バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はエンジンの吸気系のお話、過給システムの“ラムエア”、“ターボ”、“スーパーチャージャー”の違いを見ていこう。

そもそも『過給システム』とは?

前回のダウンドラフト吸気の延長上にあるのが、今回紹介する過給システムだ。ダウンドラフトの記事でも説明したけど、パワーの出る良いエンジンをつくるには、シリンダーにいかに効率よく混合気を詰め込むかが重要になる。同じ排気量でも充填効率が悪く、きちんと混合気を吸えないエンジンはそれだけ燃やす燃料が少なくなるからだ。そんな充填効率が悪い状況ではパワーも低くなるし、混合気の供給状況があまりに悪いとフケ上がりが遅くなったり、高回転まできっちり回らなくなったりする。

ダウンドラフトはエンジン本来の性能をきっちり引き出すために、混合気の通路を垂直にして充填効率をアップさせようというものだった。今回の過給システムはそこからさらに踏み込んで、“意図的にシリンダー内部に排気量以上の混合気を無理やり詰め込んでやろう!”というものだ。混合気を詰め込む仕組みは違えども、エンジンに排気量以上の仕事をさせようという考え方は、“ラムエア”、“ターボ”、“スーパーチャージャー”も同じってわけである。

漏斗のように走行風を集めろ!『ラムエア』

Ninja ZX-6R

カワサキのNinja ZX-6R(03モデル)のストリップモデル。フロントカウルへ伸びるラムエアダクトが見える。

 

風を切って走るバイク、だったらその走行風による風圧を充填効率アップに使えないか?…と生まれたのがこのラムエアシステムだ。通常、エアクリーナーボックスの吸入口は、雨水やホコリの影響を受けにくいシート下やタンク裏などにあるものだが、ラムエアシステムを搭載したバイクはバイクの前方にエアスクープ(吸入口)を取り付けて、走行風をしっかり受けられるようになっている。

Ninja ZX-6R

ラムエアシステムを搭載するバイクには前面に吸入口が設けられ、スピードが上がるほどにエアクリーナーボックス内部の圧力が増す。一説によると200km/h以上の速度域で3〜5%ほどのパワーアップが見込めるという。

 

ラムエアの効果は、速度を出せば出すほど高まる。…らしいのだが実際にラムエアシステム搭載のバイクで走ってみた印象を書くと、“効いているんだろうけど効果は体感的にわからない”というのが正直なところだ(笑)。少なくともどのラムエアシステム搭載機に乗っても、“キタキタッ、これがラムエアシステムの加速かぁ!!”なんて過渡特性の変化を高速道路走行レベルで実感することはなかった。

 

ZZR1100D

カワサキ・ZZR1100のラムエアダクト。前方から走行風を取り入れ、エアクリーナーボックスにダイレクトに送っている。当然、雨水や虫なども吸い込むが、途中の凹型のポケットでうまく分離するようになっている。

 

排気ガスの勢いで空気を圧縮!『ターボ』

HONDA CX500TURBO(1981年輸出仕様)

1981 CX500TURBO

ターボは80年代に見られた機構であるが、2022年現在4メーカーのモデルでターボを採用しているモデルはない。写真は4メーカーによるターボ合戦が繰り広げられた80年代に登場した輸出モデルのホンダ・CX500ターボ。

 

自然吸気に頼るラムエアとは違い、“機械的に空気を圧縮”してより密度の高い混合気をシリンダーに送り込もうというのが、ターボやスーパーチャージャーといった過給システムの特徴だ。

ターボは、エンジンから出る排気ガスの圧力でタービンを回し、同軸上にあるコンプレッサーでエアクリーナーボックスに送る空気を圧縮している。自然吸気に頼るラムエアよりも遥かに混合気の圧力が高められるため、その加圧効果も非常に大きい。

また“排気ガスの勢いを使って圧力を高める”というプロセスのため、エンジンの回転数が高まるほどにコンプレッサーが発生させる圧力もアップしていく。このためエンジンの過渡特性が2次曲線的な、尻上がり加速になるのが特徴だ。

 

SUZUKI Recursion(2013年 発表)

SUZUKI_Recursion

2013年のモーターショーでスズキはターボシステムを搭載したリカージョンを参考出品。80年代の“モアパワー”のためのターボというより、現代の四輪車と同じように排気量が小さいエンジンのパワーを補うような意味でターボシステムを採用。参考出品レベルではあるが、久々にターボシステムがバイクに復活した。

 

ターボは四輪車などではすでに常用されているシステムだが、車体の軽さが求められたり、エンジンレイアウトに制約のあるバイクでは採用しにくいと言われている。事実2022年現在、国内4メーカーはどこもこのターボを採用していない。排気ガスの圧力でタービンを回し、その反対側のコンプレッサーで加圧を行うという構造上、エキゾーストパイプとエアインテークのラインを並べなければならず、量産モデルとしてはエンジンレイアウトが難しいようだ。

SUZUKI_Recursion

2013年のモーターショーに登場したスズキ・リカージョンのターボシステム。画面手前側がエキゾーストパイプのタービンで奥がエアクリーナーボックスへ続くコンプレッサーになっている。エンジン前にこれだけ大きなパーツスペースが必要で、エキゾーストパイプやエアインテークのラインが複雑化する。

 

エンジン動力で強烈加圧! 『スーパーチャージャー』

2015 Ninja H2

カワサキのニンジャH2(2015年モデル)のエンジンのカットモデル。赤く塗られたパーツがスーパーチャージャーのコアシステムであるコンプレッサー。エアクリーナーボックスはスーパーチャージャーの圧力に耐えられるようアルミで頑丈に作られている。

 

エアクリーナーボックスに取り込む空気をコンプレッサーで加圧するという考え方は一緒だが、排気ガスの圧力を利用するターボとは違い、スーパーチャージャーはカムシャフトなどと同様にエンジンの動力を使ってコンプレッサーを回している。

このためタービンとコンプレッサーが同軸上にあるターボとは違い、コンプレッサーのレイアウトにある程度自由度があるのが特徴。またタービンの回転数がそのままコンプレッサーの回転数になるターボとは違い、スーパーチャージャーはコンプレッサーの回転数をギア比で設定可能で、エンジン過渡特性のキャラクターをコントロールすることが可能。

2015 Ninja H2

コンプレッサーの内部にあるインペラは、5軸CNCマシニングで鍛造アルミブロックから削り出され、複雑な形状の12枚のブレードを持つ。作動時には独特の甲高い金属音を発する。写真はカワサキのニンジャH2(2015年モデル)。

 

2022年現在、このスーパーチャージャーシステムを搭載するのはカワサキのH2シリーズのみであるが、その乗り味は非常に独特で興味深い。筆者は2015年登場の初期型ニンジャH2、2020年に登場したネイキッドタイプのZ H2、2022モデルの最新型ニンジャH2SX SEの試乗経験があるが、面白いのは年式やタイプによってスーパーチャージャーのかかり方に違いがあるということ。同じ排気量のスーパーチャージドエンジンなのに、エンジンが吹け上がる際の過渡特性が様々で、これぞスーパーチャージャーというようなピーキーで扱いにくいキャラクターもあれば、ツアラー向きの穏やかな出力特性もある。

 

2015 Ninja H2

2015 Ninja H2

2015年に登場した始まりのスーパーチャージャー・ニンジャH2。試乗経験から言わせてもらえば歴代H2シリーズのなかで一番過激な出力特性だったのがこの初期型のニンジャH2。トラスフレームを採用したしなやかな車体は一般公道レベルの速度域でも非常に扱いやすかったのだが、スロットルをちょっと大きく開けるとすぐさまスーパーチャージャーが作動して二次曲線的な加速がスタート! 街乗りレベルでもスロットルワーク次第でいつでもスーパーチャージャーを感じられたが、そのぶんピーキーで扱いにくく、常にバイクと真剣勝負している感じ。加速フィーリングは2ストエンジンがパワーバンドに入った時の激烈加速に近いものがあった。

 

2020 Z H2

2020 Z H2

ネイキッド版であり、Zシリーズのフラッグシップモデルとして2020年に登場。15年のニンジャH2に比べれば随分扱いやすいエンジン特性となり、スロットルも開けやすくなっている。あまりの強烈加速におっかなびっくりスロットルを開ける必要があった初代に比べると、細かい切り返しの続くワインディングでもスーパーチャージャーによる加速が体感できるくらいには手懐けられていた。2015年時より、トラクションコントロールや電子制御スロットルといったエンジンマネジメントの技術もアップしているのだろう、あまりの強烈加速におっかなびっくりスロットルを開ける必要があった初代に比べると随分乗りやすくなった。ただ「キーン」というスーパーチャージャーの加速音に酔いしれていると、ものすごい勢いで次のコーナーがやってくる。

 

2022 Ninja H2SX SE

2022 Ninja H2SX SE

最新型であるツーリングモデルのニンジャH2SXのスーパーチャージャーエンジンは、ネイキッド版のZ H2に比べてもかなり扱いやすくなっていた。街乗りで転がしている分には、スーパーチャージャーがついていることを忘れるくらい自然に乗ることができる。…が、積極的にスロットルを開け始めるとがっつりスーパーチャージャーが効き、ものすごい勢いで速度が上がっていく。ただ乗り手が焦るほどではないのがちょうどいい。快適性というツアラーとしてのキャラクターをきちんと確保したうえで、スーパーチャージャーが単なる“ビックリドッキリメカ”でなく、非常に実用的な技術として組み込まれている。

 

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