前回、バイクに乗るならまずは“普通自動二輪免許”取ろう! というお話をさせてもらった。今回は、その普通自動二輪免許を“どこで取得するか?”についてを、もと初心者向けのバイク雑誌『タンデムスタイル』の編集長だった経験からちょっとだけアドバイスさせていただこう。

バイクデビューに失敗しないための教習所の選び方

そもそもの話をすると、運転免許とは国家資格。政府から“あなたは車両(バイク)を運転するだけの体力や判断能力(適正)があり、加えて公道走行に必要な技術と知識を持っているので運転する資格を与えます”というものだ。というワケでバイクに乗りたいなら、国に“私はバイクを運転する資格がある”ことを認めさせなければならない。

その方法は二つ。一つはいわゆる“一発試験”と呼ばれ、各市町村の運転免許センターに出向き、学科試験、技能試験を受けてこれに合格することだ。ちなみに運転免許センターは試験場であり、教習所ではない。バイクの運転方法などは教えてくれないので独学で運転技術を身につけ、法規などは教本や練習問題を手に入れるところから挑む必要がある。このため、あまり効率的ではなく、よほどヒマかそれなりの熱意や特別な理由があるなら別だが、“免許取得”それ自体をレクリエーションとして楽しめるだけの余裕がある場合にこの方法を選びたい。“一発試験の方が安上がりって聞いたから…”なんていう安易な理由で手を出すと、逆に苦労することになる。

免許センターにある二輪試験棟

一発試験は、免許センターに直接出向いて受験。昔、大型自動二輪免許(当時の限定解除)は教習所では取得できず、一発試験を受ける必要があった。1996年から教習所で大型自動二輪が取得できるようになったこともあり、練習の場である非公認の教習所は減りつつある。

 

一般的なのは公認教習所

一刻も早くバイクでツーリングに出たいなら一般的な教習所へ通う道を選ぶことになる。まず第一の注意点は“公認”の教習所を選ぶことだ。免許制度の改正で今では少なくなったが、昔は前述した“一発試験”を希望する人も多く、試験を受けるための技量やコツを教えてくれる“私塾”みたいな場所があった。これがいわゆる“非公認”の教習所だ。

これに対し公認教習所とは、国から認可を受けた教習所であり、国の方針に従った学科カリキュラムや技術指導が受けられる。1番の特徴は、卒業すれば本来免許センターで受けなければならない技能試験が“免除”になること。つまり、教習所の課題さえクリアして卒業すれば、あとは免許センターで学科試験を受けて合格すれば、免許取得が完了する。

教習所のコース図

教習所は練習用のコースがあり、クルマ、バイクが混走で練習するのが一般的。コンパクトな敷地に、坂道、一本橋などのセクションが配置。実技講習は、まずバイクの操作法と操縦特性を習い、その次の段階で法に則った運転方法を身につけることになる。

 

公認教習所もいろいろある

僕がバイク雑誌編集者時代に色々な教習所にお話を聞いたり、取材したことで感じるのは、“教習所にも色々ある”ということだ。僕が免許を取った時代は“教官は怒鳴るもの”、“教官に嫌われたらなかなか次の教習科目に進めない”なんてことがまことしやかに囁かれ、確かに軍隊調な雰囲気があったものだが、今はそういう時代じゃない。

人気、不人気の教官はいるかもしれないが、大抵の教官は自分の仕事が“サービス業”であるということを心得ている。問題は、それどころか逆に校風的に教習内容がアマイこともあるということだ。教習所業界では“ところてん”教習所と呼ばれているらしい。その意味は読んで字の如く“押し出し式”。生徒数優先というか、質より量の校風というか…。確かに免許は簡単に手に入るものの、卒業したところでちゃんとした技術が身につかないなんてこともあるようなのだ。

そんな“ところてん”教習所を卒業したライダーの話では、時間のかかる一本橋は常に順番待ちの列ができるぐらいで練習があまりできず、倒れたバイクの引き起こしなども、「卒業までにできるようになっていればいいから」なんて話だったものの、結局引き起こせないまま卒業してしまったとか…。“ところてん”教習所を選んでしまうと、ちゃんとした技術が身につかないというわけだ。

 

公道デビュー時に差が出る教習所選び

怖いのは、バイクはクルマと違い路上教習がないということだ。つまり初めての運転免許を“ところてん”教習所で取得してしまうと、そんな未熟な状態のまま公道デビューに挑戦しなければならない。ライダーの中には、せっかく免許を取得したのに自信がなくてバイクに乗らない、通称“未満ライダー”が一定数いるのだが、彼らの多くはそんな“ところてん”教習所の卒業生ではなかろうかと個人的に思っている。せっかくバイクに興味をもち、大金をはたいて免許を取得したのに実に残念なことだ。

この“ところてん”教習所とは真逆の教習所もある。二輪免許の取得はもちろんだが、しっかりした“技術取得”を理念に掲げており、“ダメなところはダメ”としっかり運転技術を教えてくれる。押し出し式の“ところてん”に対して“スパルタ”なんて言ったりするが、文字通り教習は厳しめ。キチンとした技術が身につくまで徹底的に教えてくれるのが特徴だ。バイクの免許専門の自動車教習所などはその最たるものだが、卒業する頃には公道デビューなど意に介さない立派な運転技術が身に付いていることだろう。

さて、あなたが選ぶ教習所は“ところてん”か“スパルタ”か? ちなみに選んだ教習所がどっちかは公式ホームページの雰囲気や、ネットの評判をみれば、“ところてん”かどうかはともかく、教習内容が“ぬるめ”なのか“厳しめ”なのかの判断はある程度予測が可能だろう。また教習所はクローズドではなく見学可能なのが一般的。入校パンフレットをもらいついでに教習風景もチェックしよう。生活圏にある教習所を2、3校見て回れば、自分に合ったところが見つかるハズだ。

教習風景

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