2023年のEICMAでアンベールされたばかりのGSX-S1000GX。2023年11月末、スズキはポルトガルにてGSX-S1000GXの「WORLDWIDE PRESS TEST RIDE(世界プレス試乗会)」を大々的に開催。世界中から50名近いジャーナリストが集められ、日本からは鈴木大五郎氏と僕こと谷田貝 洋暁の2人が参加することになった。ちなみにこのGSX-S1000GX、渡欧の時点では日本での発売に関してのアナウンスはなかったが、2024年1月25日に早くも国内販売が開始! そんなホットなGSX-S1000GX「世界プレス試乗会」の模様を数回にわたってお伝えしていますが、今回はラスト。「ポルトガルのバイク事情」……なんてカッコつけてますが、つまりは観光編です!
ポルトガルがあるのはユーラシア大陸の最西端
今回のGSX-S1000GXの「世界プレス試乗会」が行われたのはヨーロッパの中でもイベリア半島の西の端、ポルトガルのリスボン近郊。まぁ、極東の日本から見ればユーラシア大陸の反対側って場所だ。この辺りはむか~し学校で習った地中海性気候ってやつで、冬でも暖かく気候が安定している。スペインやポルトガル、イタリアあたりが、バイクの試乗会場として選ばれるのはこういった理由からだ。

ユーラシア大陸最西端・ロカ岬。試乗会場はリスボンよりもさらに西の「Cascais(カシュカイシュ)」という街であったため、時間を見つけてロカ岬まで足を伸ばしてみた。ここはユーラシア大陸の西の突端。目の前の海は大西洋で向こう側は、新大陸アメリカというわけ。海水もちょっと舐めてみたが日本の海よりやや塩味薄め。

ロカ岬は日本で言う千葉県の犬吠埼か、和歌山県の潮岬くらいのメジャーな観光スポットらしく、無料開放されている駐車場には車がひっきりなしに出入りし、観光バスもやってくる。ライダーが突端が好きなのは世界共通のようだ。
街が狭くてもバイクは意外と停められる!?
今回もスズキさんの格別な配慮のおかげでロストバゲージ対策として往路日程には1日ばかり余裕があった。しかも聞けば前泊はリスボン市内。こりゃぁ、リスボン市内を観光……じゃなかった。ポルトガルのバイク事情を視察に行かなければなりませんなぁ(笑)。

リスボン市内は地下鉄網があり、観光名所である旧市街へ出るのに便利。料金はどこまで乗っても一律で、券売機でパスモみたいなカードを1回使用か2回(往復)使用かを選んで購入。このカードは有料だがチャージもできるようだ。駅にはベストを着たスタッフがいて、乗車券の買い方も丁寧に教えてくれた。

旧市街から放射状に地下鉄が伸びており、路線が色分けされ、案内も統一されているのでポルトガル語がわからなくてもなんとかなる(笑)。我々の宿の最寄りの駅は「Anjos(アンジョス)」。一方、目指す旧市街は「Rossio(ロシオ)」あたり。ひとまず終点の「Cais do Sodre(カイス ド ソドレ)」まで行き、歩いて戻ってくるような感じで散策しようかな。

地下鉄の座席はコルク製。思ったより硬くはないが座り心地がいいわけではない。ポルトガルはコルクの産地としても有名で、テストライド中は皮を剥いだ痕のあるコルクの木を見かけたし、観光地にはコルク製の鞄や帽子などの露天商が並んでいた。
ポルトガルのリスボンといえば、高低差のある古い街並みと石畳、それから路面電車。羨ましいのは、旧市街だろうとどこだろうとちゃんとバイクの駐輪場が整備されているところだ。土地に関しては日本よりはるかに狭く、道も車社会になる前のままで、決して広くはないのだが、四輪の駐車場と同じように……もしかしたら四輪の駐車場よりも多い頻度で二輪駐輪場を見かけるのだ。
街中の二輪駐輪場を利用するライダーを観察していると、特に料金も必要ない感じ。スルスル~とやってきては空いているスペースにバイクを停めると足速にどこかへ消えていく。日本にもこのくらい二輪駐輪場があるとバイクはとてもいい交通手段になると思うのだが……。ポルトガルのバイク事情が羨ましいかぎりだ。

宿泊したホテルには地下3階以上のスペースがあり、駐輪場や倉庫として利用している感じ。異常に通路は狭く乗用車でもしっかり切り返さないと曲がれないような急勾配のスロープが……。僕はこれをみて次にリスボンに来ることがあってもレンタカーを借りるのはやめようと思った。
リスボンの飯は海鮮物がうまい
大西洋に面するポルトガルは日本と同様に魚介類をよく食べるようで、代表的なポルトガル料理は海産物を使ったものが多い。名物は鱈(タラ)の塩漬けで「バカリャウ」という。なんでも大航海時代の船旅を支えたのもこの保存のきく「バカリャウ」だったらしい。僕が知っているポルトガル人というと、フランシスコ・ザビエルくらい(本人はスペイン生まれでポルトガルからの依頼で1549年に日本にやってきた……らしい)だが、彼もこの「バカリャウ」を食べながら日本を目指したのだろうか?

イベリア半島の西側、スペインのお隣ということもありパエリアもよく食べられているようでいくつも種類があった。僕が頼んだのはシーフード・パエリアで出てきた料理は日本のパエリアと同じ雰囲気だが、お米はやや硬めでアルデンテ?な感じ(笑)。
ヨーロッパの石畳ってどんな感じ?
郊外はともかく、古い街並みが残るポルトガル市内はほぼ石畳。日本でいうと広島や長崎など、路面電車の線路周辺が石畳になっていることがあるが、あんな状況が街全体に続いていると思ってもらって間違いない。ただリスボンの石畳は場所によってはかなり荒れている。市内を走るバイクはスクーター7割、ギヤ付きバイク3割という感じで、スクーターも大半が14インチくらいのハイホイールスクーターなのはやはりこの石畳を意識してのことだろう。
しかもこの石畳、水に濡れると異常に滑るからたまらない。試乗会では小さな街を通過する場合に必ずと言っていいほど石畳の上を走ることになったが、濡れている石畳の上で曲がるときはかなり緊張する感じだ。世界的なアドベンチャーバイクのブームが巻き起こっているが、特にヨーロッパではその傾向が顕著。今回のGSX-S1000GXも単純なロードバイクというより、ややアドベンチャーバイク寄りのキャラクターでサスペンションストロークが長めなのも、このアドベンチャーバイクブームの影響を受けてのこと。
こんな石畳や路面電車の凹凸を見ているとヨーロッパでアドベンチャーバイクのブームが巻き起こっているのもよくわかる。実際、市内ではアドベンチャーバイクをよく見かけたし、アドベンチャーバイクとは言わないまでもトレーサー9GTのような前後17インチホイールの脚長バイクも多かった。スズキのGSX-S1000GXが登場したのはそんな風土を意識してのことなのだろう。

スズキのGSX-S1000GXには、凹凸のひどい石畳に入ると独自の電子制御サスペンション制御に切り替わるようになっている。
リスボンで見かけたバイクたち
【関連記事】
ポルトガルでSUZUKIの“クロスオーバーモデル”GSX-S1000GXに乗ってきた! その① 渡欧編
ポルトガルでSUZUKIの“クロスオーバーモデル”GSX-S1000GXに乗ってきた! その② 試乗インプレッション
ポルトガルでSUZUKIの“クロスオーバーモデル”GSX-S1000GXに乗ってきた! その③ スズキ独自のSRASってなんだ!?
ポルトガルでSUZUKIの“クロスオーバーモデル”GSX-S1000GXに乗ってきた! その④ ポルトガルのバイク事情