2023年のEICMAでアンベールされたばかりのGSX-S1000GX。2023年11月末、スズキはポルトガルにてGSX-S1000GXの「WORLDWIDE PRESS TEST RIDE(世界プレス試乗会)」を大々的に開催。世界中から50名近いジャーナリストが集められ、日本からは鈴木大五郎氏と、僕こと谷田貝 洋暁の2人が参加することになった。ちなみにこのGSX-S1000GX、渡欧の時点では日本での発売に関してのアナウンスはなかったが、2024年1月25日に早くも国内販売されることが決定! そんなホットなGSX-S1000GX「世界プレス試乗会」の模様を数回にわたってお伝えしよう。
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GSX-S1000GXは2024年1月25日に国内発売開始!
2024年1月18日、スズキはGSX-S1000GXの日本国内モデルについて詳細を発表! 価格は税込価格で199万1000円と約200万円。車体の仕様はポルトガルで乗ったものとほぼ一緒のようだが、国内仕様にはETC2.0の車載器が標準装備されシート高も830mm化。欧州仕様ではオプション設定だったローシート(シート:830mm)が日本仕様には装着されており、845mm仕様のシートは「コンフォートシート(3万800円)」としてオプション販売されるようだ。
カラーリングに関しては、メインカラーの「トリトンブルーメタリック 」はもちろん、「グラススパークルブラック 」、「パールマットシャドーグリーン 」も国内発売が決定。試乗会場でもこの3色を見たけど、「パールマットシャドーグリーン 」のマットグリーンがなかシックで服装も合わせやすく、場所を選ばずどこへでも乗っていけそうな雰囲気だった。
GSX-S1000GX(国内仕様)/主要諸元■全長2150 全幅925 全高1350 軸距1470 シート高830(各㎜) 車重232㎏(装備)■水冷4ストDOHC単気筒 998cc 150ps/11000rpm 10.7kgf-m/9250rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量19ℓ ブレーキF=ダブルディスク R=ディスク タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/50ZR17■メーカー希望小売り価格:199万1000円 ※欧州仕様の主要諸元とは最高出力が2psほど違っているのは欧州と日本では算出方法が違っているためで仕様の違いはない。
GSX-S1000GXの足着き性チェック
ポルトガルでの試乗会でも、国内仕様と同じ830mmのシート高は体験済み。欧州仕様のシート高845mmと830mmの乗り比べもしてみたが、シートが830mm化したところで極端な姿勢変化はなく、走っていても特段845mmの方が操りやすいということもなかった。830mm仕様でしばらく走っていたらシートに換装していることを忘れていたくらいだ(笑)。これで15mmも足着き性がいいなら日本仕様は830mmが適である。
ちなみにこちらが欧州仕様で845mmの状態で、やはり若干足着き性が悪くなる。ちなみに国内仕様のシートはGSX-S1000“GT”のノーマルシートと同等品とのことで、変にアンコが抜かれているということもないので快適性もスポイルされていない。
電子制御てんこ盛りのGSX-S1000GX
さて国内販売情報で前置きが長くなってしまったがこの新型のGSX-S1000GXを一言でわかりやすく表現するなら、“スズキの二輪車史上最も多くの電子制御技術を搭載したモデル”ということになる。基本的な車体のベースは前回説明したとおりGSX-Sシリーズの“GT”であり、エンジン、メインフレーム、スイングアームといった基幹部品はもちろん、燃料タンクやサイドカバー、一部変更はあるもののシートフレームも基本的には一緒。
ただ中身に関しては大きく変わっており、特に電子制御まわりの進化がものすごい。まずGSX-Sシリーズ(カタナも含め)としては初のボッシュ製の6軸IMUを搭載。これによりまずトラクションコントロールシステムやABSがコーナリング対応となり制御のコントロールレベルもGSX-Sシリーズで最も緻密化されることになった。加えてアドベンチャーモデルのVストローム1050シリーズにも搭載される、減速時の後輪の浮き上がりを防ぐスロープディペンデントコントロールシステムなどスズキオリジナルの制御技術も移植。この他、クルーズコントロールや電子制御スロットルといった従来からの装備もGSX-Sシリーズの最新モデルとして当然ブラッシュアップを受けている。
ただGSX-S1000GX最大のポイントは、やはりスズキの二輪車としては初採用となる電子制御サスペンションだ。しかもこの電子制御サスペンションは、モードを変えると減衰特性のセッティングが変わるだけの電子制御サスペンションではなく、セミアクティブタイプ。つまり車速や路面状況に合わせて適切な減衰力に即時変更される最新式の電子制御サスペンションが取り入れられている。
モードセレクト次第でロードスポーツ的な味付けから、アドベンチャーツアラー的なソフトで快適な乗り心地へと切り替わることはもちろん、ソフトなモードでも急激な入力があれば途中で減衰力特性を強めて底突きしないような制御を実施するというわけだ。
このセミアクティブタイプの制御のおかげで、ロードスポーツ的な味付けはしっかり硬めの足回りとなり、ソフトなモードならしっかり足回りが柔らかくなる。おかげでモードを切り替えると別のバイクに乗り換えたかのような錯覚に陥る。当然、峠を攻めるようなスポーツ走行から、何日も走り続けるようなロングツーリングまで、1台で何役もこなすようなマシンに仕上がっていたのだ。
試乗会では基本的にオプションのパニアケース装着状態で走ったが、そのままワインディングが気持ちよく攻めれたりしてしまうことにびっくり。この電子制御サスペンションは前後個別に減衰力変えたり、リヤのプリロードの微調整にも対応。ライダーの好みに合わせたカスタマイズもできる。
GSX-S1000GXと“GT”との違い -ディティール考察-
まとめ
ワインディングから、市街地。高速道路まで、丸2日走って気に入ったのは、他社の直4エンジン&長脚17インチモデル……、つまりカワサキのヴェルシス1000SEや、BMWのS1000XRに比べて、GSX-S1000GXは随分車格がコンパクトだということだ。軸間距離で言えば1470㎜。この数値はライバルたちが軒並み1500㎜を超えていることを考えるとかなり小さいと言えよう。おかげで取り回しもしやすく、乗った印象もアドベンチャーバイクというよりは、ロードスポーツモデルに近くGSX-Sシリーズそのまんまのサイズ感で小さく感じる。やっと日本の道路環境に合致した長脚のツアラーが登場したという印象を受ける。
次回は、GSX-S1000GXの最大の特徴である電子制御サスペンションの独自機能についてみていきたい。
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