バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は世界的に装着義務が進み、色々なバイクに採用されているブレーキ系の電子制御技術『ABS』だ。

そもそも『ABS』とは?

クロスカブ110

ホンダのクロスカブ110。2022のモデルチェンジで、フロントブレーキがディスクブレーキ化&キャストホイール化されたが、このモデルチェンジもABS装着義務化の流れに合わせての改変だ。

 

ABSは、Antilock Brake System(アンチロック・ブレーキ・システム)の略で、読み方はそのままエー・ビー・エス。その効能は、ブレーキのかけすぎによるスリップ転倒や、ブレーキロックによる制動距離の延長による事故誘発の防止にある。つまり、ABSが付いていれば防ぐことができる事故が多いことから、全世界的に装着の義務化が進んでいる。日本では2018年の10月以降に登場するニューモデル、また継続生産モデルでも2021年の10月以降に生産されるモデルについて、全ての125cc以上モデルにABSが装着されることになった。

ちなみに125cc以下のモデルも、ABSもしくはCBS(コンバインド・ブレーキ・システム)のどちらかの装着が義務化されている。

1チャンネルタイプのABS

125ccクラスのモデルにはフロントブレーキにしかABSを持たないモデルもあり、通常の前後輪タイプのABSと区別する意味で“1チャンネルタイプ”と呼ばれる。冒頭で紹介したクロスカブ110もこの1チャンネルタイプのABSだ。

 

『ABS』のここがスゴイ!

ブレーキのかけすぎによるタイヤのロックを回避!

システムのコアとなるABSユニットは、ブレーキレバーやブレーキペダルなどの入力装置と、出力装置である前輪と後輪のブレーキシステムの中間にあり、油圧の伝達をコントロールしている。

 

多くの人が免許取得時に習ったであろう急制動。ある程度スピードを出したところから急ブレーキをかけて停止するという教習項目だけど、あんまり得意って人いないんじゃないかな? でもちょっと考えてみて欲しいのは、“なんで苦手なのか?”ってことだ。


当たり前のことだけど、急にブレーキをかけたことでタイヤがスリップしたら転んでしまうからだ。まぁ、多くの人はバイクに乗る前から自転車などで似たような状況を体験しているから、直感的に急ブレーキの危うさを理解しているというわけだ。

事実、ブレーキングは非常に難しいテクニックである。大前提として、その最大効力を得るには、タイヤをしっかり路面に押し付ける必要があり、そしてブレーキの効力はロック寸前が一番大きくなる。

つまり、しっかりブレーキをかけるには、メリハリのないブレーキ操作では十分な効力が得られず、しかも逆にかけ過ぎもご法度。スリップを起こす直前でブレーキを解除したり、緩めてロックを防ぐ必要がある。

教習所で、ポンピングブレーキというブレーキテクニックを学んだと思うけど、このポンピングブレーキは、これらブレーキの特性を生かすためのブレーキテクニックだ。

…なんて小難しいうんちくを並べてみたが、そんなテクニックなどを持っていなくても、黙って握れば、車輪ロックを起こさず“そこそこ”のブレーキ効力が得られるというのがABSのすごいところだ。

ABSのシステム概念

ABSのシステム概念図。ABSユニットは、前後の車輪速センサーからの情報で前後輪のロックを監視。またABSユニットには油圧ポンプも内蔵されており、常に増圧したブレーキフィールドを蓄えてブレーキロックに備えている。①ブレーキのかけ過ぎによるロックを検知すると、②ABSユニットの内部でブレーキキャリパーにかかる油圧をソレノイドバルブでカットすることでブレーキが緩まる。③ロックが回避されたところで再びブレーキキャリパーが作動するように油圧をかける…という①〜③工程を減速状態に合わせて繰り返す。

 

その仕組みは、前輪と後輪に取り付けられた車輪速センサーが、前輪、後輪の回る速度の違い…、つまりどちらかの車輪のロックを検出すると、自動的にブレーキキャリパーにかかる油圧の減圧と増圧を交互に繰り返して、効果的に制動するというワケである。

ただ、このABS。最大限のブレーキ効力を引き出せるかというとそうではない。路面のグリップ具合など、状況に応じてブレーキ入力を変えられる人間の感覚というものはすごいもの。以前、雑誌の企画で、プロライダーとABSガン握りでどちらの方が短く止まれるかの比較テストしてみたが、圧倒的にプロライダーの方が制動距離は短く、ABSの方はセンシングのタイミングで制動距離にメートル単位でバラつきが出るくらいだった。

こんなことを書くと、ABSいらないじゃん!? と思うかもしれないがベテランにとってもこのABSは有用だ。というのもバイクは落ち着いて意図的にコントロールできている間は、そうそうタイヤをロックさせることはない。


ただ事故の要因とは降って湧くものである。路上で歩行者の飛び出しや急な右折車両に出会ったときに“タイヤを路面に押し付けて…”なんて感じの繊細なブレーキコントロールが可能だろうか? 多くのライダーは咄嗟にブレーキを握り込むことしかできないハズだ。そんな時こそ有用なのがABSというワケだ。

ABSユニット

ボッシュ製の2輪用ABSユニット。中央の丸いパーツが油圧をかけるポンプ駆動モーターで、本体部分の4つ穴が前後のブレーキキャリパーへとパイプで繋がっており油圧の伝達およびカットを行う。背面の黒いプラスチックパーツの内部にABSコントロールユニットが収まっている。

 

ABS 10 base

近年、ABSユニットは小型化が進んでいる。2000年には2.6kgもあったユニットが、現在では640gほどになっており、125ccクラスの小型二輪用ABSはさらに小型化。写真はボッシュ製の小型二輪用ABSの「ABS 10 base」で重さは450g。小型スクーター用でより油圧チャンバーを小さく設計されている。フロント1チャネルタイプで油圧伝達のための穴が2つしかないモデル(ABS 10 light)もある。

 

 

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