愛車スーパーカブ110でグダグダと昭和のレトロなスポットを巡る連載シリーズ。埼玉から茨城経由で栃木まで北上するツーリングもいよいよ終盤だ。今回は、駅前のSL展示や、レトロな街並みをウリにしている茨城県太子町をブラついてみた! 昭和レトロ紀行らしからぬ、シャレオツなカフェも必見(笑)。

<前回までの記事はコチラ>
自衛隊推しの弁当自販機店で優雅な朝食を【昭和レトロ紀行 茨城編①】
「ヤンキーピラフ」でシャバ僧に気合注入、押忍!【昭和レトロ紀行 茨城編②】
カオスで物悲しい、限界ドライブインでお宝ゲットォ!【昭和レトロ紀行 茨城編③】

味のある駅前に、昭和の蒸気機関車がズドーン

茨城県水戸市のフジヤドラインブインを出た後、ひたすら北上した。県道52号に合流し、国道123号、県道12号などを経由し、県道32号に入る。
カントリーロードが続く。時折ある集落を抜けて、田園風景、意外と山深い道をゆく。

この辺りの地域=奥久慈を抜ける県道32号線は「アップルライン」とも呼ばれる。りんごが名産で時折、果樹園らしき場所を見かけた。

1時間30分も走り、やがて大子(だいご)町に着いた。茨城県の北西部に位置し、福島県と栃木県の県境にも近い。日本三名瀑に数えられ、茨城を代表する観光スポット「袋田の滝」がある。そんな自然豊かな山中に、昔ながらの街並みが残されているという。

まず向かったのは、JR水郡線の常陸大子駅だ。意外と言っては失礼だが、そこそこの人で賑わっている。

↑木が基調で、シックな色合いの常陸大子駅。中には観光案内所もアリ!


そして駅前のロータリーにはSLが展示されている! 昭和45年 (1970年)3月 まで現役で走っていたとのこと。現地の説明版によると、「C12型蒸気機関車」で、昭和7年(1938年)から昭和22年(1947年)に282車両製作。約30年間、九州内を走っていたが、昭和42年(1967年)に鹿児島から、水戸に移ってきたという。

↑愛車とC12型蒸気機関車でパチリ。スペックをバイクの諸元風に紹介すると次の通り(笑)。■主要諸元 全長11350 全幅2950 全高3900(各mm) 車重39トン

 

実はこのSL、バイクと全くの無関係ではない。なぜならC12を製造した5社に「川崎車両」が入っているのだ。川崎車両は鉄道車両メーカーで、川崎重工業の子会社(現在は分社化)。新幹線の0系などで有名だ。

しかし、ここまでマジマジとSLを間近に見るのは初めて。「ザ機械」って感じで見ていて飽きない。

↑メカメカしくも機構としてはシンプルで、火を焚いて走る。バイクに通じる物がある!?

二輪駐車場を探して時間が止まった商店街をウロウロ~

次の目的地はカフェ。駅前から続く商店街に大正時代の民家を使ったカフェがあるらしい。

バイクを駐車してカフェに向かおうとして、困ってしまった。SLの隣は駐車場なのだが、バイクは駐車不可だったからだ。
バイクが中に停まっていたので大丈夫だろうと思い、ゲートに向かった。たまたまいた先客のライダーが悪戦苦闘していて、一向にゲートが開かない。

しばらくすると、近くに停まっていたタクシーの運転手さんが声をかけてくれた。“二輪は対象外”だという。「そこはお金払いますからバイクも停めさせてくださいよ~」と管理者さんには声を大にして訴えたい。

改めてスマホで調べてみると、商店街にある大子町文化福祉会館「まいん」にパーキングがあり、そこにならバイクも停められるみたい。さっそく向かってみた。

駅前から延びる「栄町通り」は昭和そのままな建物や看板の商店が並び、まさにこの企画のためにあるようなスポット(笑)。うーん、とても懐かしい。

↑時間が止まった商店街。

 

↑商店街の旅館。いいねぇ(笑)。今度ぜひ泊まってみたい!


どうやら「まいん」は封鎖されていて、祭りか何かの準備をしているようだ。他に駐車できる所を探しつつ、目的地のカフェを確認。

↑ここが大正時代の建物を使った「daigo cafe」。風情のある木造で、お隣には蔵もある。■茨城県久慈郡大子町大子688 TEL:0295-76-8755


駐車できる場所を探して商店街をグルグルと走り、3回ほどカフェの前を通った(笑)。とうとう観念して、カフェの前に停め、お店の人に事情を説明した。すると「お店の前に停めてもらって大丈夫ですよ。3回ぐらい前を通ってましたよね」と女性店員がやさしく言ってくれる。

昭和ならぬ大正レトロカフェで、皆様おなじみのブツを発見

ようやく店内へ。うーんレトロなのだが、洗練されてオシャレだ。これまで寄ってきた店と違い(笑)、何だか落ち着かない?

↑切子のグラスとメニュー。これまた味がある。メニューには店が誕生した経緯が書かれていた。


奥久慈のしゃも(鶏)の卵や肉を使ったオムライス、カレーのほか、ハンバーグなどの食事もできる。でも、まだヤンキーピラフが胃の中でくすぶっているし、時間も16時頃と中途半端なので、甘味にすることにした。

「昔ながらのクリームソーダ」(580円)と、「りんご屋さんのりんごゴロゴロアップルパイ」(単品780円 ドリンクセット1200円)に惹かれた。後者は土地の名物である奥久慈りんごを使っているのがイイ。そして「完熟のりんごがゴロゴロ入った、りんご屋さんでつくられたアップルパイです」との一文が決め手になり、パイがクリソーを土俵の外にうっちゃった(笑)。

ふんぱつしてアイスコーヒーのセットを注文。さっそく店内を物色だ。

↑昔ながらのたばこの看板とコーラ自販機。

 

↑昭和10年頃の商店街。昔から栄えていたのだ。

↑繊細な木彫りの細工。思わず見惚れてしまう。

↑店内にはレトロな物品の数々が。

 

↑そして味のある棚。中にバイクのフィギュアが置いてある。こ、これは!!!

↑レッドバロン名物、成約記念のミニレプリカ。オーナーさんはレッドバロンのユーザーでライダーなのか!? しかしオーナーさんが不在で詳細はわからず!

 

それにしても味わい深い店だ。オープンしたのは2013年。築100年を超える古商家は、呉服業や雑貨店、たばこ店などに使われていたようだが、30年近く空き家になっていた。

そこで現オーナーがこのまま朽ち果てていくのはあまりにもったいないと考え、家を借り受けた。片づけから始まり、修繕、改修に1年をかけた末、リノベーションされてカフェとして甦った。そして2016年にはカフェと土蔵が国の登録有形文化財に登録されている。素敵なのも納得だ。

映えるアップルパイ! たまには洒落た物も食わせて笑

そうこうしているうちにアップルパイが。テーブルにカメラを置いていたら、先程の店員さんが「袋田の滝でよさこいの撮影をされてきたんですか」と話しかけてきた。
「いえいえ、ブラブラとツーリングしているだけです笑」と私。

さらに話を訊いてみると、本日は袋田の滝で、明日は商店街でよさこい祭りがあるという。それゆえに駅前が賑わっていたり、駐車場が使えなかったのだ。

しかしなぜ大子町で“よさこい”なのだろう? 訊ねてみると、よさこいが好きだったdaigo cafeのオーナーさんが主導して、大子町で祭りを開始。今年で20年を迎えたという。せっかくなので祭りを覗いてみたかったが、残念ながら袋田の滝の祭りはもう終了時間にさしかかっている。

まぁそれはともかくアップルパイだ。

↑この連載らしからぬオシャレな一品(笑)。見た目にも楽しい!

実食すると、ざっくりしたパイの中に豊潤で噛み応えのあるりんごがたくさん入っていて至福。周囲のソースで味変も楽しめる。

さらに感心したのがアイスコーヒー。クリアでスッキリしているのにコクもあって美味い。
そんなこんなで店を後にした。建物も内観も一見の価値がある上に、店員さんも親切。とてもいい店だった。

↑駅から車で5分ほどの距離にある旧上岡小学校。ナント明治44年(1911)に建てられた木造校舎が残っているのだが、残念ながら営業時間に間に合わず。2002年3月に廃校となったが、ドラマなどのロケ地としても使われている。この学校を含めて、いずれ大子町にリベンジするのもよさそう。


それにしても袋田の滝や商店街など、様々なスポットをジックリ回っていたら一日いても足りるかどうか……。自然豊かな環境に加え、SLやレトロな街並み、洒落たスポットと見どころが多い町だなと思った。地方にある多くの町は、見どころのどれかを持っていても、大子町のようにここまで様々な側面での見どころはないような気がする。うーん、行政や観光協会がやり手なのかもしれない(笑)。

そんなことを考えながら、薄暗くなりつつある道を、本日の宿がある栃木県那須町へと走っていった。

――翌日、那須モータースポーツランドで無事取材を終えた(ホテルの記事と取材の模様は別記事で紹介予定)。帰路に着いたのは17時近い。

下道なので、ここから走りっぱなしでも3時間かかる。1日取材しただけにグッタリしていたが、焼肉弁当、ヤンキーピラフといった印象深い食べ物、昭和ならではのスポットの数々、そして出会った人々の思い出を反すうしながらスーパーカブ110を走らせた。そういった思い出はちょとした元気をいつも私に与えてくれる気がする。
[終]

[おまけ]燃費は50.30km/L!

今回の総走行距離は429.6kmで、消費したガソリンは8.54L。燃費は50.30km/Lだった。
山道が多く、全開の時間も長かったせいか、よくも悪くもない。ただエンジンブレーキがかかった時、チェーンが少しガラガラと音を出しており、燃費悪化につながったかも。これはすぐ対処したい。

ちなみにオドメーターはようやく2000kmを突破ァ! まだまだ走るゾ笑

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