「ヤスノリくん知ってる? 145馬力(!!!!!???)を発生するVブーストシステム(???)付き1198㏄水冷V型4気筒エンジン(!?)を搭載したスプリント・アメリカン(!???)が登場したってさ……」ハァ? ナニソレ!? “3ナイ運動”によりバイクから隔離されていた高校時代。山口より3~4日早く1日売り二輪雑誌を入手できる都会住みオジサン(親戚)から聞いた衝撃的な存在……それがヤマハ『VMAX』だったのです!

VMAX1200_1995

●1996年型ヤマハ「VMAX1200」カタログより。メーカー自ら「マシン」「魔神」をかけるというところにも並び立つモノのない特別感が伝わってまいりますね。この年で登場から11年……。北米専用車種として開発され1985年にデビューした“魔神”は、その圧倒的な魅力ゆえヤマハ側も想像していなかった展開をみせていきます。そのあたりもじっくり紐解いてまいりましょう。あ、このモデル「V-MAX」とか「Vmax」とか「VMX12」とか「VMAX1200」とか……仕向地や仕様、年式、果ては各二輪雑誌ごとに(!?)表記が異なったりしていますが、本文中は「VMAX」で統一させていただき、各キャプション(写真の説明文)では極力正式名称を使ってまいりますのでナニトゾご了承いただけますよう……

 

 

セローという人気者と愉快な仲間たち【その10】はこちら!

 

VMAXという孤高の“魔神”【その2】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

とんでもないモデルがヤマハから出た!との伝聞に心がザワつく……

 

 

「ちょっと、ナニ言ってるかわからない」

 

 

今となってはサンドウィッチマンのコント内決め台詞として有名なこの言葉が、彼らの結成14年前となる1984年末高校2年生だった筆者の脳内を駆け巡りました。

お笑い

●面白いですよね〜サンドウィッチマンさん。ご存じグレープカンパニーに所属する日本のお笑いコンビで1998年9月に結成。『M-1グランプリ2007』王者、『キングオブコント2009』準優勝……って経歴はともかく、現在はもうテレビにラジオに週何本レギュラー持っているの?というレベルのトップランナーですよね。筆者が現在住んでいる仙台出身ということもあり、宮城ローカル局にもしっかり番組があるため、めちゃくちゃ楽しませてもらっております〜(^_^)v

 

 

 

狭いようで広いニッポン……本州の端っこ山口では、筆者が毎月の発売を心から楽しみにしていたモーターサイクリスト誌も店頭に並ぶまで都会とは数日間のタイムラグがあり、

日本地図

●47都道府県の名前と位置、全部ソラで言えますか? 前に書いたかもしれませんが私が埼玉県草加市にある獨協大学生となった1986年当時、山口県を四国か九州だと認識していたクラスメイトがいて驚愕いたしました。本州だよ(ギリギリだけど) まぁ中国地方出身のコチラも北関東や東北という概念が抜け落ちており、東京のすぐ上は北海道だと思っていましたからね……(^^ゞ

 

 

 

最新情報へ飢えに飢えていた田舎のライダー予備軍はその数日が待てず、毎月1日になるとアーバンライフを満喫しているオジサン宅へ電話してバイク雑誌最新号のニューモデル情報を聞き出していたのです。

上京したておのぼりさん

「1日売りのバイク雑誌が1日に買える!」、「民放テレビ局が4〜5つある!」というだけで死にたいくらいに憧れた花の都大東京(当時、山口の民放はKRYとtysの2つのみ)。進学後、ぴあmap片手に東京散策へ向かった筆者はこのイラストのまんま

 

 

 

そこで“ブイマックス”とか言うらしいヤマハの新車に関する情報が、ページをめくる音と一緒に受話器から流れてくるものの全くもって理解が追いつきません

マシュマロマン

ブイマックスに似てる響きということでディズニー映画『ベイマックス』を想起したのですけれど諸般の事情により、いらすとやさんのマシュマロキャラでお茶濁し。その映画、事前情報からハートウォーミングなしみじみお涙頂戴ストーリーを予想して劇場へ向かったら大いに裏切られました(いい意味で)。まぁ原題からして『BIG HERO 6』でしたしね……

 

 

各社のリッターオーバー旗艦が110〜125馬力だった時代にィ!

 

 

まず145馬力

 

 

ほぼ同時期となる1984年、世界最速を標榜しつつ鳴り物入りで登場したカワサキ「GPZ900R(=初代ニンジャ ※『トップガン』のアレですよ)」が115馬力(「GPz1100」でさえ120馬力)。

GPZ900R

●1984年型カワサキ「GPZ900R」。写真は北米仕様でサイドカバーに「Ninja(ニンジャ)」のロゴが神々しく輝いていますね〜。これが今に続くNinjaヒストリーの元祖なのですよ! メーカーが発表した最高速度は240㎞/h以上0-400m加速:10.976秒とのことで筆者のようなスペック至上主義ヤロウどもはコーフンしまくったものです。グラサンとフライトジャケットを身につけた自称“マーベリック”なオーナーが日本の路上でも増殖 (マルティプライズ)しまくり千代子

GPZ1100

●ちなみにこちらが1983年に発売されたカワサキ「GPz1100」。空冷Zシリーズの集大成的なモデルで燃料供給装置もキャブレターではなく先進のDFIを採用し、水冷の「GPZ900R」を上回る120馬力を発揮していました(最高速&ゼロヨンともニンジャ同等だったという証言あり)。個人的にはこのスタイリング、最高なのですよね……(^^ゞ。カワサキも万が一「GPZ900R」が既存のファンにソッポを向かれる可能性を懸念したのか1985年まで販売が続けられました

 

 

ホンダ「VF1000R」122馬力

●1985年型ホンダ「VF1000R 」。空冷並列4気筒の「CB1100R」からスポーツフラッグシップの座を奪い取った(当時の)V4最大排気量車

 

 

 

ヤマハ「FJ1100」でも125馬力で、

ヤマハFJ1100_1984

●1984年型ヤマハ「FJ1100」。今見てもメチャクチャカッコいいですな……

GSX1100EF

●ちなみにその頃のスズキ最大排気量スポーツは……1074㏄空冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載していた「GSX1100EF」。う〜ん、カッコ(以下略)。1983年から1987年あたりまで海外市場で売られており、年式によっては124馬力くらい出ていたという情報もございますけれど詳細はイマイチはっきりせず m(_ _)m

GSX-R1100

●まぁ、1986年からは皆さんよくご存じな、泣く子も黙って感染するチキチキ油冷マシン「GSX-R1100」が130馬力でデビューいたしますので……

 

 

 

それでもスゲーよスゲーよ(語彙力)と大騒ぎしていたところへ当時の量産市販二輪車の馬力最高数値をとんでもなく上乗せしてきた145馬力で登場って……(意味がワカラナ~イ)。

 

 

しかも、そんなハイパワーは“ブイブウスト”なる聞いたこともない機構のおかげで達成してるのだとか(ターボ……じゃないのね?)。

ゲーテ

ブイブウストに似てる響きということでドイツの文人ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの代表作ファウスト』を想起したので、いらすとやさんの「ゲーテの似顔絵」をどうぞ。手塚治虫先生のマンガ版もメチャクチャ面白かったなぁ。なお一部まどマギ界隈でよく知られる「ワルプルギスの夜」も出てきます…… m(_ _)m

 

 

 

1.2ℓの水冷V4はマァいいとして(アレ? ヤマハにそんなエンジンあったっけ? 新作!?)、ジャンルはスプリント・アメリカン(は? レーサーレプリカじゃないの?)だというではありませんか……。

 

 

結局最後まで“何が何やら”感に包まれたまま、オカンの「早くゴハン食べなさい!」という一喝でオジサンとの電話は強制終了されました(^^ゞ

怒っているおかあさん

●今思えば感謝しても感謝しきれないマリアナ海溝より深い母の愛……。しかし反抗期には「うるさいなぁ!」としか感じられないもの。家にビデオなんてなく、かつオーディオケーブルの存在すら知らなかった時代、テレビのスピーカーにラジカセのマイク部分を近づけて金ロー『風の谷のナウシカ』音声を録音しているときも、ふすまを突然開けて「勉強しぃさん!」ときたときには大げんかが勃発。その模様がソニーBHFテープに延々とレコーディングされましたとさ

 

 

全銀河のファンが熱い視線を注いだ秀逸に過ぎるスタイリング!

 

確か4日後、徳山高校から自転車での帰り道、行きつけの原田書店で1ヵ月のお小遣い500円玉をレジにブン投げ入手したモーターサイクリスト誌を家で開くと……おおっ、アメリカでの「VMAX」お披露目(会場は退役した空母!)時に“キング”ケニー・ロバーツ氏がバーンアウトをカマして後輪から白煙をド派手に上げる写真をはじめとした小特集が組まれているではあ~りませんか! 

1985年VMAXカタログ

●1985年型北米向け「VMX12(V-MAX)」カタログに用いられたビジュアルより。凜として佇むマシンの背景に配された白煙モウモウなドラッグレースシーンがド迫力ですなぁ〜。とにもかくにもパワーユニットがドドドド〜ン! 「剥き出しのエンジンが走っている」とも称された、この何者にも似ていない力こぶパンパンぶりがアメリカ〜ンだけでなくヨ〜ロピア〜ンやジャパニ〜ズなどにいたマッチョ大好きライダーたちにバカウケしていったのです

 

 

 

初見、車体の中央にはとんでもない存在感を放っているV4エンジンが鎮座しており、その上のタンク?は凄く小さそう(実際、燃料タンクではなかった)でリヤタイヤのボリューム感も満点……とにかく“異形”と呼ぶしかない、それでいてメチャクチャ美しいスタイリングに衝撃を受けました。

VMAX12_1985年

●上で紹介した赤〈ディープスカーレッド〉と並んで写真の濃紫〈ダークアメジスト〉も用意された1985年型「VMX12(V-MAX)」。ひとくちに北米仕様と言ってもカナダとアメリカでは微妙に仕様が異なったり、さらにカリフォルニア州独自のエミッションに対応したモデルが存在したりと、オーナー予備軍にとっては実に悩ましい事態がすでに……。やっぱり大枚はたいて入手するなら、スカッとフルパワーモデルに乗りたいというのは人情ですから〜

 

 

 

後日知ったのですが、かくいう卓越したスタイリングをまとめ上げたのはヤマハ発動機のモーターサイクルデザインを手がけるGKグループの生え抜き、一条 厚氏SRX-4/6のほか、

SRX-6

●本文中では個人的に思い入れのあるSRX-6と書いてしまいましたが(だってサイドカバーにはそう記載されていましたし、何よりカッコイイじゃないですか!)、正式名称はヤマハ「SRX600」……で、このモデルも1985年デビューなのですよね。どうですか、この「VMAX」とは対極と言っても過言ではない優美さと繊細さは……。一条氏のデザイン引き出しの多さや大きさ、奥深さには圧倒されるばかりであります

 

 

 

XS-V1 SakuraやY125もえぎ、XTW250陵駆などのショーモデルなども担当。後にGKダイナミックス代表取締役社長、 GKデザイン機構取締役を務められて2018年退職)。

 

 

その一条氏が1980年からの米国出向中、「USヤマハの象徴となる車両が欲しい。とにかくアメリカ人にウケることが最優先!」という依頼を受け、ならばアメリカ文化の真髄“力の象徴”をデザインしてやろう……とばかり奮い立って具現化していったのが「VMAX」なのだとか。

VMAX1200_1985年USA

●1985年型「VMX12(V-MAX)」。ボア×ストローク76×66㎜、圧縮比10.5というシリンダー挟角70度の1198㏄水冷4ストV型4気筒DOHC4バルブエンジンは4連ダウンドラフトキャブレター (ミクニ・BDS35)の実力と相まってフルパワー仕様は最高出力145馬力/9000rpm、最大トルク12.4kgm/7500rpmを発揮(変速機は5速リターン)! 燃料タンク容量15ℓ、シート高765㎜、装備重量274㎏。ブレーキ形式(前・後)φ310㎜ダブルディスク・φ230㎜ディスク。車体サイズも重要なので記載しておくと全長×全幅×全高は2300×795×1160㎜、ホイールベース1590㎜、キャスター角29゜、トレール量119㎜、最低地上高145㎜……。後日、筆者も様々な仕様の「VMAX」を体験したのですが、怒濤の加速をしたときお尻をしっかり支えてくれるシートの段差には本当に助けられました〜。全ての形状に意味があるのです!

 

 

 

ドラッグレーサー☆筋肉隆々なマッチョ☆V8エンジン搭載のアメ車☆空母からカタパルト発艦する戦闘機☆強くてデカくてパワフル……などといった多種多様なイメージから数多のスケッチ(1/1版も!)やクレイモデルが作られていき、最終的に圧倒的な存在感を放つ“唯一無二”の力感あふれるフォルムが完成していったのです。

VMAX資料

●1985年型「VMX12(V-MAX)」登場時に配布された資料より。そう、今さらなのですけれどV4エンジンが生み出した強大なパワーを後輪へと伝えるのはチェーンではなくシャフトドライブなのですね。ほぼメンテナンスフリーで駆動効率も高いというメリットはあるのですが、強大なトルクを発生する車両で乱暴な運転をすると故障する可能性が高まります。実際,初期型ではギヤケースが破損するという事例も少なからずあったとか(後期型では対策を実施済みとのこと)

 

 

なんと! ベースとなったエンジンは大陸横断クルーザーから調達!

 

「しっかし、こんなカッコイイ、なおかつ145馬力を叩き出すようなエンジンなんてヤマハにあったっけ? やっぱり新作なのかな?」と思っていたら、なんとベースは輸出専用の大型クルーザー「ベンチャーロイヤル」のパワーユニットだと知って二度ビックリ

XVZ1200T

●1983年から発売が開始されたヤマハ「ベンチャーロイヤル」! ヤマハグローバルサイトではのMODEL NAMEとして「XVZ1200T VENTURE」と記載されている超豪華ツアラー(ズバリ、ゴールドウイングの対抗馬)ですね。なんとこの時代に自動調整機構付きエアサスペンションにオートクルーズやFM・AMラジオ+カセットのステレオ(こちらも周囲に騒音に応じて音量を自動調整)などなど先進的な快適技術を満載! 色といい雰囲気といい下のゴールドウイングを丸パクリ……いや、激しくリスペクトしていることが分かります。ちょうど苛烈を極めたHY戦争の時代でしたしね……

ゴールドウイング

1975年に独創的な999㏄水冷4スト水平対向4気筒OHC2バルブエンジンを搭載するグランドツアラーとして誕生した“初代ゴールドウイング”ホンダ「GL1000」。「CB750フォア」を上回る大ヒットを記録したカワサキZ1こと「900スーパーフォア」に対抗すべく生み出されたスーパースポーツでしたが、1980年発売の2代目でツアラー方向へ大胆に路線を変更。中でもゴールドウイング初のフェアリングを採用した本格的な長距離ツアラーとして人気を博したのが写真のGL1100インターステート」でした(排気量を1085㏄に拡大しホイールベースも延長)。現在まで続いている世界屈指の快適ツアラー、ゴールドウイング伝説の礎となったモデルです!

 

 

 

慌ててモーターサイクリスト誌のバックナンバーを紐解けば、ご立派なフェアリングと巨大なラジエターの透き間から、それっぽい造形がチラリと垣間見られます。ふむふむ、「ベンチャーロイヤル」の1198㏄水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブエンジンは……最大出力97馬力/7000rpm、最大トルク10.4kgm/5000rpmしかないの!?

 

 

「VMAX」は145馬力/9000rpm、12.4㎏m/7500rpmですから、なんとパワーが48馬力も上乗せされているではないですか!

 

 

同じ排気量でターボやスーパーチャージャーという過給器を使わずにホンダ「CBX400F」1台分の出力をマシマシしているなんて一体どういう魔法を使ったのか!? 

●1981年11月に満を持して発売されたホンダ「CBX400F」。新設計された399㏄空冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは当時のクラストップとなる最高出力48馬力を発揮! 令和の世でも変わらぬ高い人気を博しているバケモノ的存在ですね。漫画でも『ふたり鷹』、『あいつとララバイ』、『湘南純愛組』、『東京卍リベンジャーズ』(^^ゞなどに登場し、映画『ハイティーン・ブギ』ではマッチこと近藤真彦さんが颯爽と乗っていました

 

 

 

それがブイブウスト……いや、V-BOOSTと名付けられた“高回転域では1つのシリンダーへキャブレター2つ分の混合気をドカスカぶち込んじゃうぞ”システムだったのです。

Vブースト

●「VMAX」はV型4気筒エンジンなのでVバンクの間にダウンドラフトキャブレターが4つ装着されています。そのキャブレター下部にある混合気の通路……インテークマニホールド(上図版の黄色い部分)の前後を貫通させてサーボモーターで可動するバタフライバルブを設定したのがVブーストシステムなのですね。こちら、エンジンの回転数が6000rpmを超えた時点でバルブが徐々に開き始め、やがて8500rpmで全開に(上はまさにスロットル全開時のイラスト)! すると1気筒当たり2つのキャブレターが大量かつスムーズにガソリン混合気をシリンダーへ送り込むため爆発的なパワーアップ=怒濤の加速を果たすのです!! しかし、YPVSといいEXUPといい、ヤマハはサーボモーター+ワイヤー+バルブで吸気or排気を制御するシステムのパイオニアですなぁ

 

 

 

こちらをキーテクノロジーとしつつ、もちろん内部も外観も入念な改良が施され、ベースモデルから約1.5倍増となった最高出力と以降10余年にわたってファンを魅了し続けるスキのないフィニッシュを手に入れた美マッチョエンジンが完成いたしました。

VMAXエンジン

●いや本当に、初めて実車の「VMAX」を目の前にしたときは、数分間エンジンから視線を外せませんでしたから……。アルミの削り出し加工や銀めっきパーツの造形がまさしく空気(混合気)の流れを表現しています

 

 

 

かくいう御神体を車体の中央へドン!と置き、走行風がV4エンジンへ吸い込まれていく空気の流れを想起させるアルミパーツやその上のダミータンクカバー(エンジン直上にある巨大なエアクリーナーボックスと冷却水タンクを覆うもの)を上に載せ、後方には強烈な加速へ対抗するための段付きシートと「Vmax」の立体ロゴも美しいアルミサイドカバーを用意。

カットモデル

●Vブースト全開時、1198㏄もの排気量を持つV型4気筒エンジンがドカスカ吸い込んでいく空気量を確保するためキャブレター直上に置かれた巨大なエアクリーナーエレメント&ボックス。今どきのラムエア車両よろしく、YAMAHAロゴも美しいエアダクト的な左右アルミパーツの前面から走行風を吸気している……と思いきや、この部品は完全にダミーだと聞いてブッ飛んだ記憶がございます(確かにフタがしてある)。ただ、アルミパーツの上面を流れてきた風がダミータンクカバー前面の透き間からエアクリーナーボックスへ吸い込まれていくので、多少の役には立っているようですね。シランケド(^^ゞ

 

 

 

そして可愛らしささえ感じさせるアヒルのお尻のようなテールカバーに、低扁平率なおかげで真横から見たとき“ムチムチパンパン!”感がハンパなかった150/90-15のリヤタイヤなどが相まって、今なお当てはめるべきジャンルが存在しない「VMAX」スタイルが完成したのです。

ヤマハニュース抜粋

●ヤマハニュースNO.257 1984年11月号 4ページ目より抜粋。ヤマハ自身「VMX12(V-MAX)」をどう表現していいのかわからず悩んでいるようなところが微笑ましいですね(?)。結局「ホットロッド、スプリント・アメリカン」と銘打ってはいますけど……。アメリカンという言葉も今ではクルーザーと置き換えられていたりしますし、パワークルーザーとか、ドラッグクルーザーとか……。いやいや、やっぱり「VMAX」は「VMAX」ですね!

 

 

 

1984年末でのお披露目を終え、翌1985年に北米でのデビューを果たした「VMAX」は、目論見どおりアメリカンライダーの心を鷲づかみすることに成功いたします。

 

 

そりゃぁそうでしょう!

 

 

見たこともないような獰猛さと美しさを併せ持つ総重量274㎏の巨体が、スロットルを捻るだけで身をよじらせつつゼロヨンを10秒台で突っ走るというのですから「アンビリーバボー!」DEATH YO!

メーター

●前傾姿勢でお尻を段差に押しつけつつスロットルを全開にすれば、バーハンドルにしがみつくしかない怒濤の加速がスタート! シフトアップするたび回転計のような速さでスピードメーターの針が動いていくことに恐怖すら感じました。そんな激しい走りを多用すると、アッという間にFUELと書かれた文字の下にある赤いインジケーターランプが点灯しちゃうのですけれど……(^^ゞ ちなみに15ℓタンクの10ℓを使って残り5ℓとなった時点で警告灯が輝くそうです

 

 

 

と、ここまで魅力的なモデルを全世界が放っておくはずがございません

 

 

特に欧州そして生産国でもある日本でも「VMAX」は熱い注目を集め、それは大きなうねりとなって今なお語り継がれる狂想曲的なストーリーを紡いでいくことになるのです……。

エンブレム

●「友人が2WEのU49を買ったんだけどさ、ボクはこだわって2LTにしたの。やっぱり3UFじゃイマイチだよね〜」。モーターサイクリスト誌のバイトなりたて時代、非常に濃ゆいVMAXオーナーの取材をしているとき散々思ったものです。「ちょっと、ナニ言ってるかわからない」(^^ゞ

 

【おまけ】1985年にはこんなモデルがデビューしてました!

GPZ400R

●熱狂の1980年代バイクブームの折り返し地点とも言える1985年、「VMAX」だけでなく数多くのエポックメイキングなモデルが発売されました。400クラスでは1984年にスズキ「GSX-R」とヤマハ「FZ400R」が登場し、丸目二眼のレーサーレプリカブームが巻き起こるなか、カワサキは1985年に違う方向へと進む写真の「GPZ400R」を発売。レプリカ同等の59馬力を発揮しつつクリーン&マッチョなスタイリングでアンチレプリカ派をうまく取り込み、この年と翌年の2年連続してベストセラーに輝くという快挙を達成!

スズキRG500Γ

●1984年にヤマハが「RZV500R」を登場させ、世界GPレーサーのレプリカバトルが勃発! 翌1985年にスズキが水冷2ストスクエア4気筒ロータリーバルブというレーサーまんまのエンジンで写真の「RG500Γ(ガンマ)と免許制度も考慮した「RG400Γ」を市場へ投入。ホンダもV型3気筒の「NS400R」をデビューさせて覇を競いました。500Γは64馬力/5.8㎏mのパフォーマンスを誇り、ウォルターウルフ仕様もシビれるカッコよさ……。今なおこの大排気量2ストジャンルは高い人気を誇ってますね

1985年TZR250

●1985年も押し迫った11月に登場したヤマハ「TZR250」は250㏄2ストレプリカの基準を数段階は一気に上昇させた画期的なモデルでした。アルミデルタボックスフレームにパワフルなパラツインを搭載し、軽快かつ自由自在のハンドリングも実現。何よりタメ息が出るほどのカッコよさよ……。同年ヤマハは45馬力超高回転型並列4気筒エンジンを持つ「FZ250フェーザー」もリリースしていますから、ライバルメーカーの負けず魂に着火しまくり千代子でした! そうだそうだ、忘れてはいけません。あの「セロー225」登場もこの年ですよ!!

レブルスペシャル1985

●現在のホンダ「レブル250」しか知らないナウなヤングたちよ。こちらが元祖たる1985年発売「レブル(スペシャル)」です。まぁ、もうちょっと大人しい標準仕様の「レブル」もあったのですが、あえてキンキラ唐草模様のこちらを紹介しておきましょう。壮絶なレーサーレプリカ開発の片手間に作ったかようなモデルですが、実際にゆる〜く乗って付き合える軽さと低いシート高と値段の安さとが相まって老若男女を問わない想定以上の大ヒットを記録! ここから「Vツインマグナ」やヤマハ「XV250ビラーゴ」、「ドラッグスター250」、カワサキ「エリミネーター250V」、スズキ「イントルーダーLC250」、「マローダー250」ほか250クルーザーバトルが本格化したのです〜

 

 

さて、次回はワールドワイドに販路が広がっていった道筋と、仕様違いによる日本ユーザーの大騒ぎっぷりなどをお伝えしてまいりましょう。

国内仕様

●1990年型「VMAX1200」カタログ表紙より。こちら、日本のリッターバイク解禁元年に登場した国内仕様です!

 

 

あ、というわけで日本全国に300店舗を超えるネットワークを持ち、常時約5万2100台の車両を在庫しているレッドバロンには新旧「VMAX」がたっぷりと用意されております(マジで)。メンテ&修理のノウハウも補修パーツもたっぷりストックされておりますのでアフターサービスの心配ナッシング! まずはスタッフへ問い合わせてみてくださいね~(^^ゞ

 

 

VMAXという孤高の“魔神”【その2】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

セローという人気者と愉快な仲間たち【その10】はこちら!

 

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事