バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はエンジンの話、スズキがジクサー250、ジクサーSF250やVストローム250SXで採用している『油冷エンジン』を見ていこう。

そもそも『油冷エンジン』とは?

内燃機関、つまりガソリンなどの燃料を燃やして運動エネルギーを取り出すタイプのエンジンは、その過程でどうしても“大きな熱”が生まれてしまう。水冷4バルブDOHCを取り上げた時にも説明させてもらったけど、バイクのエンジンの歴史は“高出力化”“高効率化”だ。排気量1ccあたりにどれだけ多くの混合気を詰め込んで出力を高めるか? 1分間にどれだけたくさん回して多くの仕事をさせるか? に注力してきたのだ。

そんな“高出力化”“高効率化”が進むと、エンジンが生み出す“熱”に対処する必要に迫られて生まれたのが水冷エンジンというわけである。今回紹介する『油冷エンジン』も、水冷エンジンと同じで“熱”を大気へ排出するために生まれた機構だが、合理的な発想でユニークな進化を遂げたのだ。

油冷エンジンの内部構造図

スズキがかつて大排気量モデルに採用していた油冷エンジンの内部構造図。シリンダーヘッドのバルブまわりに大量のオイルを噴射して冷却しているのがわかる。水冷エンジンのクーラント液のように圧送循環しているわけではなく、エンジンオイルをジャブジャブかけている感じだ。

 

ちなみにこの『油冷エンジン』。一時期は『油冷エンジン』といえば“スズキ”、“スズキ”といえば『油冷エンジン』と言われたほどだったが、2000年代にスズキは一旦『油冷エンジン』を廃止。しかし、近年になってこの『油冷エンジン』を復活させることになったのだ。

『油冷エンジン』のここがスゴイ!

水冷エンジンよりも軽くコンパクトなエンジンが作れる

……ってことだ。『油冷エンジン』の前にまず水冷エンジンの大まかな仕組みを説明すると、エンジンが発する熱をクーラント液に移し、循環させてラジエターまで運び、走行風を当てて熱を大気に排出する……ってことになる。一方の『油冷エンジン』は、液体を媒介としてエンジンを冷やす“液冷”という意味では同じなのだが、冷却媒体にクーラント液ではなくエンジンの潤滑に使っているエンジンオイルを用いるのが『油冷エンジン』の最大の特徴だ。油冷の“油”とはつまりエンジンオイルのことなのだ。

そのメリットは、水冷エンジンに比べてはるかにシンプルで軽くコンパクトなエンジンが作れること。考えてみよう、水冷エンジンには、クーラント液を冷やすラジエターや専用の圧送ポンプが必要になるのはもちろん、シリンダーヘッドの内部にクーラント液の通り道(ウォータージャケット)を作らなければならない。このため空冷エンジンに比べてはるかにパーツ点数が多くなり、シリンダーヘッドなどの構造も複雑化。結果としてエンジンが大きく重くなるのは避けられない。

ところが『油冷エンジン』なら循環のためのエンジンオイル量が増えたり、シリンダーヘッド内にオイルの通り道を作る必要はあるものの、オイルの経路に関してはオイルポンプなどの元々あるエンジンオイルの循環システムを使えば相当の簡略化が可能。加えてウォーターポンプを回すための動力損失もない。つまり水冷エンジンよりも軽くコンパクトなエンジンでありながら、“液冷”で冷やし続けられる高出力なエンジンが作れるというわけなのだ。

ただしデメリットもある。水冷エンジンに使うクーラント液に比べてエンジンオイルは熱伝導率が悪くて“熱しにくく冷めにくい”。つまり“液冷”の冷却媒体としてエンジンオイルはあまり効率がよくない。このため極端にハイパワーなエンジンの冷却装置には向いていないというわけなのだ。近年『油冷エンジン』を復活させたスズキだが、一時期『油冷エンジン』をやめた理由に関して正式な発表はないが、特にスーパースポーツ分野などではエンジンのハイパワーが進んで油冷では間に合わず、水冷化せざるおえなくなったというのが通説だ。

“かつて”の油冷エンジンを搭載した最終モデルとなったGSX1400

かつての『油冷エンジン』の最終モデルとなったのが1400ccという超大排気量モデルのGSX1400。1985年にGSX-R750に採用して以来、20年以上に渡って採用されてきた『油冷エンジン』はこのGSX1400で一旦幕引きに。

 

また『油冷エンジン』は、よく“オイルクーラー付きの空冷エンジン”と混同されることが多いが、そもそもの発想が異なっている。空冷エンジンも潤滑目的にシリンダーヘッドのバルブやカムシャフトまわりにエンジンオイルが送られてはいるものの、“オイルクーラー付きの空冷エンジン”は熱くなってしまったエンジンオイルを冷やすことにとどまる。これに対し『油冷エンジン』は“シリンダーヘッドに大量のエンジンオイルを送って積極的に冷却する”システムを指す。

令和の時代に『油冷エンジン』が復活!!

SUZUKI V-STROM250SXに乗る筆者

SUZUKI V-STROM250SX

Vストローム250SXの油冷エンジン

2020年に国内発売を開始したジクサー250で、Suzuki Oil Cooling System(SOCS)として『油冷エンジン』が復活。次いでフルカウルのジクサーSF250、アドベンチャーバイクのVストローム250SXに採用。写真は2023年登場のVストローム250SXのエンジン&排気系まわりだ。

Vストローム250SXの油冷エンジン

Suzuki Oil Cooling System(SOCS)エンジンの透視図。かつての『油冷エンジン』のように、シリンダーヘッド内部へジャブジャブとエンジンオイルをかけて冷やすのではなく、水冷のウォータージャケットのような通路を巡らせてエンジンオイルを循環させているのが特徴だ。

 

では、最近になって『油冷エンジン』が復活したのは何故だろうか? スズキのジクサーSF/250、Vストローム250SXの開発者によれば、“ちょうどいい”だからだそうだ。

250ccという排気量、単気筒という構造ならそれほど発生する熱も多くないそうで、油冷システムで十分熱排出が行えると踏んだという。結果としてVストローム250SXが搭載する『油冷エンジン』はシリンダーヘッドがかなりコンパクトになり、重量に関しても“液冷”のエンジンとしてはかなり軽くできたという。

筆者は、新型のVストローム250SXでの高速走行はもちろん、ジクサーSF/250では長時間にわたる連続高速巡航も行ったことがあるが、水冷エンジンの250ccエンジンのバイクと一緒に走っても熱だれやオーバーヒートの症状が出ることはなかった。

『油冷エンジン』なら、水冷までとはいかないまでもかなりの“高出力化”、“高効率化”が行え、エンジンの軽量コンパクト化が可能。エンジンそのものの重さが軽くなれば、フレームや足回りといった車体の構成要素も軽くできるというのだからミドルクラスのエンジンにピッタリというわけである。

Vストローム250SXの油冷エンジン

スズキ・Vストローム250SXは、油冷シングルの250ccモデル。同じ250ccクラスの水冷ツインモデル・Vストローム250に比べるとなんと27kgも軽い。

Vストローム250SXの油冷エンジン

Vストローム250SXのエンジンを見てみると、とにかくシリンダーヘッドがコンパクトで拳大くらいしかない。軽量コンパクトが目に見えてわかる。

 

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