元初心者向けのバイク雑誌“タンデムスタイル”の編集長だった経験からアドバイスさせていただこう。実際、編集部員時代には「最近バイクの免許を取ろうと思うのですが、生まれて初めて乗るバイクがビッグバイクでも大丈夫なのでしょうか!?」という質問を読者アンケートでよく見かけたものだが、これに関しては…

ハイ、全く問題ありません!

一発試験だろうが、教習所だろうが大型二輪免許が取れたのなら、自分が乗りたい好きなバイクを選べばいい。いくらビッグバイクが、ミドルクラスに比べてハイパワーだったり、重かったりするとしても、所詮は企業が一般消費者に向けて作った民生品。特殊な戦車やロケットを操縦するワケじゃない。あくまで市販車は“二輪免許を持っている人が誰でも運転できるよう”にメーカーが作った一般人向けの商品である。いくらインターネットやバイク雑誌などの媒体が、“このバイクはすごい加速だ! この強大なパワーを君は扱えるか!?”なんて調子で煽っていたりしても、それにはあくまで“常人が扱える範囲”でという但書がつく。ちょっとアクセルを開けただけで吹っ飛ぶようなバイクがあれば、それは間違いなく欠陥商品である。2021年現在の主要メーカーのラインナップにそんな欠陥商品はないから安心してどれでも選んで欲しい。

“乗る”のと“楽しむ”のは大違い

ここまでの話はあくまで“乗る”ことを前提としたお話。“乗るだけだったら誰でもできる!”それは断言させていただこう。ただ、そこから“運転を楽しむ”となると話が変わってくる。というのもバイクの楽しさの多くは、アクセルを開ける瞬間にやってくる。直線で加速する、スパッとコーナリングをキメて加速する、こんな瞬間が実に刺激的で気持ちいいのである。うまくなれば、ズバッとジャンプしたり、ズリズリっとテールスライドなんてこともできるが、どれもみんなアクセルを開けているときのことだ。

さて、いきなり初心者がビッグバイクに乗るとどうなるか? 多くは溢れ出すパワーが怖くてアクセルがなかなか開けられないという事象に陥る。もちろん高速道路のような見通しのいい直線部分なら、誰だってアクセルを開けられるだろう。しかし、交差点やタイトなワインディングなど、テクニカルな場面ではそうはいかなくなってくる。大きなパワー、重たい車体を扱うには、まずしっかりとしたブレーキング技術が必要。“止まれることが分かっている”、“マシンをコントロールする自信がある”からこそアクセルが開けられる。

もし、そんな止まれる自信がないままにハイパワーなバイクを選んでしまったら? 当たり前だけどおっかなびっくり。オドオドした走りしかできなくなる。アクセルの開け方もなんだか弱々しく、ダラダラ~っと加速して、やんわりブレーキング。そんなメリハリのない運転は、低速域で必ずフラつくものである。しかも残念なことに、はたから見ると、このメリハリのないオドオド運転は、“扱えてない感”となって思い切り露見してしまう。バイク乗りにはもちろんのこと、バイクに乗らない人にも、“あいつ大丈夫か? あまり近づかないようにしよう…”ってな感じで乗り手のオドオド感がハッキリと伝わるものなのだ。まぁ、そのまま背伸びして頑張っていれば、慣れで克服できる場合もある。また、“これじゃダメだ!”と一念発起してスクールに通うことで技術を磨くなんて道もあるが、多くのライダーは、オドオドしっぱなしのまま長年乗り続けることになる。

小排気量車はアクセルが開けやすい

一方のデビュー時に排気量が小さなバイクを選んだとしよう。確かにビックバイクに比べると当然パワーがない。同じ100km/hまで加速するにしても、ビックバイクなら数秒で到達できるのに対し、250ccだと10秒近く必要だったりする。…ってことはだよ? 先程、バイクの楽しさの多くは“アクセルを開ける瞬間”にあるなんて話をしたけど、小排気量なら単純にアクセルを開けている時間が長くなるというワケなのだ。いきなりドカンとパワーが出るわけでもないので、交差点やUターンなどでも当然アクセルが開けやすく、アクセルを開ける、バイク本来の楽しさを感じやすいってワケだ。

しかも扱いやすいからこそ、きちんと減速してアクセルを開ける時はしっかり開けて加速する。そんなファンライディングの基本中の基本が小排気量モデルだと自ずと身に付く。当然、慣れてきたり、ライディングテクニックが身に付いてくると、今のマシンにパワー不足を感じたり、ブレーキング時に車体が心許なく感じるなどなど、不満が出てくるようになる。それがいわゆるステップアップのタイミングなのだ。セオリーで話すなら、250ccでバイクライフをスタートしたなら、次は400ccか650cc。そしてその次の段階でいよいよリッターマシンやリッターオーバークラスへとステップアップすることになる。ただ最近のバイクは非常に乗りやすくなっている。免許取り立てだとしても、ちょっと運動神経やマルチタスク能力に自信がある人なら、650ccくらいのモデルであればすぐに扱えるようになるだろう。

筆者が選ぶ、バイクデビューにおすすめしないビッグバイク

その1

YAMAHA MT-09(初期型)

ピックアップのいい3気筒エンジンはとにかく元気で暴力的ともいえる加速が強烈だった。ただし、モデルチェンジを重ねるごとに、トラクションコントロールがついたり、加速フィーリングが穏やかになったり。現行モデルはずいぶん角が取れて、初期型とは別物の乗りやすいバイクになっている。また形こそネイキッドだが、モタード的なキャラクターも入っており、ピッチングモーションの大きい車体も一般的なロードスポーツとは異なる。

その2

KAWASAKI NinjaH2(初期型)

シリンダー内に圧縮した混合気を送り込み、さらにピストンで圧縮するスーパーチャージャーを搭載! トラスフレームを採用した車体は実にしなやかで意外なほど乗りやすい印象を受けた。しかし、アクセルのワイドオープンすると“キュィイイン”と独特の金属音をたてて過給機が作動。視界が狭まるほどの加速“感”が味わえる。あえて“感”と書いたのは、実際にはそれほど速くないから(笑)。加速の過渡特性が尻上がりの2次曲線的で、なんだか気持ちが焦るので“速い”と感じるのだが、メーターを見るとそれほど速度は出ていない。しかし、脳が置いていかれるようなこの加速は、初心者時代に乗れば軽いパニックに陥っていただろう。その後に登場したSXは、ツーリングにも使えるような十二分に穏やかなエンジン特性になっている。

その3

BossHoss  502シリーズ(写真は5200ccエンジンのもの)

メーカーというよりカスタムビルダーが作ったマシンだが、以前発売されていた502シリーズには8200ccのシボレーのエンジン。つまりは車のエンジンが搭載されており世界最大排気量を誇った。一方の車体も重量は約0.5トンとにかく重く、車格もデカイ。コーナリングではきちんとバイクもバンクするのだが、ぶっといリヤタイヤも相まって鉄の塊に跨っているような乗り味だった。しかも、車両をお借りした場所の出口がいきなりジャリの下り坂で焦った焦った(笑)。とにかく車幅がハンドルもタンクも大きく、バンク角もほぼない。調子にのってサイドスタンドのスプリングを削ってとばしてしまった記憶がある。この後にトライアンフのロケットⅢ(市販車最大排気量モデル)にも乗ったが、“これはフツーのバイクだね。乗りやすいなぁ”としみじみ思ったくらい。“やっぱりメーカーが作ったバイクって誰もが普通に乗れるように作られているよね”と思った。

 

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