バイクの安全運転を教えるボランティア資格がある

▲目線やニーグリップなど乗車姿勢を意識するだけでも、低速走行やUターンがしやすくなります。ちょっとしたアドバイスなら自分にもできるかも
バイクの運転を人に教えられたら…。そんなことを考えたことのある人も少なくないと思います。運転に慣れていない初心者やリターンライダーを見て、『何かアドバイスできたら』と思ったことはありませんか?
バイクの運転を教える人といえば、教習所の指導員かライディングスクールのインストラクターといったイメージですが、彼らのように仕事にしなくても、ボランティアとして参加できる資格があります。
それが交通安全協会の二輪車安全運転推進委員会(略称は二推)に所属する「二輪車安全運転指導員」と、そこからさらに選抜された「二輪車安全運転特別指導員」です。
二輪車安全運転指導員になるためには、各地で開催されている指導員養成講習・審査会で試験・審査に合格する必要があります。今回は、昨年の11月15日に埼玉県で開催された養成講習会と審査の様子を紹介します。
なお、埼玉県の指導員養成講習・審査会については下記のサイトで説明されています。
●埼玉県交通安全協会「二輪車安全運転指導員養成講習会及び審査の実施について」

▲埼玉県の指導員養成講習・審査会は、鴻巣(こうのす)市にある埼玉県警察運転免許センターで毎年1回、開催されています
通常の指導員と特別指導員の2つがある

▲取材当日は15名が参加していました。居住地の講習会に参加することが原則ですが、毎年は開催されない地域もあり、他県で受講する人もいるそうです
埼玉県交通安全協会が開催する指導員養成講習・審査会は、毎年1回、秋ごろに開催されており、2026年は10月31日(土)となっています。
埼玉県交通安全協会の中にある二輪車安全運転推進委員会には、二輪車安全運転指導員が329名、二輪車安全運転特別指導員(略称は特指)が94名いて、全国的にも在籍者数は多いそうです(数字は取材時点)。
なお、二輪車安全運転特別指導員になるためには、通常の指導員としての経験を3年以上積み、大型二輪免許を保有し、交通安全協会などからの推薦を受け、中央委員会の講習・審査に合格する必要があります。
座学・学科試験と運転適性検査、面接審査を受ける
さて、指導員養成講習・審査会の主な内容は、午前中に行われる座学の受講と学科試験、運転適性検査、面接審査、さらに午後に行われる実技講習となっています。なお、審査は学科試験、運転適正検査、面接の3項目で行われ、実技は審査の対象外です。
座学では、「道路交通法に関する基礎知識」(40分)と「二輪車安全運転指導に関する知識」(40分)を学びます。受講後の学科試験は、道路交通法を主としたこれらの講義内容から出題されるので、しっかり聞いておく必要があります。

▲「道路交通法に関する基礎知識」について講義を行う埼玉県警察運転免許本部運転免許試験課の大竹さん。直近の改正道路交通法や横断歩道での一時停止、安全確認など、違反や事故を防ぐためのポイントなどについて解説しました
座学のあとは、休憩をはさんだのち、学科講習内容の試験と運転適性検査(計80分)を受けます。運転適性検査は、警察庁方式K型に準じた筆記試験で、受験者の心理・行動的な特性を測定します。
次に、指導員としての資質に関する面接審査(全体で30分、1人5分ほど)が行われます。面接では、受験者の人となりに加え、運転技術などについて幅広く聞かれるようです。
このように、座学と学科試験、運転適性検査、面接審査を終えると、午前の部は終了です。
実技講習は車両点検のレクチャーからスタート

▲受験者の前で車両の点検方法を実演している指導員
昼食(45分)をとった後は、いよいよ実技講習(140分)となります。
コース脇に指導員と受験者が集まって、午後の実技講習が始まります。講習の流れと諸注意を聞いたのち、車両点検から行われ、合言葉「ブタと燃料」(ブレーキ・タイヤ・灯火類・燃料)に沿った内容で、点検方法とそのポイントについて教わりました。
次に行われたのは乗車姿勢で、特に3つのポイントについて説明がありました。
①目線は早めに送り、視野を広く保つ
②上半身の力を抜いてハンドルに力を入れない
③つま先を内側に向けると自然とニーグリップできる
その後は服装と安全装備に関してのレクチャー、準備運動が行われ、いよいよバイクに乗っての実技講習となりました。

▲準備運動の様子。指導員の掛け声のもと受験者全員でストレッチ体操などを行いました
「課題走行」で安全運転に必要な基本操作を学ぶ

▲グループごとに発進していく受験者。まず行われる慣熟走行のなかで、コースに慣れ、ポイントを覚えていきます
実技講習は、コース内を広く使って、道路交通法を遵守しながら走る「法規走行」と、コース内のスペースに設置された各課題を練習する「課題走行」の2つに分かれており、受験者も2つのグループに分かれて、法規走行と課題走行を交互に行います。
課題走行では、一本橋、波状路走行、スラローム、急制動(ブレーキング)が行われ、一本橋とスラロームには通過時間が、急制動には走行速度と制動距離について目標値が設定されています。
法規走行については、指導員と一緒にコース内を周回することで、法規に沿った安全運転の精度を高めていくことが目標です。なお、周回するたびにグループ内の先頭車両が入れ替わるので、他者を引率しながらコース内を走るという経験もできます。

▲一本橋を行う受験者。指導員は寄り添いながらストップウオッチで通過時間を計っています。目標タイムは10秒以上

▲大型二輪免許の試験では難しい課題とされている波状路も練習できます

▲スラロームの通過目標値は、大型二輪なら7秒以内、普通二輪以下なら8秒以内です。指導員からは「2速のほうがやりやすいよ」などアドバイスが飛んでいました

▲急制動の目標値は、大型二輪の場合は「40km/hで進入して11m以内に停止」、普通二輪以下の場合は「30km/hで進入して8m以内に停止」です。初めはタイヤをロックさせていた受験者も練習することでスムーズに止まれるように

▲法規走行では、コース内に設置された交差点、一時停止、障害物、坂道などで、安全確認と合図など法規に沿った運転操作が求められます

▲道路沿いに置かれた遮蔽物のために見通しが悪くなっている交差点を通過します。指導員は後ろにつきながら、減速・左右確認・徐行ができているかを確認

▲道路上に設置された障害物(パイロン)を進路変更しながら通過する受験者

▲法規走行の合間には、並走した指導員からアドバイスをもらえます
今回受験した皆さんは、最初は上手にできなくても練習を重ねるなかで、全員が目標値をクリアできていました。
合否がわかるのは、およそ10日後
実技講習のあとは、建屋内に戻って閉講式となりました。指導員養成講習・審査会はこれで終了となりますが、合否の通知が送られてくるのはおよそ10日後です。合格していれば、二輪車安全運転指導員の資格証明書である「指導員証」が交付されます。
なお、指導員資格には有効期限(認定日から5年間)があるので、継続するためには更新手続きが必要となります。
受講条件は20歳以上で運転歴3年以上など
最後に、埼玉県の場合の指導員養成講習・審査会の受講条件を記載しておきます。なお、2026年は10月31日(土)開催となっています。※以下の条件は2026年開催のもの
●受講資格
1.年齢が20歳以上であること
2.現に二輪免許または原付免許を受けている者であること
3.二輪車の運転経験が3年以上であること
4.過去3年以内に行政処分を受けたことのない者および悪質な交通違反がない者であること
5.二輪車の安全運転に関する知識、技能および指導力が指導員としてふさわしい者であること
●費用 ※現金で持参
〇講習受講料 3,000円(教本・諸経費代)
〇指導員審査料 3,000円
なお、審査合格後には指導員証交付時(後日)に認定料および指導員証代として3,000円が必要となるので、埼玉県の場合は二輪車安全運転指導員になるための費用は計9,000円ということになります。
●必要書類
※2026年9月30日(水)までに提出。郵送の場合は同日消印有効
1.指導員養成講習受講申込書(サイトからダウンロード可能)
2.写真2枚(縦3㎝×横2.4㎝)
3.運転記録証明書1通(申請用紙は運転免許センター内の自動車安全運転センターまたは警察署にあります)
バイク仲間や家族の安全運転にもアドバイスを
1972年に設立された交通安全協会・二輪車安全運転推進委員会の設立趣旨は、二輪車運転者に対する安全運転教育の推進であり、その目的は交通事故の防止と安全な道路交通の実現です。
したがって、練習をして運転技術を高めることは、そのための手段ということです。
「運転に自信がない」「教えることは得意ではない」という方も、指導員資格を取得することで、自分自身の知識・意識の向上はもちろんのこと、バイク仲間や家族など身近な人の安全運転についてもアドバイスができるようになるのではないでしょうか。
皆さんもぜひ、二輪車安全運転指導員資格の取得を検討してみてください。
