実のところ初代登場時にはもう創造が始まっていたという次期型「VMAX」。しかし17年ゼミ(素数ゼミとも)の寿命すら凌駕する長期間、適宜チラ見せはするものの水面下で行われた開発は文字どおりの二転三転!? そこには秒針分歩の技術向上、次々に迫り来る環境諸規制強化、そして何よりヤマハ開発陣のあくなき拘りなどが複雑に絡み合っていたのです!
VMAXという孤高の“魔神”【その7】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
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初代登場から23年後に次期モデルが登場……なんと希有な存在か!
素数ゼミ……。
周期ゼミとも言われており13年や17年ごとにアメリカで大量発生するセミのことで、子供ゴコロに知的好奇心をかき立てられましたね~。
昨年2024年は221年ぶりに13年ゼミと17年ゼミが同時発生し、数兆匹が短い夏を謳歌したそうです(ウゲッ)。
ちなみに前回、素数ゼミが大発生した221年前は1803年。
米国がフランスからルイジアナ購入を行ったことでも知られ、日本で言えば享和3年、江戸開府200年の節目となった年でございます。
次期型「VMAX」はそんな頃から開発がスタート……してるわけありませんね(^^ゞ。
「2代目魔神の開発期間は17年ゼミより長いよ!」と言いたかっただけなのに、またまた計画性なく与太話ってしまいました。
進研ゼミで人生を学び直します……m(_ _)m。
登場してから12年目で一番生産されたバイクって、どんだけ〜〜!?
さて、ハナシを戻して「VMAX」。
リアルに初代が1985年にデビューしたころには、すでに次期型の開発がスタートしていたとか。
幸いにして1200の「VMAX」は発売されるや全世界的な大ヒットモデルへと成り上がり、競合するライバルも(ほぼほぼ)存在しなかったため、フルモデルチェンジを急ぐ理由もありません。
なんてったって初代「VMAX」年別の生産台数がピークに達したのは実に登場から干支がひとまわりした12年後……1997年のことですからね(北米仕様+欧州仕様+日本仕様で8500台オーバーを記録!)。
リッターオーバークラス(=高額商品)のベストセラーでありロングセラー、かつヤマハのイメージリーダーでありフラッグシップ……。
とてもじゃありませんが、そんなモデルの開発責任者なんて筆者はやりたくありません(←誰もオマエには頼まない)。
なんと開発責任者が2回も替わるという特殊な事態をくぐり抜け……
実際のところ2代目「VMAX」はPL(プロジェクトリーダー……つまりは開発責任者)が長い長い開発期間のあいだに次々入れ替わり、最終的には3人目となるPLのまとめあげた車両が2008年、ようやくアンベールされたのです。
いやもう素数ゼミも土の中で驚くしかない20数年オーバーという長大なるプロジェクト。
静岡県磐田市にあるヤマハ発動機本社の内部で、一体何が繰り広げられていたのでしょうか?
なんだってぇ〜っ! スケジュールの土壇場で排気量を変更する!?
2009年の春、国内仕様デビュー時に開催された「New VMAX取材会」へモーターサイクリスト編集部員としてイソイソと出掛けていったワタクシは「エンジンは当初2000㏄でスタートし、いったん1600㏄(1500㏄台!?)へ。そして最終的に1700㏄(正しくは1679㏄)となりました」という主旨の関係者発言を聞いてブッ飛びました。
と、同時に「そりゃ20年以上かかったワケだ〜」とマリアナ海溝より深く納得したもの。
「剥き出しのエンジンが走っているような」とも称された偉大なる初代を超えるためには、パワーユニットが圧倒的なものでなくてはならない……そりゃそうです。
で、コンセプトキーワードとなった『怒濤の加速感』を実現させるため、驚きの2000㏄水冷V型4気筒が開発されたそうですが当然ながら巨大で重たいものとなり、そちらを搭載したプロトモデルまで作ってみたもののヤマハ車として世に出すには問題があるという判断からお蔵入りに……。
折しも時代はキャブレターからFIへの過渡期に差し掛かり、コンピュータによる緻密な燃料噴射制御によってコンパクトさにこだわった1600㏄……おそらくは1500㏄台に収まるエンジンでも予定していたパワフルさを実現できていたはず。
そこへアジャストした最新技術マシマシの車体も早急に作り込まれていき、「いやぁ、仕様が固まってよかったよかった。ようやく完成するねぇ」とスタッフの多くがホッとしていた開発の最後期……。
狙っていた『怒濤の加速感』には何かもうひと味足りないと感じていた実験担当者がヤクルト400ほどの排気量をチョイ足ししたエンジンをこっそり用意して、その1679㏄版と完成間近な1600㏄版とをPLら主要メンバーに乗り比べてもらうという暴挙(?)を敢行したとか。
フツーなら「今さら排気量変更なんてできるかっ」と一喝されて終わるところでしょうけれど、比較試乗したスタッフは一様に「いいじゃん、コレ!」となり、慌てて発表までのロードマップをリスケ開始。
エンジン内部パーツの見直しから吸排気系のリファイン、もちろんシャシーなどにも改良を施して操縦安定性能を再検証……などなど手を加えるべき細部変更は多岐に渡り、かくいうスッタモンダの結果、すでに決まっていた2008年6月、米国でのお披露目会へなんとか間に合わせた……という話を非常に興味深くキーパーソンから聞かせていただきました。
もちろん2代目「VMAX」のポイントはエンジンだけではありません。
次回はそのあたりを語ってまいりましょう~(^^ゞ
あ、というわけで変態ぞろい(←とてもいい意味で)のヤマハ開発陣が威信をかけて作り上げ、世に出した2代目「VMAX」はもちろん、大ヒットした初代もレッドバロンにはしっかり在庫アリアリ! アフターサービスだって万全ですので、まずはお近くの店舗で「VMAX」へ盛り上がった思いをスタッフに投げかけてみてくださいね~(^^ゞ