バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は前回の『ABS』に引き続き、最新のブレーキ系電子制御技術、 『コーナリングABS』について解説しよう。
そもそも『コーナリングABS』とは?
バイクの安全技術として進化しているABS。その基本的な役割や仕組みは前回紹介させていただいたが、その最先端はものすごいことになっている。リーンアングルセンサー(傾斜角センサー)や、6軸IMU(慣性計測装置)を搭載し、走行するバイクのリアルタイムの情報と組み合わせることで、ABSのコントロール精度を向上させているのだ。
『コーナリングABS』のここがスゴイ!
旋回中の急ブレーキでもスリップダウンしない
一般的なABSは、前後車輪に取り付けられたスピードセンサーによる“回転差”の情報だけで制御を行うので、直線だろうがコーナリング中だろうが、ブレーキ入力に対する制御介入の仕方は一辺倒である。
ところがリーンアングルセンサーやIMUを搭載したバイクは、前後車輪スピードセンサーに加えてリーンアングルセンサー(傾斜角センサー)もしくは6軸IMUからの情報でバイクの傾き具合を検知。状況に合わせてABSの介入度を変更してくる。
車輪速度の変化からブレーキロックを検知すると、ABS油圧ユニットが作動。ブレーキキャリパーにかかる油圧の減圧、保持、増圧を行う。…という流れは一緒だがコーナリングABSではこの制御介入タイミングやプログラムが、コーナリングに合わせて“緩やな制御”に切り替わる。
リーンアングルセンサー搭載の場合は、直線用のABS介入プログラムと、コーナリング用のABS介入プログラムが切り替わるだけだが、IMUからの情報をフル活用するABSを搭載したマシンは、車速や進行方向といった車体の“リアルタイム”の状況に合わせたブレーキ制御を入れてくる。
YAMAHAの2022モデルのXSR900は、自社製6軸IMUを搭載。ABSに関しては、BC1とBC2で2つのABSモードが切り替えられるようになっており、BC1は一般的なABS制御。BC2では、IMUからの情報に基づいてコーナリング時の制動力を調整し、ホイールがスリップすることを抑制する。新型のMT-09、TRACER900も同様のABSシステムが搭載されている。
『オフロード用』のABSもある
IMU搭載のコーナリングABSとは直接関係ないが、ABSの種類としては、「コーナリングABS」とは別に、「オフロード用ABS」もある。というのも、舗装路に比べてタイヤが安易にロックする未舗装路で、舗装路と同じABS介入具合にすると、ABSの介入が早過ぎて制動距離が著しく伸びてしまう。
体感的には、“ABSの介入のおかげで止まれない!”ぐらいの違和感を感じるため、未舗装路を走ることを前提としたモデルの中には、ロード用とオフロード用でABSのモードが切り替えられるようなっているモデルもあるくらい。またオフロード走行では、ブレーキターンなど意図的に後輪をロックさせて操るような走り方を行うためリヤブレーキのABS制御介入をカットできるモデルも多い。
KTMの250アドベンチャーは、ロード用とオフロード用で2つのABSモードを搭載し、オフロード用を選択すると、ABSの制御介入がフロントのみとなるだけでなく、そのフロントブレーキの制御具合も滑りやすいオフロードに合わせた介入度に切り替わる。実際に同じ状況でフロントブレーキをガン握りしてみると、確かにオフロード用ABSの方が介入が遅く、路面に踏ん張る時間が長くなるような制御になっていた。
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