ザ・正統派ネイキッドとして転生し、二度あることは三度ある……いや、三度目の正直で高い人気を勝ち得た3代目“インパルス”こと「GSX400 インパルス」。1994年の登場以来、毎年のように小改良や魅力的なカラーリング投入が行われて定番化したのに、なぜか突然放置プレイがスタートしたり、まさかのラインアップ落ちへ。そんな背景には浮気性なスズキ(?)ならではの特殊事情があったのです……!
●1995年型「GSX400 インパルス タイプS」のカタログ表紙。改めてスペックを紹介しておくと3代目“インパルス”は「GSX400S カタナ」譲りの399㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンを採用し、当時の馬力自主規制上限値53馬力を1万1000回転で発生、かつ最大トルクは3.8㎏mを9500回転で絞り出した傑作パワーユニット。この年式のタイプSからクランクケースカバーに「SUZUKI TSCC」のステッカーが復活したのも地味に嬉しかったものです。60㎞/h定地燃費は36.0㎞/ℓ、燃料タンク容量16ℓ、シート高760㎜、乾燥重量はSTD比プラス2㎏となる175㎏。税抜き当時価格は58万9000円。前後サスの“KYB(カヤバ)”ブランドロゴがカッコよろし
インパルスという繰り返す衝撃【その2】はコチラ!
インパルスという繰り返す衝撃【その4】はコチラ!
重いコンダラ……いや、思い込んだら試練の道を行くがスズキの〜
さて、「ヨンヒャク」と言ったら、もう押しも押されもしないニッポンバイクマーケットにおける花形クラス……ですよね!?
●花形……と言えば『巨人の星』(著:川崎のぼる 原作:梶原一騎 上写真は2008年5月16日に1980円で発売されたKCデラックス。通常単行本ほかは電子版もあり)の主人公、星 飛雄馬永遠のライバル花形 満(はながた みつる ※赤いほう)ですよね〜。小学校3年生でオープンカーを乗りまわし不良友達と作った野球チームの監督兼選手に収まり……と、改めて調べてみるととんでもない設定だったのですね。あ、「重いコンダラ」都市伝説も面白いですよ〜
現状はどうなっているのかな~と、軽い気持ちで各メーカーのラインアップを調べてみましたら、2024年5月1日現在、各社が国内で正規販売している251~400㏄のバイクは(生産終了車を除く)……。
カワサキが「NINJA ZX-4RR 40th ANNIVERSARY EDITION」、「NINJA ZX-4RR KRT EDITION」、「NINJA ZX-4R SE」、「NINJA 400 KRT EDITION」、「NINJA 400」、「Z400」、「ELIMINATOR SE」、「ELIMINATOR」、「ELIMINATOR PLAZA EDITION」で、おお、話題沸騰! 400クラスに並列4気筒を復活させたニンジャZX-4Rから定番のパラツインニンジャ&Zはもちろん、クルーザーモデルまで揃っていて素晴らしい~!
●カワサキ「エリミネーター」……昭和40年代生まれな筆者にとって400㏄のエリミネーターと言えば1986年から1990年代中盤まで売られていた並列4気筒エンジン+シャフトドライブの「エリミネーター400」なのですが、令和の“エリミ”は「ニンジャ400」と同系統の398㏄4スト並列2気筒DOHC4バルブエンジン(48馬力/3.8㎏m)をロー&ロングなボディに搭載。60㎞/h定地燃費は31.6㎞/ℓ、燃料タンク容量12ℓ、シート高735㎜、車両重量176㎏。税込み価格は81万4000円。豪華装備が追加されたバリエーションモデルもぜひ要チェックを!
ホンダは「CBR400R」、「NX400」、「GB350S」、「GB350」と車種こそ絞り込まれてはいるものの直近、外装を一新したロードスポーツとアドベンチャー……いや、ホンダ的な表現で言えばクロスオーバーモデル(^^ゞを登場させており、さらにテイスティシングルに近日新しい仕様を追加予定……など気合いは十分。
●ホンダ「NX400」……なかなかの名ブランドに育っていた(と個人的に思う)「400X」を刷新し、まさかのNXブランドでリスタートしたホンダのアドベ……いやクロスオーバー400! 昭和40年代生まれな筆者にとってNXと言えば1988年から発売されていつの間にかラインアップから消えていた124㏄4スト単気筒エンジンの「NX125」なのですが、海外では「NX650ドミネーター(輸出専用車)」の復活だ! と沸いているみたいですね。令和の“NX400”は「CBR400R」と同系統の399㏄4スト並列2気筒DOHC4バルブエンジン(46馬力/3.9㎏m)をロングストロークな足まわりを持つボディに搭載。60㎞/h定地燃費は41.0㎞/ℓ、燃料タンク容量17ℓ、シート高800㎜、車両重量196㎏。税込み価格は89万1000円。“クチバシ”デザインは意地でも使わないという意思表明か(^w^)
ヤマハは「YZF-R3」、「MT-03」、「トリシティ300」で、パラツインの定番スポーツに感動のフロント2輪モデルという組み合わせ。
●ヤマハ「トリシティ300」……1980年代バイクブームの最中には「FZ400R(N)」や「FZR400(R)」がいた激烈ヨンヒャククラスにこのようなモデルがヤマハからラインアップされるとは想像もつきませんでした。フロント二輪、リヤ一輪、LMW(Leaning Multi Wheel)テクノロジーを全注入されたボディに292㏄4スト単気筒OHC4バルブエンジン(29馬力/3.0㎏m)を搭載。60㎞/h定地燃費は40.0㎞/ℓ、燃料タンク容量13ℓ、シート高795㎜、車両重量237㎏。税込み価格は104万5000円。同じ三輪の「ナイケン」同様、“モビルアーマー”風味のフロントデザインがタマリマセンなぁ〜
アレレレ〜? 令和6年、スズキの400㏄販売モデルは1車種のみ
対してスズキ株式会社は……「バーグマン400 ABS」のみ、「バーグマン400 ABS」のみの1台ポッキリというありさまなのです!
●スズキ「バーグマン400 ABS」……さすが黄金期を迎えたモトGP活動でさえ、あっさりと切り捨てる選択と集中のメーカー(愛すればこその皮肉)。まぁ、レース活動のほうはカーボンニュートラルという大義名分のもとに復活してくれて良かったのですが……って何のハナシでしたっけ? あ、そうそう、あまりにも寂しすぎる現行400㏄クラスのラインナップ。ウワサの「DR-Z400S/SM」がインジェクションになって復活することを心より期待しております! で、バーグマン(どうしてもスカイウェイブと言ってしまう……)400は、399㏄4スト単気筒DOHC4バルブエンジン(29馬力/3.6㎏m)をトラコンも標準装備する利便性の高い車体へ搭載。60㎞/h定地燃費は27.2㎞/ℓ、燃料タンク容量13ℓ、シート高755㎜、車両重量218㎏。税込み価格は84万7000円。あれ? スカイウェイブ650シリーズは、もうラインアップにないんですね……(驚)
最近Vストローム兄弟がドンドン増えたり、GSX-SブラザーズやGSX-8シリーズもザクザク大攻勢がかかっているところから、いやいやまさしく“元気! やる気! スズキ!”状態だよなぁ(モトGPはやめちゃったけど)、めでたいことだよなぁ(モトGPはやめちゃったけど)……と呆けておりましたら、気が付くと400㏄クラスはスクーター1台のみ、ということになっていたのですね。
●Vストロームなんて写真の「Vストローム250(チーム過積載御用達な水冷パラツイン車)」に、「Vストローム250SX(油冷単気筒を積む価格破壊アドベンチャー)に、「Vストローム650 ABS(完熟Vツインの神旅バイク)」に「Vストローム650XT ABS(完熟Vツインの神旅バイクおめかし版)」に、「Vストローム800(新生パラツインのシン・神旅バイク)に、「Vストローム800DE(新生パラツインのオフロード番長“で”すが何か?)」に、「Vストロームローム1050(知らないうちに超電子制御を身に付けた胸熱Vツインモデル)」に、「Vストローム1050DE(胸熱リッターVツインのコストパフォーマンス絶対王者“で”すが何か?)」の8モデルがラインアップされていますからね……。スズキ二輪部門絶好調の一翼を担う大ブランドとなりました〜
あのころ……1995年にスズキはどれだけ突き抜けていたのか?
では3代目のインパルスとなる「GSX400 インパルス」と「GSX400 インパルス タイプS」が相次いで登場した1994年から年を越し、スズキ75周年という節目となった1995年にどんな251~400㏄バイクが販売されていたのかというと……
「GSX400 インパルス」、「GSX400 インパルス タイプS」、
●1995年、艶やかな漆黒をまとって登場したスズキ75周年記念車である“インパルス”。ん? 引き算してみると……1920年が創立!? ハイそうなんです。1920年3月に創立された鈴木式織機株式会社が現在のスズキの前身なのです(織機が分からない人はいませんよね? もしいたらショッキング)。そこから75周年を記念するモデルが設定された……というわけでした。税抜き当時価格(※以下注釈なきものは同じ)はSTDが56万9000円、タイプSが58万9000円ナリ。ちなみにスズキお初のバイクは1952年発売の「パワーフリー号」(2スト36cc)でありました
「バンディット400」、「バンディット400V」、
●1995年1月30日に63万9000円で発売された「バンディット400V」。1989年に初代が登場するも、よりネオレトロなゼファー旋風の前に苦戦が続きました。1994年には3代目“インパルス”も出たことだし、こりゃバンディットはお役御免だな……と思いきや、2代目がよりスタイリッシュになって突然登場! 前後タイヤはラジアル化され、スイングアームは鉄パイプから角型アルミパイプへ、メーターには燃料計も追加され、マフラーはスリップオン化、ハザードスイッチも標準装備、シート下には小物入れまで新設定。シート高も745㎜とライバルより低めで文句なし。「GSX-R400R」系列の398㏄ショートストロークエンジンは53馬力/3.8㎏mのパフォーマンス。……といえ、かえすがえすも当時の馬力自主規制が恨めしいですね。珠玉のハイメカ“VCエンジン”の魅力がなかなか伝わりませんでしたから……
「GSX400S カタナ」、
●1992年に登場した「GSX400S カタナ」。成型用の型代がかかる外装類はもちろん、エンジンとフレームなどの根幹部分まで再構築しておきながら65万9000円というアンビリーバボーな悪魔的プライスタグを付けてきたスズキ。デビュー以降、カラーチェンジも小変更も行わないまま2000年ころまでラインアップに残り続けていたと記憶しております。エンジンは53馬力/3.8㎏mの実力で乾燥重量182㎏、シート高750㎜。燃料タンク容量は17ℓを確保。実はツーリングユースにも適している実力の持ち主だったと言えるでしょう!
「GSX-R400R」、
●各メーカーの400ccモデルがしのぎを削ったTT-F3レースも1991年を最後に全日本選手権が終了するなど、潮が引くように沈静化していったレーサーレプリカブーム。1993年モデル以降は59馬力だった最高出力も53馬力へ厳密な自主規制が始まり、「同じ馬力だったら流行りのネイキッドに乗るべ、安いしな!」という浮動ユーザーの総崩れ現象が急加速。「GSX-R400R」も写真の1995年モデルが最終型となってしまいました。ど〜ですか、あえてのアルミダブルクレードルフレームや倒立フロントフォーク、水冷式オイルクーラーまで採用していたラストレプリカヒーローの姿はっ! お値段は73万9000円……。ひとつの熱き時代の終焉を見事に飾ったモデルでありました……。なお、燃料タンク容量16ℓ、シート高750㎜、乾燥重量169㎏
「RF400R」、「RF400RV」、
●1993年3月に64万9000円で発売が開始されたスポーツツアラー「RF400R」(写真)。GSX-R400R系の53馬力/3.8㎏mパワーユニットを新開発されたスチール製プレス成型フレームに搭載。外装は魚のエイをイメージした独特なデザインのフルカウルを採用。1994年2月にはVCエンジン仕様の「RF400RV」も69万9000円でデビュー! 燃料タンク容量17ℓ、シート高775㎜、乾燥重量185㎏。兄貴分の「RF900R」も一定以上の人気を得ました(600も存在していましたが日本へは未導入)
「グース350」、
●1991年12月に56万9000円で登場した「グース350」348㏄油冷4スト単気筒OHC4バルブエンジン(33馬力/3,3㎏m)を倒立式フロントフォークを採用した本気の車体へ搭載。車名はマン島TTコースのグースネックコーナーからきており、ビッグシングルスーパースポーツの新たなる地平を拓きました。60㎞/h定地燃費は50.0㎞/ℓ、燃料タンク容量15ℓ、シート高770㎜、乾燥重量145㎏。生産は1999年型で終了しましたが、2000年ころまでフルラインアップカタログに掲載されていた記憶あり
「イントルーダー400」、
●1993年5月に登場していた「イントルーダー800」の400cc版という位置付けで1994年4月、59万9000円にて発売された「イントルーダー400」。33馬力/3.3㎏mを発揮する399cc水冷4ストV型2気筒(Vバンク角45度)OHC4バルブエンジンにシャフトドライブが組み合わされ、フロントは大径21インチホイールを採用。ハンドル形状はアップハンドルとフラットバーハンドルの2タイプが用意されていた。60㎞/h定地燃費は37.0㎞/ℓ、燃料タンク容量12ℓ、シート高685㎜、乾燥重量200㎏。なお、1996年にはフロントホイールが19インチになるなどの仕様変更を受けて1990年代末まで販売を継続。2001年にはよりロー&ロングなスタイリングを持つ「イントルーダークラシック(400)が登場!
「サベージ400」と
●前年に登場していた「サベージLS650」の兄弟車として、1987年1月に47万9000円で発売が開始された「サベージLS400」。地味に人気を集めておりましたが、まさに1995年モデルが最終型に……(1997年ころまでラインアップには残っていたはず)。396㏄空冷4スト単気筒OHC4バルブ(TSCC)エンジンは24馬力/2.7㎏mのパフォーマンスを発揮(後にこちらが27馬力までパワーアップされシングルスポーツ「テンプター400」の心臓に)。燃料タンク容量10ℓ、シート高650㎜、乾燥重量159㎏。……しかし、今見るとなんともインパクトのあるデザインですなぁ
ネイキッド2車種4バリエーションにカタナ、レーサーレプリカからスポーツツアラー、シングルスポーツ、クルーザーまで2タイプ!と、まさに列記していくだけでキーボードを打つ指先が疲れてしまうほどの百花繚乱ぶり(激安……いや、高コスパパラツインスポーツ「GS400E」もギリギリ1995年当時のフルラインアップカタログには掲載されていたような……)!
●何度でも紹介したい忘れじのスタンダードネイキッド「GS400E」。399㏄空冷4スト並列2気筒DOHC2バルブエンジン(39馬力/3.2㎏m)。60㎞/h定地燃費は45.0㎞/ℓ、燃料タンク容量17ℓ(ですから理論上の満タン航続距離は765㎞!)、シート高760㎜、乾燥重量169㎏。価格はなんと1994年モデルで42万9000円!
そんな大所帯だったスズキ400クラス軍団を率いる座長的な存在となった「GSX400 インパルス/タイプS」は改良の手を緩めず、魅力を維持していくことに努めます。
キメ細かい改良を施して400ネイキッドの王道を往く!
1995年型ではマフラーエンドの形状が変更されて、STDにもハザードランプを新たに設定(タイプSには1994年登場時から導入済み)。
●1995年型「GSX400 インパルス」カタログ表紙より。いや〜、このキャンディフォレストグリーンはメチャクチャ美しい色でしたね〜。まさに“ザ・バイク”とも言える端正なスタイリングにとても映えました
「IMPULSE」の立体ロゴも燃料タンクの目立つところへ雄々しく移動されました。
カラーリングは人気の赤と灰が継続されて、青は緑へと変更……これが1995年2月のこと。
●「ほぼ何も変わってないじゃん!」と思って細部を確認したら、バックミラーの位置が30㎜上方へ移動したり、プラグキャップが赤くなってたり、シート下に4ℓの収納スペースが追加されたり、乾燥重量も1㎏増えて価格は1万円アップの56万9000円に……。これぞ平成の「1㎏=1万円」!?
「あれ? 黒は……?」と思っていたら、STDとタイプSが足並みを揃え、1995年3月に“75周年記念車”として登場してきたではありませんか(タイプSの改良版青×白も同時に登場)。
●1995年3月に発表された「GSX400 インパルス タイプS」カタログより。直上で紹介したSTD同様の変更を受けつつ、さらにクラッチとブレーキレバーへ黒アルマイト処理を施し、マフラーも漆黒化。リヤショックのスプリングは赤くなり、キラキラなゴールドチェーンも採用。フロントフォークアウターチューブとリヤショックのリザーバータンクには精悍なKYBのロゴ! そしてそしてクランクケースカバーには“SUZUKI TSCC”の文字が入るなど細部を変更しまくりながら、価格はSTDと同じく1万円アップだけ(58万9000円)って……コスト計算が絶対オカシイ。あ、乾燥重量はSTD同じく1kg増えて175㎏になりました……
これがまた赤の差し色も効果的で今で言う“レベチ”のカッコよさ!
●1995年式「GSX400 インパルス 75周年記念車」カタログよりタイプS紹介の部分。塗色自体は当時のスズキ定番であるパールノベルティブラックなのですけれど、細部演出のうまさで黒の魅力が引き立っております〜
アニバーサリーな特別車両でありながら、他の1995年モデルと同じお値段(STD=56万9000円、タイプS=58万9000円)というのですから、そんなところにもスズキの良心を感じさせられました。
金型代のかかる外装パーツの形状変更も迷わず実施!
細かいモディファイは止まりません。
1996年2月にはただでさえライバルより良かった足着き性のさらなる向上のために、シート&サイドカバーの形状を変更。
●下1996年型と比較するための1995年型「GSX400 インパルス」の写真です。この年式までサイドカバーの着色部分が左右に長く上下は短く、隣接するエアクリーナーカバーはブラックアウトされておりました……が!
そちらに合わせてテールカウルのシルエットにも小変更が加えられました。
●1996年型「GSX400 インパルス」。足着き性向上のために形状の変更を受けたシート、サイドカバー、テールカウル……が分かりますか? シート高のカタログ数値自体は760㎜で変わっていないのですけれど、太ももの内側がより細くなったため足着き性が向上したのです。また、テールカウルは光の反射具合でよりプレーンな造形になったことが見てとれますね。その他、ハンドルスイッチ形状も変更され、エアクリーナーカバーはクロームメッキとなり、ボディ中心部にて光り輝くことで車体全体を引き締めます。そして何より注目は4into1マフラーの下部に追加されている黒い金属の棒……それこそがっ(本文へ続く)
その他の改良点は上のキャプション(出版業界用語?で写真説明文のこと)をお読みいただきたいのですけれど、本文にて声を大にして(?)言っておきたいのがセンタースタンドの標準装備化ッ!
●右下の写真に注目! 真っ黒くろすけで地味極まりないセンタースタンドが主要な部分カットとして、誇らしげに紹介されているではあ〜りませんか! 筆者はこの快挙だけで一生スズキに付いていこうと決めました!?
やれ軽量化のためにだの、やれ集合マフラーにしたから装着できなくなったなどの理由で、ドンドン取っ払われることが増えていたセンタースタンドをモデルライフの途中から標準装備化してくるというのは、なかなかの英断。
もちろん重量は数㎏ほど増えてしまいますが、メンテナンスや荷物積載時での利便性を考えると、SSを含めたあらゆるバイクに採用されてしかるべき……と考えている筆者にとって、この改良はスズキ推しをさらに加速させるものとなりました(1996年モデルはSTD、タイプSとも乾燥重量3㎏増、価格はまたまた+1万円……)。
往年のレーサーを彷彿させる“カラーリングの魔術”もしっかり活用
同1996年の6月には“ヨシムラ”のレーシングマシンを想起させる赤×黒のカラーリングを追加。
●1996年型でテールカウルをシンプルな形状としたのは、この“ヨシムラカラー”の塗り分けを見越していたからではないか……と今になって気付きました(28年遅い)。このアングルで撮影すると、センタースタンドが目立っていいですね(しつこい)! なんと価格はSTDの単色と同じ57万9000円
それからまたなんとたった半年後の1996年12月にはグラフィックや配色を少し変え、ツルンとした表皮になったシートも新採用した小改良版“ヨシムラカラー”が登場……。
●タンクのSマークがホワイトとなり、逆に白抜き(?)だったSUZUKIロゴがブラックへ。サイドカバーは黒一色となり、フロントフォークアウターチューブにKYBロゴがズドーンと入った仕様へマイナーチェンジ。ここまでコマゴマと変更を受けても価格は変わらず57万9000円! いやもう今思えばとんでもない大バーゲンセールだったんですな〜
って「いやちょっとペース配分がおかしくないですか?」とスズキ広報から送られてきたプレスリリースと広報写真を整理しながら、妙な胸騒ぎを感じていたら案の定あしたのジョー、1997年に大きな動きがありました。
最大のライバルが同じチームから繰り出されてしまった!?
なんとなんとスズキ400㏄(カタナを含めると)並列4気筒ネイキッド4本目の矢、「イナズマ」の登場です!
●1997年3月に突然アンベールされた「イナズマ(400)」。399㏄油冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは53馬力/3.7㎏mの実力。60㎞/h定地燃費は36.5㎞/ℓ、燃料タンク容量18ℓ、シート高760㎜、乾燥重量185㎏。170㎜幅を持つリヤタイヤがド迫力の後ろ姿を演出していました。スズキとしてはお初となるブレンボ社製フロントブレーキキャリパーを装着したバイクでもあります。兄弟車である「イナズマ1200」とこのブレンボキャリパーほか数々のパーツ……つまり車体を共用することでコスパ的にも有利に……。それやこれやの企業努力が実って後にも先にも唯一の400㏄油冷4発エンジン搭載車でありながら、価格は59万9000円!
1本目の矢……出自からして“レプリカ並みの走行性能”を標榜し、強力なエンジン+リヤ1本サス+流麗なデザインを実現して一定の支持は得たものの、当時の大多数ユーザーが求めているネイキッド像とは乖離してしまった「バンディット400」シリーズ。
2本目の矢……バンディットの反省から(?)市場が求めるものを徹底研究して、ならば!とばかり端正なスタイリング+リヤ2本サス+流しても楽しいエンジンというド直球を市場ニーズのド真ん中に投げつけた「GSX400インパルス/タイプS」。
こちらは十分すぎるほど人気モデルにはなれたもののトップを快走する「CB400 SUPER FOUR」には追いつけず……。
●ホンダ「CB400SF」……バージョンRの悪夢をバージョンSで見事にリカバリーし、400ネイキッドの覇道を突き進む絶対王者! 写真は1996年12月に登場したSTD仕様でテールカウルがさらにカチ上がっておりまする。ブレンボ……っぽい発色のフロントブレーキキャリパーでしたが、このころはまだNISSIN製……。価格は58万9000円。各メーカーが400ネイキッドで60万円の壁を突破することを非常にイヤがっていた時期でしたね〜
3本目の矢……3代目インパルスから遡ること2年、1992年に登場して以来ず〜〜〜〜〜〜〜っとそのまんま、小改良もカラーリングの追加も変更もなく(1999年モデルが最終となるまで)地味〜〜〜〜〜〜〜〜〜に売られ続けた「GSX400S カタナ」(まぁネイキッドということにさせておいてください。異論は認めます)。
「ええ〜い、超個性的なラインアップを展開しているのにライバルを蹴散らせない……。これ以上どうすればいいのか? う〜む、他社が絶対にマネできないスズキならではのモノ……油冷だに! ちょうどGSFのナナハンエンジンがあるからそれを400にして、車体を同時開発中の750(日本には導入されず)や1200とで共通化すればコスト面でも見栄えのリッパさでも有利だら? やらまいか!」と筆者脳内でイマジナリースズキ開発者の声がハッキリ聞こえてきたような、「イナズマ」の衝撃的デビューが1997年3月に果たされたのです。
●こちらは「イナズマ(400)」とほぼ同じ体躯を持つ1998年4月に発売開始された「イナズマ1200」。1156㏄油冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは100馬力/10.0㎏mのパフォーマンス。大排気量油冷エンジンならではの極太トルクはそのままに、ベースとなったGSF1200/Sよりシュン!と良く回るフィーリングが持たされていたのが印象的でした。燃料タンク容量18ℓ、シート高780㎜、乾燥重量208㎏。170㎜幅を持つリヤタイヤもブレンボ社製フロントブレーキキャリパーも400同様でした。価格は79万8000円
マーケットの嗜好へ徹底的にアジャストしたはず……だったけど
翌1998年4月に発売された「イナズマ1200」とほぼ共通(各部強化の差はあり)の車体を持つだけに、全長は「GSX400インパルス」の2080㎜より60㎜大きい2140㎜、ホイールベースも同1435㎜より25㎜長い1460㎜。
何と言っても容量が18ℓというインパルス(16ℓ)より2ℓも多く入る丸味を帯びたボリューミーなガソリンタンクと、当時の400ネイキッドとしては最大となる170㎜幅の極太リヤタイヤ(インパルスは140㎜幅)が、クラスを超越したビッグバイク感を醸し出していました。それでいてシート高はインパルスと同じ760㎜だったのですからタイシタもの。
●真横のスタイリングも見て欲しかったので写真は2000年11月リリース版ですがここで掲載。タンクからテールカウルへ続く流れも悪くない……というか十分に魅力的だと思いますし、威風堂々としてなおかつ破綻のないキレイなデザインなのですけれど、歴史的なバックグランドが希薄で当時のファンには訴求力が弱すぎたのかもしれません
さらにはフロントブレーキへ泣く子も黙るブレンボ社製の対向式4ポットキャリパーを装備しつつ価格は「GSX400 インパルス」の2万円高……つまり「タイプS」と全く同じ59万9000円という絶妙さもあり、スズキの営業サイドからすれば「こりゃ大ヒット間違いなし!」とほくそ笑んでいたことでしょう。
駄菓子菓子!
バイクビジネスというのは本当に難しいものでございます。
背後霊……いや守護霊のように旧き良きイメージを投影できる姿形のよく似た過去の名車があるわけでもなく、かといってライバルのパクリと思われるシルエットは絶対に御法度。
なおかつ「イナズマ1200」としても成立するデザイン……となったら、こうなるしかありませんし、こうするしかない。
●「イナズマ1200」の前にスズキ(油冷)並列4気筒ビッグネイキッドの表舞台に立っていたのが写真の「GSF1200」でしたからね(1995年1月に79万8000円で発売開始)。9.8㎏mの極太トルクを極低速と言える4000回転で発生させちゃうという変態的出力特性を持たされたため、スロットルを軽く捻るだけで前輪はアッとという間に地面から離陸……(ショートホイールベースも一因)。ウイリー上等なエクストリーマー御用達マシンとなったため(中古車が安かったせいもある)、現在残っているキレイな個体はなかなかに貴重だと聞いております。
今見れば「厳しい条件をクリアしつつ素晴らしくキレイにまとめたものだなぁ」と感心するくらい仕上がっているスタイリングだと思うのですけれど、当時400ネイキッドを頑張って購入していた層にとっては、バックグラウンドに流れる“ヒストリー”は甘美なもので、ショップで契約書にハンコを捺すとき背中を押してくれる存在。
さらに「CB-SF」や「XJR」、「ZRX」、「ゼファー」には、その歴史を深く補完する、より濃ゆいリッターモデルが新車で手招きをしておりました。
●みんな大好き“Z1”ことカワサキ「900 Super4」。1972年に輸出専用モデルとして発売された伝説のモデル。この通称火の玉カラーを施された燃料タンクを持つ「ゼファー1100/750/(400。χ〈カイ〉もあり)」シリーズや現代を生きる「Z900/650RS」シリーズなどが、どれだけ人気を集めてきたことか……。本当にカワサキはそのあたりの温故知新ぶりがウマイ!
と、ちょっと記事が長くなってしまったので【その4】へ続きます!
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