スーパーカブ110で昭和に縁のあるスポットをダラダラ巡る『昭和レトロ紀行』。今シーズンは、埼玉県東松山市とその周辺をツーリング中だ。いよいよ目的の一つであるレトロな旅館に宿泊。「出る」と評判だが、さてどうなる?
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ビニールロープとトイレにビビりつつ、館内をチェック
上沼(かみぬま)旅館の部屋は、和室6畳ほどで、風呂、トイレは共同。コタツが特徴的だ。とりあえずコタツで足を温めてみる(取材日は11月下旬)。

↑前回辿り着いた「上沼旅館」。外観から雰囲気タップリ。■埼玉県東松山市本町1-3-6 http://www.kaminumaryokan.co.jp/

↑部屋はリフォームされているのか、なかなかキレイ。畳をよく見ると本物ではなく、シートだった。ティッシュや歯ブラシなどアメニティの類は一切ない。私が選んだのは朝食付きで6270円だった。なお、朝夕二食付きは6990円、夕食付き6820円、素泊まり5390円(時期によって変動あり)。

↑冷えたのでまずはコタツにIN。しっかり隠されているが、姿見がコワい。
HPによると、上沼旅館の創業は昭和25年(1950年)。現在は三代目が引き継ぎ「昔ながらの旅館を守っています」という。スポーツなどの合宿、ビジネス目的の宿泊が得意で、特徴の一つとして大々的に「無料Wi-Fi」を推している。
問題は第1回で書いたとおり、どうやら「出る」らしいということ。googleで検索すると「上沼旅館 心霊」とサジェストが出てくる。詳しく調べてみるとXで遭遇したらしい人が2人いるようだ。それによると、特に「トイレ」がヤバいらしい。

↑写真はHPより。昭和22年に上沼旅館で撮影された「アメリカ進駐軍歓迎の宴」の様子。長い歴史があるだけに色々なことがあったのだろう。

↑床の間があったのでヘルメットを飾ってみた。

↑収納には昔ながらの座椅子。

↑さらに姿見の収納を探ってみると、なぜかビニールロープが。怖ッ! あ、洗濯物を干すのに使うのか?

↑窓の外は冬枯れの公園。

↑おなじみのせんべい布団とそば殻マクラ。毛布にはシミが。
さて、人心地ついたので、さっそく館内をチェック!

↑廊下には布団干しが無造作に置かれている。

↑なぜ「ろう」だけ平仮名なのか。

↑第3回でも書いたとおり、階段ごとに段差がある上に、スリッパの底が外れているので非常に歩きにくい(笑)。

↑1階の廊下にはちょっとだけ上がる階段と共用のレンジが。

↑ロビーと言っていいのか、ちょっとした広間には、自動販売機と自由に使える冷蔵庫、そしてミラー貼りの柱が。缶コーヒーはフルプライスの150円也。

↑玄関から続く廊下。宴会場があるようだ。

↑こちらがフロント。玄関は二つあり、道路に面したフロント側からも入れる。出かける時はカギをフロントの机に置くのがルール。ただし人が常駐しているわけではないため、セキュリティに不安が……。

↑フロントの近くには年季の入ったポット&テーブルがある。部屋用らしい。
懸案の共同トイレは、不思議なことに写真を撮ったつもりが撮り忘れていた。トイレでは、意識しているせいか視線を感じてしまう(笑)。そして館内は、施設の古さに加え、「出る」という意識があるせいか、何となく緊張感がある。
ナゾの傾き風呂でお客さんから情報収集、「角部屋以外は大丈夫」
そのまま外出し、近くのコンビニまで行ってみる。旅館はJR東松山駅から徒歩13分にあり、住宅が密集している土地柄。しかも20時過ぎながら、街はすっかり暗く、静まり返っている。上沼旅館も客はいるはずなのに、とても静かなのが印象的だった。
コンビニまでは徒歩5分。何やら陽気に話しながら歩いている若者二人組とすれ違った。ビールとおつまみを買って宿に戻り、風呂に入ることにした。
前回の「玉川温泉」でも入浴したけど、バイクに乗ることを考えて頭を洗わなかったし、せっかく大浴場があるんだから入らなければソンというワケだ。

↑大浴場風呂は半地下にあり、なぜかここだけ床がコンクリ。そして、天井に穴があるのかシートで塞がれている。自由に使える洗濯機もあり。風呂は16時30分~0時まで使用可能。
湯船に浸かる前に体を洗っているとメッチャ寒い。大急ぎで洗い、風呂に入ると何かおかしい。湯船の底が傾斜しているのだ。

↑傾いている湯船(笑)。なぜ!? ケツが滑るので落ち着かない……。
地盤沈下で沈んだのか? 元々、傾いていた?(いやまさか)。何にせよ奇妙だ。
すると、他のお客さんが入ってきた。どうやら先程コンビニですれ違った若者のようだ。そのツーブロックの筋肉質な男性が話しかけてきた。若者は長野から仕事で来て、もう3日泊っているという。「現場まで1分なんスよ」とのことなので、建設関連の仕事のようだ。自分の仕事を説明すると、少し驚いていた。
「ひどい旅館だと聞いてたんですが、すごく快適ですね」と若者。相部屋のつもりで来たら、1人部屋だったのでとてもくつろげているという。なるほど、確かにそうだろう。
宿は色々あるのになぜこの旅館が選ばれているのか訊ねたところ「4トントラックが停められるような広い駐車場の旅館はここぐらいしかないですから」とのこと。なるほど、上沼旅館は駅から近いにも関わらず、駐車場がとても広い。
肝心の質問もしてみた。
「ここは“出る”って評判らしいけど、実際何かありました?」
「いや、今のところ大丈夫です(笑)。今のところは。角部屋以外は大丈夫らしいですよ」
そうなのか! “角部屋以外は”がなかなかのパワーワードだ(笑)。私の部屋は角部屋ではないので、一安心である!? 若者は、早く帰りたいけど、あと1日、長ければあと2日宿泊するという。
「僕は1泊で引き上げます。くれぐれも気をつけてください」と軽口を叩いてお先に風呂を出た。
恐怖、夜のトイレへ……。そして朝メシ!
部屋でTVを見ながら、軽くビールを引っ掛けていると、夜も更けてきた。
私は、就寝後に尿意を感じて目が覚め、トイレへ行くのが習慣になっているが、なるべく行きたくないので、寝るギリギリまでトイレに行くのを粘った。
TVを消すと、とても静かだ。物音一つ聞こえない。部屋を暗くすると、疲れとアルコールのせいか、たちまち眠りに落ちる。結局、深夜に起きてしまい、尿意をガマンするが、耐えきれなくなった。
廊下に出て、緊張しながら共同トイレに向かう。やはり首の裏に視線を感じつつ用を足す。
部屋に戻り、二度寝すると、何事もなく(新潟の宿のような悪夢を見ることもなく)、朝になった。
しばらくゴロゴロして朝飯を食べに1階の食堂に向かった。

↑1階の食堂。他のお客さんは既に食事を終えており、テーブルには食後の食器が残っている。従業員もいない。

↑テーブルには名札があり、「沼尾様」と書いてあった。朝食はこんなカンジでちょっとサミシイ。焼きサバの小ささが際立つ。


↑ご飯と味噌汁は食べ放題。急須が各テーブルにあり、お茶も飲み放題。
コメは、埼玉県内の農家から直接、玄米のコシヒカリを仕入れて、上沼旅館で精米しているという。しかも、ご飯食べ放題というから嬉しい。期待して口に運ぶと、時間が経っているのか、水加減を間違えているのか、パサパサして美味くはない。素泊まりと朝食付きの価格差は890円。つまり朝飯代890円に対して、この内容は……なかなか哀しい。
生玉子をご飯にかけ、私は手持ちのカバンからあるモノを取り出した。

↑こんなこともあろうかと!? 第2回で買った醤油を用意していたのだ。
生玉子に使ってみると……ウマい。醤油の甘みと旨みが玉子とメシを別次元のウマさに引き上げ、極上の朝飯に早変わり! これは買ってよかった(笑)。
「心霊」の理由は、“上沼”恵美子が影響している……かも?
メシも食べたし、とっとと出発しよう。支度をして、例のトイレに立ち寄る。朝の光で満たされて、もう恐怖も薄れている。
フロントに行き、チェックアウトを済ませる。支配人に話を聞きたかったのだけど、アルバイトの方しかいない。ただ、スタッフの部屋からは、朝にも関わらずイキのいいロックが聞こえてくる(支配人の部屋なのだろうか)。わざわざ呼び出すのもどうかと思い、出発することにした。
到着した時は暗かったので、改めて宿の外観を見てみる。やっぱり構造が複雑だ。

↑駐車場側から見た旅館。中央の建物は古く、左右は比較的新しいようだ。問題の角部屋はどこなのだろう(笑)。

↑右側の建物の別アングル。寮みたいだ。

↑こちらは道に出て、グルッと回り込んだ所にあるフロント。パートさんを時給1141円~で募集。勤務時間は8時30分~13時30分。未経験者歓迎、年齢不問とのこと。

↑こちらは隣接する公園からフロント側の建物を見た図。自分が泊ったのはコッチぽいけど、どこなのかよくわからない。
結局、“出なかった”わけだけど、自分なりになぜ上沼旅館が“出る”と言われているのか、考えてみた。
ネットで調べた限り、上沼旅館のレビューや口コミはかなり多いが、心霊現象に遭ったと言っているのは恐らく2名ほど。私を含めて心霊現象に遭った人はほぼいないのだ。あとは歌手の“上沼”恵美子が東北の宿で心霊現象に遭ったという記事が出てくる。こうした情報が入り混じって、「上沼旅館 心霊」というサジェストがgoogleに出るようになったのではなかろうか?
霊感が実際にあるかはわからないが、人によってはこの旅館で感じるモノがあるのかもしれない。ただ、私も事前に情報を知らなければ、トイレで視線を感じることもなかったかもしれないし、(施設の問題はあるにせよ)もっと快適に泊れたのかもしれない。まさに「疑心暗鬼」というヤツだ。
とはいえ、貴重な経験を積んだことに変わりはない。しかし、と思う。もし「角部屋」に泊っていたら? 今後もう一泊する勇気も好奇心も私にはない。というワケで、この記事を読んだ方、ぜひ角部屋に泊ってみてほしい(笑)。
――などと考えつつ、次の目的地「吉見百穴」に向かった。ある意味、上沼旅館よりもっと恐ろしい事態が待ち受けていたのだが……それは次回!
