バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は、スポーティなバイクの車体によく採用されるサスペンションの『倒立フォーク』だ。

そもそも『倒立フォーク』とは?

正式には、倒立式・テレスコピック・フロントフォーク・サスペンション。倒立…つまり“逆さまに立つ(さかだち)”というからには“正立”もある。つまり『倒立フォーク』とは、従来の正立フォークの構造に対し、取り付け方が逆さまになっているから『倒立フォーク』と呼ばれるわけだ。

KTMの390デューク

テレスコピックタイプのフロントフォークは、外筒(アウターチューブ)に収まった内筒(インナーチューブ)が出たり入ったりすることで伸び縮みするようになっている。写真はKTMの390デュークのフロントフォークのカットモデル。

 

ここでバイクのフロントフォークを見てみよう。まずは正立フォーク。タイヤと車体を繋ぐフロントフォークに注目すると、棒が筒の中に入っているのがわかる。昔の折りたたみ式望遠鏡のような構造だが、それもそのはず。テレスコピックとは、その名前の由来は望遠鏡の“テレスコープ”からきており、この重なり合った外筒から内筒が伸び縮みする構造そのものを表した名称なのだ。

 

ホンダのGB350

正立フォークは、インナーチューブ(内筒)が上で、アウターチューブ(外筒)が下にある。写真はホンダのGB350。

 

では次に『倒立フォーク』を見てみよう。テレスコピック構造なのは一緒なのだが、外筒と内筒の取り付け方が逆になっているのがわかるだろう。…そう、この外筒と内筒の取り付け向きが、正立フォークに対して逆さまのレイアウトで取り付けられているから『倒立フォーク』というわけ。『倒立フォーク』とは取り付けの構造を表す言葉だったのだ。

ホンダのCBR250RR

倒立フォークは、アウターチューブ(外筒)が上で、インナーチューブ(内筒)が下にある。写真はホンダのCBR250RRのストリップモデル。

 

『倒立フォーク』のここがスゴイ!

太い方が根元にあるとより頑丈になる

非常に単純な話である。何かを挟んで固定しようと思った時に、太い方と細い方があるのであれば、太い方をクランプしたほうがより頑丈に固定できる。また固定した物体そのものもゆがみやたわみが起きにくくなる。

より太いアウターチューブをブラケットでクランプした方が剛性アップ。

 

フロントフォークで言えば、テレスコピックという内筒(インナーチューブ)が外筒(アウターチューブ)の中に収まる構造である以上、アウターチューブの方が太いのはあたり前。だったらアウターチューブ側をトップブリッジとアンダーブラケットでクランプした方がフロントフォークは頑丈に作れるよね、という至極簡単な話なのだ。

考えてもみよう。何百㎏もあるバイクが止まろうとしてフロントブレーキをかけたとき、その負担はどこにかかるだろうか? この力がフロントフォークを大きくたわませるのだ。

ではブレーキなどで大きな力がかかってフロントフォークがたわんでしまうとどうなるか? テレスコピック構造の動きが悪くなるのはもちろんだけど、走行中に剛性不足でたわんでしまうような貧弱な足回りでは、ライダーは不安でそれ以上の強いブレーキはかけられなくなってしまう。またコーナリング中に応力を受けてたわんでしまったら狙ったラインを走ることだってできない。

レースシーンではバイクが進化、つまりエンジンが高性能化してより高い速度が出せて、より強力なブレーキ力や高いグリップ力のタイヤが開発されれば、当然車体も剛性アップする必要がある。バイクが速く進化するほど、より頑丈(高剛性)なフロントフォークが必要になり、剛性アップするために採用されたのが、根本の方が太い『倒立フォーク』だったというワケだ。

倒立フォーク搭載車の方が設定速度レンジが高い

とくにフロントフォークの全長が長いオフロードバイクなどは、フロントフォークがしなりやすく、この正立フォークと『倒立フォーク』の違いがものすごくはっきりと走りに現れる。ヤマハで言えば、セロー250が正立フォークなのに対し、WR250Rが『倒立フォーク』を採用。WR250Rは言わずと知れた、トレールモデル最強のオフロード性能を追求したのに対し、セロー250は初心者にも乗りやすいキャラクターを追求している。特に違いを感じるのはコーナリングで車体のしなやかさ。セローは極低速でも路面にしっかり踏ん張るようなフィーリングなのに対し、WR250Rは、サスペンションのセッティングも含め、それなりのスピードを出したときにしっかり踏ん張るような硬めの車体セッティングになっている。そもそもの設定速度のレンジが違うイメージだ。

左のWR250Rと右のセロー250では、明らかに右のWR250Rのフロントフォークの方が骨太で頑丈そうに見える。

 

倒立フォークのデメリットは「ハンドル切れ角の減少」と「重量増」

ただこの『倒立フォーク』にはデメリットもある。まず物理的にハンドル切れ角が正立フォークに比べてどうしても少なくなりやすい。また、より車体の剛性がアップするため、車体の速度レンジが上がり、低速走行や街乗りレベルの走行では車体が硬質に感じてちょっと扱いにくくなる。さらに太いアウターチューブの方が長くなれば当然それだけ重くなってしまう。

このため『倒立フォーク』を搭載するバイクは、よりスポーティなキャラクターに振ったハイパワーなバイクに限られる。…だから正立フォークと『倒立フォーク』のバイクがあった場合、『倒立フォーク』を採用するバイクの方がよりスポーティで高性能という図式が成り立つ。『倒立フォーク』を装備しているバイクはより高性能でスゴイ!というわけだ。

 

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