21世紀に入ってからというもの、何にでも「エコ」という言葉が付いて回ってきます。エコカー。エコ家電。エコバッグ。省エネ。脱炭素。

では、我々ライダーはどうなのか。休日になるとバイクに乗り、ガソリンを燃やして何十km、何百kmと走っていく。仕事でもない。荷物を運ぶわけでもない。

ただ走る。

「それって、エコなの?」

と聞かれたら……さて、どう答えよう。

そもそも「エコ」ってなんだ?

普段何気なく使っている「エコ」という言葉ですが、これがなかなかややこしい。まず、エコロジー(ecology)は本来「生態学」という意味の言葉です。そこから、自然環境や生態系との関わり、環境への負荷などを考える言葉として広く使われるようになりました。

一方のエコノミー(economy)は「経済」や「経済性」に関わる言葉。ものすごく簡単に言えば、環境への負荷を考えるのがエコロジー。燃料代や維持費など、お金の効率を考えるのがエコノミーです。

本来は別の話なのですが、日常会話ではどちらもなんとなく「エコ」と呼ばれてしまう。「このバイク、燃費がいいからエコだよね」と言ったとき、それは環境への負荷が少ないという意味なのか、ガソリン代が安く済むという意味なのか。実は、けっこう曖昧です。

今回考えたいのは、どちらかといえばエコロジーのほう。では、バイクはクルマより環境への負荷が少ない乗り物なのでしょうか。

バイクはクルマよりエコロジーなのか?

小さくて軽いバイクなら、クルマより少ないガソリンで長い距離を走れるものもあります。一方で、クルマなら4人、5人と乗れるし、大量の荷物も積める。バイクは基本的に1人か2人です。

「ガソリン1Lで何km走れるか」だけならバイクが有利でも、「何人を運べるか」「どれだけ荷物を積めるか」まで考え始めると、単純な比較ではなくなってきます。

タイヤも減る。オイルも交換する。チェーンやスプロケットなどの消耗品もある。バイクだって、作るためには資源を使うし、維持するためにもいろいろなものを消費します。

だから、

「バイクだからエコロジー!」

と簡単に言い切るのも、ちょっと違う気がしています。

やっぱりすごいぞ、スーパーカブ

とはいえ、バイクの中には「いや、これはかなりエコなんじゃない?」と思わせるモデルもあります。その代表格が、スーパーカブ。

現行のスーパーカブ110は、WMTCモード値で67.9km/L。数字だけ見ても、かなりの低燃費です。小さな車体で人ひとりを運び、荷物も積める。通勤や通学、買い物など日常の移動手段として考えれば、実に合理的な乗り物です。

ガソリン代も抑えられる。つまり、エコノミーという意味でも優秀。そして少ない燃料で長い距離を走れるという点では、エコロジーの面でも有利に見えます。

ただし、我々ライダーはその優秀な燃費を使って、

「今日は天気がいいから、100kmくらい遠回りして帰ろう」

なんてことを平気でやる(頭良すぎの発想)。

せっかく1Lでずいぶん走れるのに、楽しいから余計に走ってしまう。そう考えると、乗り物そのものがエコかどうかと、その乗り物をどう使うかは別の話なのだと思います。

カブは、一家に一台は欲しいバイクだと個人的に思っとります。

 

そもそも、なんのために走ってる?

さらに身も蓋もない話をします。ツーリングって、生産性だけで考えたら、ほぼゼロです。

朝からガソリンを燃やして山へ行く。峠を越えて、海を見て、ソフトクリームなんか食べて、またガソリンを燃やして家へ帰る。昨日と同じ家に帰ってくる。

「それ、なんのためにやってるんですか?」

と言われたら。

楽しいから!

以上、なのです。

知らない道を走る。景色を見る。風を感じる。旅先でご飯を食べる。そこに生産性なんて求めていません。

喜びのために走っている。趣味なんて、たぶんそういうものです。

ガソリンを燃やしているのは事実

とはいえ、「楽しいんだから何をやってもいい」という話でもない。ガソリンを燃やして走れば、排出ガスは出る。タイヤも減る。オイルや部品も使います。

そこは事実として受け止めておけばいい。だからといって、「環境に申し訳ないから、もうバイクには乗りません」まで行く必要もないと思っています。

もちろん法律やルールを守るのは大前提ですが、必要以上に罪悪感を持つより、自分にできる範囲で、ちょっと無駄を減らす。

そのくらいでいい。

ライダーにできる「ちょっとしたこと」

たとえば、必要もないのに空ぶかしをしない。暖機が必要なバイクでも、必要以上に長時間アイドリングさせない。走るときも、そのバイクに合ったギアを選んでスムーズに走る。

急加速して、急ブレーキ。また急加速。そんな走り方より、アクセルを滑らかに操作したほうが、ガソリンにもタイヤにも財布にも優しい。ここではエコロジーとエコノミー、両方にちょっと効いてきます。

そして、タイヤの空気圧やチェーン、エンジンの状態もきちんと整えておく。メンテナンスは安全のためだけではありません。バイクを無駄なく、気持ちよく走らせることにもつながります。

信号待ちのたびにエンジンを切る?

昔、信号待ちになるたびにエンジンを止めているライダーを見かけたことがあります。「アイドリングしている時間がもったいない」ということだったのでしょう。その気持ちは分かる。

でも、普通のバイクで信号待ちのたびに手動でエンジンを止めるところまで頑張らなくてもいいと思っています。エンジンを掛け直せばスターターやバッテリーも使うし、そもそも頻繁な停止と再始動を前提に作られたアイドリングストップ機構とは別物です。

長時間停車するならエンジンを切る。純正のアイドリングストップ機構が付いているなら、それに任せる。それくらいで充分。

信号が赤になるたび、

「エコ!」

とキーをひねる必要まではないでしょう。

ツーリング先で、ひとつだけできること

そして、これは誰でもできます。

ゴミを残さない。

自分が持ってきたものは、自分で持ち帰る。当たり前の話です。でもツーリング先で休憩していると、空き缶やペットボトル、お菓子の袋なんかが落ちていることもある。

もし余裕があったら、目の前に落ちているゴミをひとつ拾ってみる。別に「ライダーはゴミ拾いをしなさい」という話ではありません。

好きで走らせてもらった場所を、来たときよりほんの少しだけきれいにして帰る。そんな人がいてもいいと思うのです。

難しく考えすぎない

地球環境。CO₂。資源。燃費。考え始めると、話はどこまでも大きくなります。

もちろん大切な問題です。でも、一人のライダーがツーリングへ出るたびに、「今日の走行による環境負荷は……」なんて考えていたら、ちょっと疲れる。

だから私は、もう少しシンプルでいいと思っています。必要のない空ぶかしはしない。無駄なアイドリングはしない。バイクはきちんと整備する。ツーリング先を汚さない。

ガソリンを燃やして走る以上、環境負荷をゼロにはできません。でも、だからといってバイクに乗る喜びまで捨てる必要もない。

できることを、できる範囲でやる。

走って、景色を見て、おいしいものを食べて、気持ちよく帰る。その帰り際にゴミをひとつ拾えたなら、道も少しきれいになる。そして、たぶん、自分の気持ちも上に向く。

それぐらいのエコロジーなら、無理なく続けられそうです。

(おしまい)

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