガソリンで、オクタン価とよばれるノッキングしにくさを表す数値が高めに設定されているのだ。
『ハイオク』はなにがスゴイの?
ハイオクガソリンが必要なほど高圧縮なハイパワーエンジン!
ってことだ。逆に言えば、値段の高いハイオクガソリン指定が求められるほどのパワーを追求した、スポーティなエンジンということ。参考までに、スズキの国内モデルの原付2種以上のラインナップをハイオク指定のバイクと、レギュラーガソリンのバイクで分けてみると……
ハイオクガソリン指定モデル
HAYABUSA (圧縮比:12.5)
GSX-R1000R ABS (圧縮比:13.2)
KATANA (圧縮比:12.2)
V-STROM1050/XT ABS (圧縮比:11.5)
GSX-S1000 (圧縮比:12.2)
GSX-S750 ABS (圧縮比:12.3)
RM-Z450 (圧縮比:12.5)
RM-Z250 (圧縮比:13.75)
レギュラーガソリン指定モデル
V-STROM 650/XT ABS (圧縮比:11.2)
SV650X ABS (圧縮比:11.2)
BURGMAN400 ABS (圧縮比:10.6)
V-STROM 250 ABS (圧縮比:11.5)
GSX250R ABS (圧縮比:11.5)
GIXXER/SF250 (圧縮比:10.7)
BURGMAN200 ABS (圧縮比:11.0)
GIXXER150 (圧縮比:9.8)
GSX-R/S125 ABS (圧縮比:11.0)
ADDRESS110 (圧縮比:9.3)
……となり、ハイオク指定のバイクは軒並み高級スポーツモデルや大排気量車ばかり。次にそれぞれの圧縮比に着目してみると、スズキでは圧縮比が12以上のバイクが100%ハイオク指定になっている。一番圧縮比が高いのはモトクロッサーのRM-Z250で、13.75という驚異的なハイコンプレッション(高圧縮)エンジンを搭載していることがわかる。またハイオク指定かそうでないかの境目は、ハイオクガソリン指定のVストローム1050と、レギュラーガソリンのVストローム250の圧縮比が同じ11.5であるところをみると、どうやらこの辺りにありそうな雰囲気だ。
ちなみにこのオクタン価の設定はレギュラーガソリンにもあり、日本の場合はJIS規格で“レギュラーガソリンはオクタン価89.0以上であること”、“ハイオク(無鉛プレミアム)ガソリンは96.0以上であること”と定められている。
レギュラーガソリンのバイクにハイオクガソリンを入れるといいことあるの?
これも定番の疑問。ハイオクガソリンは高くてプレミアム感があり、なんだか入れるだけでちょっとパワーアップしそうな雰囲気はあるが、残念ながらハイオクガソリンをレギュラーガソリンのバイクに入れたところでパワーが上がったり、加速が良くなるなんてことは起こらない。ミもフタもない話で申し訳ないが、エンジン性能的には「悪いことはないがあまり意味はない」としか言いようがないのだ。唯一確実な効果と言えるのは、ハイオクガソリンにはエンジン清浄剤が入っているので、使い続ければ「エンジン内部をキレイに保つことができる」ということくらいかな。
逆にハイオク指定のバイクにレギュラーガソリンを入れたらどうなるか…? もうここまでしっかり説明したから何が起こるかわかるよね!? 上の写真のコーションラベルには、「USE MINIMUM OF 95+OCTANE GASOLINE ONLY TO PREVENT SEVERE ENGINE DAMEGE.(深刻なエンジン損傷を防ぐために、オクタン価が95以上のガソリンのみ使用してください)」なんて怖いことが書いてある。高いからといってガソリン代をケチってもいいことはないのだ。
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エンジン系:水冷、DOHC、ハイオク、4バルブ、可変バルブ、ダウンドラフト吸気、ユニカム、デスモドロミック、過給システム、ラムエア、ターボ、スーパーチャージャー、アシストスリッパークラッチ、油冷エンジン、
車体系:ラジアルタイヤ、アルミフレーム、ダブルディスク、ラジアルマウントキャリパー、ラジアルポンプマスターシリンダー、スポークホイール、倒立フォーク、モノショック、リンク式サスペンション、チューブレスタイヤ、シールチェーン、シャフトドライブ、プリロード調整、減衰力調整機構その①、減衰力調整機構その②、メッシュホース、モノブロックキャリパー、大径ディスク、ペタルディスク、フローティングディスク、
電子制御:フューエルインジェクション、IMU、ABS、コーナリングABS、電子制御スロットル、クルーズコントロール、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、ブラインドスポットディテクション(BSD)、クイックシフター、コーナリングライト、エマージェンシーストップシグナル、CAN通信、CAN/コントローラエリアネットワーク、ヒルホールドコントロールシステム、トラクションコントロール その①黎明期、トラクションコントロール その②FI連動、トラクションコントロール その③バタフライバルブ連動、トラクションコントロール その④ IMU連動、モータースリップレギュレーション(MSR)、ウイリーコントロール、ローンチコントロール、電サス その①黎明期、電サス その②セミアクティブサスペンション、電サス その③ スカイフック&ジャンプ制御etc、電サス その④ オートレベリング&アダプティブライドハイト、レーダー連動UBS(ユニファイドブレーキシステム)、衝突予知警報、