例年より約1カ月早く開催された鈴鹿8耐へ

2026 FIM世界耐久選手権“コカ·コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第47回大会

▲ウェットコンディションで行われた鈴鹿8時間耐久ロードレース決勝。画像提供:ヤマハ発動機

こんにちは、青木タカオです。今年も鈴鹿8時間耐久ロードレースの取材に行ってきました。

真夏の祭典として知られる鈴鹿8耐は、例年であれば7月下旬から8月上旬に開催されます。しかし今年は7月3日(金)〜7月5日(日)と、およそ1カ月早い日程で実施されました。

3日間の来場者数は延べ5万9000人。前年より2500人少ない数字となりました。夏休み前の開催だったことに加え、梅雨明け前というタイミング、さらに土日とも雨に見舞われたことも影響したのかもしれません。

土曜日の見どころのひとつである、上位10台のスターティンググリッドを決める「トップ10トライアル」は、悪天候で公平なコンディションを確保できないと判断され、4年ぶりに中止。決勝レースも雨が降り続く難しいコンディションの中でスタートしました。

2026 FIM世界耐久選手権“コカ·コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第47回大会 Yamalube YART Yamaha EWC Official Team

▲カレル・ハニカ選手(Yamalube YART Yamaha EWC Official Team)。画像提供:ヤマハ発動機

それでもコース上では、最後まで目が離せない熱戦が展開されました。悪天候にもかかわらず、多くのファンが鈴鹿サーキットへ足を運び、スタンドは熱気に包まれていました。

ボクも毎年、この鈴鹿8耐ならではの特別なお祭りムードを楽しみにしています。同じ思いで鈴鹿を訪れるファンも多いことでしょう。

EWCとSSTは何が違う?

Honda HRC 高橋巧 鈴鹿8時間耐久ロードレース

▲Honda HRCの高橋巧選手。画像提供:ホンダレーシング

鈴鹿8耐を走るマシンは、約1000ccの市販スーパースポーツをベースにした「スーパーバイク」です。8時間という長丁場を全開で走り続けるためには、絶対的な速さだけでなく、高い耐久性と信頼性も求められます。

そのため長年にわたり、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキといった日本メーカーが圧倒的な強さを見せてきました。一方で近年はBMWの存在感が急速に高まり、日本メーカー以外のマシンで戦うチームも増えています。

現在の主なカテゴリーは「EWC」と「SST(スーパーストック)」の2クラスです。どちらも1000ccクラスの市販車をベースとしていますが、改造範囲や使用できる部品などのレギュレーションが異なり、チームの体制や予算に応じて参戦クラスが選ばれます。

最高峰となるEWCクラスは総合優勝、そして世界チャンピオンを争うカテゴリーです。レギュレーションは全日本ロードレース選手権JSB1000クラスに近く、エンジンチューニングをはじめ、フロントフォークやスイングアーム、ブレーキ、マフラーなど、多くの部分を改造できます。

さらに独自開発したパーツの投入も認められているため、各メーカーが持つ技術力を存分に発揮できる舞台でもあります。FIM世界耐久選手権の「世界チャンピオン」の称号が与えられるのも、このEWCクラスだけです。

BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM

▲BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM。画像提供:BMW MOTORRAD

市販車に近いSSTクラス

Team Étoile BMW MOTORRAD M1000RR

▲ストック状態に近いマシンで走るSSTクラス。写真はチーム・エトワールのBMW M1000RR。画像提供:BMW MOTORRAD

対するSSTクラスは、世界選手権ではなく「ワールドカップ」として実施されています。2024年から鈴鹿8耐もシリーズに組み込まれましたが、年間ランキングは4戦中の上位3戦で争われるため、年間を通じて参戦するチームは決して多くありません。

SSTの「ストック」は、市販車に近い状態を意味します。エンジンには基本的に手を加えられず、改造範囲も最小限。ベース車両本来の完成度が勝敗を左右します。

使用する部品も一般に流通するものが中心となるため参戦コストを抑えられ、プライベートチームでもチャレンジしやすいカテゴリーとなっています。また、タイヤは全車ダンロップのワンメイクです。

Honda HRC CBR1000RR-R SP

▲最高峰EWCクラスに参戦するHonda HRC CBR1000RR-R SP。画像提供:ホンダレーシング

ピット作業にも違いがあります。EWCでは耐久レース専用のクイックホイールチェンジシステムが使用できるため、タイヤ交換を短時間で終えられます。

一方、SSTは市販車用ホモロゲーションホイールを使うため交換作業に時間がかかり、その差は約40秒にも及びます。そのためSST勢は2スティント、あるいは3スティント連続で同じタイヤを使う戦略を採ることが多く、総合優勝争いではEWC勢が有利になります。

もうひとつEWCならではの見どころが、タイヤメーカー同士の開発競争です。SSTがダンロップのワンメイクなのに対し、EWCでは複数メーカーが性能向上を競い合います。

今年もブリヂストン勢が圧倒的な強さを見せました。優勝チームをはじめ、総合13位までをブリヂストン装着車が独占。2006年の初優勝以来、鈴鹿8耐で19大会連続優勝という前人未到の記録も更新しています。

なお、サステナブル燃料など次世代技術の実証を目的とした「EXP(エクスペリメンタル)」クラスも設けられており、各メーカーが将来を見据えた技術開発の場として活用しています。

Honda HRCが大会5連覇

Honda HRC 鈴鹿8耐

▲Honda HRCが雨の鈴鹿8耐を制し5連覇。高橋巧が最多優勝記録を更新する通算8勝目を記録した。画像提供:ホンダレーシング

そんな今年の鈴鹿8耐を制したのは、ホンダのワークスチーム「Honda HRC」です。

高橋巧選手、ジョナサン・レイ選手、ソムキアット・チャントラ選手が駆るCBR1000RR-RファイアブレードSPは、過酷なコンディションの中でも安定した速さを披露し、見事に総合優勝を飾りました。

これでHonda HRCは鈴鹿8耐5連覇を達成。ホンダとしては大会通算32勝目となります。

さらに高橋巧選手は自身8度目の優勝を果たし、自らが持つ大会最多優勝記録を更新するとともに、前人未到となる5連覇も達成しました。

YAMAHA FACTORY RACING TEAM YZF-R1 鈴鹿8耐

▲総合2位に入ったYAMAHA FACTORY RACING TEAM/ヤマハYZF-R1。画像提供:ヤマハ発動機

2位にはYAMAHA FACTORY RACING TEAM(中須賀克行/ジャック・ミラー/アンドレア・ロカテッリ)がYZF-R1で入り、3位はBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(マーカス・ライターベルガー/スティーブン・オダンデール/マイケル・ファン・デル・マーク)が獲得しました。

BMWにとっては、鈴鹿8耐史上初となる外国メーカーによる総合表彰台という歴史的快挙となりました。

鈴鹿8耐 BMW

▲1978年の初開催以来、日本の4大メーカーが絶対的な覇権を握り続けてきた鈴鹿8耐。そこに風穴を開けたBMW。初の表彰台となった。画像提供:BMW MOTORRAD

SST優勝はNCXX、EXPはスズキCNチャレンジ!

SSTクラスを制したのは、NCXX RACING with RIDERS CLUBです。長島哲太選手、亀井雄大選手、伊達悠太選手の3人がCBR1000RR-Rを駆り、激戦を制しました。

EXPクラスでは、サステナブル燃料仕様のGSX-R1000Rで挑んだTeam SUZUKI CN CHALLENGEがクラス優勝を達成。総合でも7位という見事な成績を残しています。

チームスズキCNチャレンジ

▲社員を募って結成されたチームスズキCNチャレンジ GSX-R1000R。画像提供:スズキ

スズキ社員を中心に構成される同チームは、今年も社内公募で選ばれた新メンバーを加え、環境負荷の低減と高い走行性能の両立をテーマに挑戦。

サステナブル燃料だけでなく、さまざまな環境対応部品の採用範囲を広げながら、8時間という過酷なレースを見事に完走しました。

やっぱり面白い鈴鹿8耐!!

今年の鈴鹿8耐は、例年とは異なる開催時期に加え、雨にも翻弄される難しい大会となりました。それでも、コース上では世界最高峰の耐久レースにふさわしい熱い戦いが繰り広げられ、スタンドを埋めたファンの声援が大会を大いに盛り上げていました。

ホンダの5連覇、BMWによる外国メーカー初の表彰台、そして環境技術の未来を切り拓くEXPクラスへのスズキの挑戦など、今年も数多くの歴史が刻まれました。

耐久レースは単に速さを競うだけではなく、信頼性、チームワーク、戦略、そして技術開発のすべてが試される舞台です。だからこそ、鈴鹿8耐は今なお世界中のライダーやメーカー、そしてファンを魅了し続けているのでしょう。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。最後の写真は、大人気のエヴァンゲリオンレーシングを応援するサーキットメイト、真希波・マリ・イラストリアス役の雪野るなさん です。

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