YZF-R1を頂点とする、フルカウルのスポーツモデル“YZF-R”シリーズは、YZF-R7、YZF-R3/25と各排気量で多彩なラインナップ展開を行っているが、2023年は新たに原付二種クラスのYZF-R125と軽二輪クラスのYZF-R15が新たに登場。さらにラインナップの裾野を広げた。ちなみに読み方は、YZF-R125がワイゼットエフ・アール・ワンツーファイブで、YZF-R15がワイゼットエフ・アール・ワンファイブとなる。今回は125ccクラスのYZF-R125をピックアップ。ヤマハ発動機販売が行った一気乗り試乗会に参加してきた模様をお届けしよう。
兄貴分に負けない迫力あるスタイル
さてYZF-R125、最大のポイントは“YZF-R”シリーズらしいスーパースポーツ的なスポーティなデザインが与えられていることだ。すごいのは、末弟の125ccクラスでありながら“弟分”なデザインの甘さがないのがすごいと思う。この手の125ccモデルだと、どうしてもコストカットを迫られて走行性能に関係ない外見はもちろん、スイングアームが角パイプだったり、トップブリッジがいかにも重そうだったり……。“まぁ、この値段だからね”なんてところが垣間見えるものだが、ヤマハは違う!
リヤのスイングアームはアルミだし、トップブリッジにはしっかり肉抜きが施されるなど、“YZF-R”シリーズを名乗るのに恥ずかしくない装備がおごられている。その分、お値段は125ccクラスのギヤ付きモデルと比べるとちょっと価格が高めに感じるかもしれないが、オーナーになった暁にはこの辺りの装備が十分所有欲を満たしてくれることだろう。
YZF-R125/主要諸元■全長2030全幅725 全高1135 軸距1325 シート高815(各㎜) 車重141㎏(装備)■水冷4ストSOHC単気筒 124cc 15ps/10000rpm 1.2kgf-m/8000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量11ℓ ブレーキF=ディスク R=ディスク タイヤサイズF=100/80-17 R=140/70-17■メーカー希望小売り価格:51万7000円
YZF-R125のポジションは前傾強め
シート高は815mm。跨り部がしっかり絞られているおかげで足が真下に出しやすく、両足を付こうとすると踵までほぼべったりと足が付く。同排気量帯のXSR125、MT-125よりも5mmほどシートが高いのだが、実際に跨ってみるとYZF-R125の方が足着き性がいいという逆転現象が起きている。上半身のポジションはYZF-Rシリーズらしく前傾がきつめで、しっかり、前輪荷重をかけてスポーツライディングできるようになっている。
YZF-R125はサーキットデビューにぴったりのキャラクター
“YZF-R”シリーズとはいえ125ccモデルでサーキット走行はちょっとやりすぎなんじゃないの? YZF-R125に乗る前はそんなことを考えていた。どのモデルがということではなく、一般的にナンバー付きの公道モデル125ccバイクでサーキット走行をするとなんだか不完全燃焼に陥るものだ。
125ccクラスなので当然有り余るパワーがあるわけはなく、コーナーの出口でスロットルを開けてもそれほど力強く加速しなかったり、ブレーキやサスペンションも安っぽいというかなんというか……、ちょっと不安でガッツリブレーキを握り込めなかったり、そもそもそこまでブレーキが効かなかったりもする。公道走行ではまったく性能的に気にならなくても、加減速の激しいサーキット走行では大きな負担がかかって、いろいろと不足する部分が垣間見えるものなのだ。
今回紹介するYZF-R125は特にポジションが伏せ気味でしっかりフロント荷重が稼げるモデルだけに、きちっと走ると余計に不満が結構出るんだろうな? なんて思いながらコースイン。場所は千葉の茂原ツインサーキットの西コース。このサーキットは全長700mほど、100mちょっとのホームストレートにタイトな低速コーナーを組み合わせたテクニカルなコースになっている。
ところがこのYZF-R125、サーキット走行が妙に面白いのである。まず低速コーナーからの立ち上がりがいい。YZF-R125のエンジンには可変バルブ機構……、カムシャフトの吸気バルブ駆動のプロフィールが回転数で切り替わるVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーター)が搭載されている。このVVAは低回転用と高回転用のカムプロフィールを使い分けることで、全域で淀みなく回る性能を求めた機構で、YZF-R125の場合は7000~7400回転あたりでカムプロフィールが切り替わっているそうだが、「スロットルを開けているのに回転が追いついてこない……」なんてことがなく、スロットルを開ければしっかり加速する。その一方でホームストレートでは高回転域まできっちり回ってくれるから、走っているととにかく気持ちいい。
車体に関しても、高い不可のかかるサーキット走行をしても不安なところがないのが好印象。もちろん、レースに出たり、タイムを縮めるなんてことを考え出したらいろいろやることは出てくると思うが、“サーキット走行を楽しむ”ぐらいなら、吊るしの状態で結構楽しめてしまうのだ。しかも、低速が力強いとはいえ基本は125ccクラス。侵入速度を間違えたり、ラインどりを失敗すれば、しっかり失速という形で結果が走りに現れる。小排気量で誤魔化しが効かないから失速すれば当然速度回復に時間がかかるというわけだが、そんな失敗がタイム計測をするまでもなくバイクの挙動で直感的に理解できる。
そんな失敗をしないように走っているだけで十分楽しく、コースに慣れてくると、「このコーナーは何速でどのくらいの速度でどのラインから進入すると次コーナーに向けての加速がしやすい」なんてことが自然と身につけられるのだ。そして、これこそがサーキット走行の本質であり醍醐味であるわけだが、そんなサーキット走行のエッセンス“上達している感じ”がしっかり味わえるのがこのYZF-R125なのだ。今回の試乗はツーリングウエアで行ってしまったのだが、レーシングウエアを用意すればと後悔しきり。それくらいYZF-R125はサーキット走行が楽しぞ!
YZF-R125のディティール
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