さまざまな規制に縛られることなく、メーカーの個性や主張がダイレクトに製品に投影されているのが、絶版車の大きな魅力。だからこそライダーも「このバイクに乗りたい」と明確な意思を持って、自分が気に入った1台を選ぶことができる。1990年代に登場したビッグバイク勢は、それぞれにしっかりしたキャラクターを有していたが、その性能をいま満喫するには、車両選びが重要だ。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:レッドバロン
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市街地からツーリングまで、どこでも使える絶版スーパースポーツモデルに注目!
教習所で大型自動二輪免許が取得できるようになり、若干威光が薄れたものの、750ccやオーバー1000ccモデルは、フラッグシップであり憧れの対象だった。
たとえば1990年にデビューしたカワサキZZR1100は、その象徴的な1台だ。1980年代にスズキGSX-R1100やヤマハFZR1000が先行していたものの、ZZRはスーパースポーツ風の外観ながら世界最速を標榜し、市街地で扱いやすくツーリングでも軽快という総合性能の高さで人気が沸騰。ZZR1200/ZX-14Rとモデルチェンジを重ねながら、2010年代まで愛され続けた。
こうした絶版車をこれから所有する際、重要なのは車両選びとメンテナンスだ。中型クラスに比べて手荒に扱われる割合は少ないとはいえ、製造から20年以上を経過したバイクには不調のタネが隠れていることも少なくない。「後で修理すればいい」といっても、部品の入手がままならないこともある。
本記事で紹介した車両を在庫として有しているのは、レッドバロン。メーカーで販売終了となった部品も、独自にストックしたパーツで年式が古い中古車の修理に対応する“パーツ保証”により、絶版車ユーザーをサポートするのが大きな特徴だ。
懐かしさとともに現代でも通用する絶版スーパースポーツモデルに触れてみたいと思ったら、足を運んでみる価値があるだろう。
カワサキZZR1200[2002]:高い実用性能は今も健在。どんな用途にも対応するスポーツツアラー
最高出力147馬力とエアロダイナミクスを取り入れたスタイリングにより、スタンダード状態で300km/h近くに達する高速性能で衝撃を与えた「ZZR1100」。2000年に後継モデルとしてZX-12Rが登場して以降もZZRを求める声は止まず、それに応えるかのように2002年にデビューしたのがZZR1200だった。
実用的なセンタースタンドやタンデム時にも快適なシート、見た目のボリューム感に反した軽快なハンドリングなど、トータルパフォーマンスの高さは今も十分に通用する。
ヘッドライトデザインは個性的だが、車体全体のシルエットは1100時代からの流れを感じさせるZZR1200。2000年に登場したZX-12Rの独創的なモノコックフレームに対して、ZZRは伝統的なアルミツインスパーフレームを継承。
吸気系についても、ZX-12Rがフューエルインジェクションを採用したのに対して、ダウンドラフトタイプのCVKキャブレターを装備。2006年にはZZR1400が登場したため、1100時代より短命に終わったが、高い満足度を与えてくれる。
ヤマハFZR1000[1991]:オールマイティさが持ち味のFZRシリーズ最大排気量モデル
1984年にTT-F3レーサーのレプリカモデルとしてデビューしたFZ400R。そのシリーズ頂点モデルとして、1987年に「FZR1000」が登場した。当時TT-F1レーサーの排気量は750ccで、スズキGSX-R1100と並びレーサーとしては存在しない1000ccクラスだったが、アルミデルタボックスフレーム/デュアルヘッドライト仕様のフルカウル/前傾45度シリンダー+5バルブエンジンのジェネシステクノロジーで人気を博した。丸目2灯から異形1灯式ヘッドライトに変更されたのが1991年モデルの特徴だ。
FZR400RR/250Rと同様のプロジェクターヘッドライトを採用した1991年型FZR1000。水冷式オイルクーラーを装備し、最高出力145馬力ながら、排気デバイスのEXUPにより低中速域も扱いやすい。
シングルシートカウルの下にはリヤシートがあり、タンデムツーリングも余裕でこなす。この年式からフロントフォークは倒立式。1996年にデザインの方向性が全く異なるYZF1000サンダーエースにバトンタッチするので、レーシーなムードが好みならおすすめだ。
ヤマハTRX850[1995]:「ハンドリングのヤマハ」が堪能できる270度ツインの先駆モデル
現在でもMT-07に採用されている並列2気筒エンジンの270度クランクを初めて実用化したのが「TRX850」。ベースエンジンはTDM850用だが、当時のTDMは360度クランクで(1998年より270度エンジンを搭載)、こちらの方が先に市販された。
白いトラスフレームと赤いボディカラーは、同年代のドゥカティ900SSと瓜二つという意見もあったが、コンパクトな並列ツインによるマスの集中化、そもそもヤマハが得意とするハンドリングの味付けは秀逸で、走行性能に対する評価は今なお高い。
ここで紹介した他の機種より製造期間が短く、後継モデルもなかったため、中古車市場でTRX850を見かける機会はあまり多くない。それだけに程度の良い車両に出会えたなら逃さず確保したい。エンジンは270度クランクであるだけでなく、潤滑方式をドライサンプとすることで、下部のオイルパンを廃してマスの集中化に貢献。
この車両は、バックステップ/フェンダーレスキット/シングルシートカバーなど、前オーナーがカスタムしながら大切に乗ってきたことが伝わってくる1台。
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