バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はエンジンのバルブシステムを表す“ユニカム”だ。

アフリカツインのユニカム

CRF1100L Africa Twinのエンジンは、ユニカムを採用している。カムシャフトが1本あり、その真下で直押しされているのが吸気側のバルブ。一方、ロッカーアームに押されて動くのは排気側のバルブだ。

そもそも『ユニカム』とは?

正確には“ユニカム・バルブ・トレイン”といい、ホンダが好んで使う動弁方式だ。これまでこのコーナーでDOHCといった動弁機構の種類や特徴を解説をしてきたけど、ユニカムは構造的にOHC、つまりシリンダーヘッドにカムシャフトが1本あるオーバ・ヘッド・カムシャフトの仲間だ。

ただ一般的なOHCとは違い、吸気側のバルブだけDOHCと同じようにカムシャフトによる直押し駆動としており、排気側のバルブはロッカーアームで動かしている。つまり、より早く正確に動く必要がある吸気側のバルブだけはDOHCと同じ仕様とすることで、一般的なOHCよりもさらなる高回転化&高出力化を可能としているのだ。

またユニカムの大きな利点として、カムシャフトが1本しかないことでDOHCに比べてエンジンのシリンダーヘッドを小さく、軽くできることも挙げられる。

CRF450Rのユニカムエンジン

ホンダのモトクロッサーであるCRF450Rもユニカムを採用しており、写真はCRF450Rのシリンダーヘッド断面図。画面右側の吸気用バルブをカムシャフトが直押ししており、左の排気バルブはロッカーアームを介して動かしているのがわかる。

 

『ユニカム』のなにがスゴイの!?

軽量コンパクトで高効率

…ってことだ。OHCよりもフリクションロスが少なかったり、高回転化が可能でハイパワーという特性も…もちろんあるのだが、1番のメリットはDOHCよりもエンジンを軽量かつコンパクト化できることにある。カムシャフトが1本であればそれだけエンジンは軽くなり、しかもシリンダーヘッドが小さくできれば、それだけエンジンの高さが抑えられてコンパクトな車体にも積みやすくなる。つまり、エンジンはハイパワーである必要があるが、大きく重たいエンジンは積みたくないような場合に採用されるエンジン形式というわけだ。

また、ユニカムを採用することでカムシャフトをバルブの間にレイアウトする必要がなくなるのも大きな利点となる。一般的なOHCよりもバルブの取り付け角度をより狭く設定できるため燃焼室(スキッシュエリア)形状の自由度が高く、高圧縮比化はもちろん、充填効率を考慮した設計ができるのも大きな利点と言える。

OHCエンジン

こちらは一般的なOHCのバルブまわりのイラスト。カムシャフトが真ん中にあり、両側にある吸気と排気バルブにロッカーアームが伸びている。カムシャフトとロッカーアームが真ん中にあるためバルブの取り付け角度を大きくとる必要がある。燃焼室形状に制限が生まれてしまい、高圧縮比が難しいのだ。

オフロードバイク系に『ユニカム』が多い

「OHCよりもハイパワー」、「DOHCよりもコンパクト」、以上のような特性から、ホンダではオフロード系のモデルにこのユニカムを積極採用しており、競技用のモトクロッサーなど、高圧縮比設定のハイパワーなバイクにもこのユニカム機構が組み込まれている。

CRF450Rのエンジン

CRF450Rのエンジンを真横から見るとシリンダーヘッドがかなりコンパクトであることがわかる。競技用モデルであり、もちろんパワーは欲しいはずだが、頭の大きなDOHCではなくOHCのユニカムとすることで、シリンダーヘッドを小型化して軽量化しているのだ。

 

 

WR250Rのエンジン

DOHCを採用するヤマハのWR250Rのエンジンのカットモデル。カムシャフトが2本あるDOHCは、とにかくシリンダーヘッドが大きく頭でっかちになってしまうのがわかる。軽さや重心バランスが重要視されるオフロードでは、DOHCによる高回転化よりも、軽量コンパクト化の方が優先されることもある。

 

 

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