東北の爽快ロードといえば、八幡平アスピーテラインや蔵王エコーライン、鳥海ブルーラインや磐梯吾妻スカイラインなど、山の道ばかりが思い浮かぶものですが、海にもいい道があるんです。そのひとつが今回ご紹介する、青森県道1号線。八戸(はちのへ)市の最東部、風光明媚な種差(たねさし)海岸に沿って走る、通称“うみねこライン”です。

八戸はまさに交通の要

 八戸って、北海道行きのフェリーが出ていますから、東北のツーリングライダーにはお馴染みの場所。内陸からは、東北自動車道と八戸自動車道で向かえばいいし、太平洋側からだったら、三陸自動車道も伸びています。八戸はまさしく交通の要。
 フェリーは、八戸港から北海道の苫小牧港へ向けて、1日4便、所要時間は7時間15分~8時間30分。
 夜中の22時ごろに出港して、翌朝6時ぐらいに到着するという、時間効率とコスパのいい便もあるんですよね。これだと眠っているうちに北海道上陸できてしまうし、その晩、ホテルや旅館を使わずに済むからお金が浮く、というメリットもあります。だから筆者もよく利用しています。

うみねこラインとは?

うみねこライン

 八戸に行くのなら、ぜひ走ってみてほしいのが、“うみねこライン”の愛称で親しまれている青森県道1号線。八戸市の観光名所・蕪島(かぶしま)から、JR八戸線の階上(はしかみ)駅付近に向かって太平洋沿いを南下していく県道で、この約15㎞区間がなんとも爽快。国の名勝・種差海岸を眺めながら、潮風の舞うシーサイドロードをのんびりクルージングすることができるのです。

蕪島神社

 どうして“うみねこライン”なのかというと、蕪島がうみねこの一大繁殖地だから。
 蕪島には古くから地元の方々に愛されてきた、漁業安全、商売繁盛の守り神・弁財天をまつった「蕪嶋神社」があり、ここに立ち寄るのも八戸ツーリングの楽しみのひとつですが、上空からの落下物にはどうぞお気をつけください。

蕪島神社

 ちなみに、うみねこは神の使いで、フンが当たるのはウン(運)がいいのだそうです。

種差海岸

 こちらは種差海岸。天然の芝生に覆われた段丘がどーんと広がり、解放感たっぷり。海岸線には荒々しい岩礁や、砂浜、緑美しい松原なども見ることができます。
 昭和を代表する作家のひとり・司馬遼太郎は、旅行記の名著『街道をゆく』シリーズ(朝日文芸文庫)で、種差海岸についてこう表現されていました。
「どこかの天体から人がきて地球の美しさを教えてやらねばならないはめになったとき、一番にこの種差海岸に案内してやろうとおもったりした。」
 日本中を旅して歩いた司馬遼太郎が、ここまで賛辞を贈るとは!
 種差海岸がどれだけ美しいのか、みなさんもぜひご自分の目で確かめに来てください。

八食センターでお土産・お食事を

 八戸でお土産を買おうという際は、八戸市民の台所、大型食品市場の「八食センター」に寄ってみてはいかがでしょうか。蕪島から約12㎞、バイクで約20分です。

八食センター

 お店の看板には「The市場! 八戸のうまいもんがみんな揃う!」とあります。まさにその通り。

八食センター

 全長約170mの館内には、水揚げされたばかりの鮮魚から、乾物珍味、青果、地酒、菓子類などまで、約60店舗が軒をつらねています。ヤマト運輸も店を構えているので、家族の待つ自宅まで、安くて新鮮な魚介類をクール便で送る、というのも可能。
 お食事ならば、館内で購入した食材をその場で炭火焼きで楽しめる「七厘村」という施設もありますし、手っ取り早く食べたい! というのであれば、海鮮丼、ラーメン、天ぷらなど、専門店も充実。なかには八戸の郷土料理「せんべい汁」がいただけるお店も。

知る人ぞ知る「ざる中華」も!

 旅先ではできるだけ、庶民に愛されているご当地グルメをいただく。これぞ旅めし。今回は、ざる中華。

ざる中華

 これは八食センターの厨スタジアム1Fにあった「勢登鮨」さんのざる中華です。
 ざる中華というのは、青森、秋田、岩手など北東北を中心に食べられているメニューで、中華麺を茹でて冷やしたものを、めんつゆでいただく料理(土地によっては、中華ざると呼ぶ)。早い話が、ざるそばの蕎麦を中華麺に置き換えたものです。だから薬味も、刻みネギ、ワサビ、刻んだ焼きのり。夏だけ提供するお店もあれば、通年メニューにしている店もあります。
 東北出身者である筆者にとっては、当たり前のメニューなのですが、よその土地では見ないんですよね。おいしいんだけどなあ。一度試しに家族に作って食べさせてみたら、「次はもういい」と拒否されてしまいました。なので自宅でひとり、お昼に自炊する際、ざる中華を作ってズルズルっと孤食しております。
 めんつゆなんて、どのご家庭にもあるでしょう? あとは中華麺を用意するだけです。安くて簡単、単純にうまい。「ざるそばを食いたいけど、つけめんもいいなあ」なんて迷うぐらいなら、ざる中華、一択(キッパリ)。みなさんもぜひお試しあれ。

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