愛車スーパーカブ110と妻で群馬県太田市&大泉市の昭和レトロスポットを巡る珍道中もいよいよ完結。ツーリング最後のシメとして選んだのはブラジル料理! ではなく、いかにもな昭和メシだった!

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【昭和レトロ紀行】ここは日本じゃない!? 脂オブリガート、ブラジル料理の洗礼を浴びたゼ【群馬県太田市&大泉町編①】
【昭和レトロ紀行】創業55年超! 強烈なトンデモ旅館に泊まったら、妻が消えた!?【群馬県太田市&大泉町編②】
【昭和レトロ紀行】トンデモ宿のおかみさんに直撃インタビュー! その後は異国情緒にひたる料理を喰べまくり!【群馬県太田市&大泉町編③】
【昭和レトロ紀行】昭和バブルと「デカセギ」そしてブラジルタウン、100年を巡る壮大な旅!【群馬県太田市&大泉町編④】

帰る前にまだ何かやり残している気がする

資料館を出た私と妻。100年の歴史にクラクラしながら、“めぼしい所もおおよそ巡ったし、そろそろ帰るか”と思った。しかし、ふと“もうここに来ることもないかもしれないな”という予感もある。

「まだ何かやり残している気がする」と妻に言う私。妻は半笑いで「?」マークを顔に浮かべている。

もっとインパクトのあるモノ。言葉は悪いが、ゲテモノ的な何かが足りない気がしてきたのだ。そこで、最初に行ったスーパー「アソーゲタカラ」を改めて物色することにしてみた。

……探すこと数分。「こんなのはどう?」と妻が見つけてきたのが“タマリンド”の缶ジュースだった。なんだっけタマリンドって? よくわからないけどゲテモノな予感がするので行ってみよう!

↑これがタマリンドのジュース。ブランド名はnawOn。値段は失念! 確か200円ぐらいだったと思う笑。



タマリンドは、何となくショウガ系のイメージがあったが、マメ科のトロピカルフルーツらしい。果汁はなんと30%と多め。結構入っていて不安になってくる……。

買った後に気付いたのだけど「東南アジアでよく飲まれている大人気のドリンク!」「Product of Vietnam」と裏側に書いてある。ブラジルじゃないんかーい笑。前回、大泉町観光協会のスタッフが仰っていたようにベトナムの方も多く住んでおられるから置いてあるのかもしれない。

↑ブラジルスーパー前の濃ゆいフェロモン壁でさっそく飲んでみた。


植物系の甘い水? 舌や歯に染みてくるような不思議系の甘さだ。シロップに似ているけど、ほのかな酸っぱさがある。これは初体験だ! うーん、マズいもう一杯(笑)!

↑どんな味なのか? この顔を見よ。残したくなかったけど無理でしたスンマセン!

胃袋を労るために昭和な食堂に寄ってみた!

気が済んだので(笑)、帰ることにした。帰路でも昭和レトロなモノを探しながらフラフラした。

↑帰路の途中に寄ったオートパーラー「ピット・イン77」。■群馬県太田市牛沢町332-1

↑ズラリと並んだ自動販売機。毎度おなじみのそば&うどん自販機やハンバーガー自販機もアリ。オートパーラーにしてはキレイで入りやすい雰囲気だ!

↑昔ながらのビデオゲーム(写真のは間違い探し)もアリ。まさに王道のオートパーラーだったが、取り立てて珍しいモノはないので撤収。


続いて寄ってみたのが「田中食堂」さん。老夫婦が営んでおられる、いかにも昭和な食堂である。ブラジル料理で疲れた胃を労ろうという考えたのだ笑。

↑まさに食堂な「田中食堂」。カブとのマッチングも最高だ!■群馬県邑楽郡大泉町吉田3392 TEL:0276-63-1026

↑メニューは手書き。ラーメンと定食、丼物、カレーなど黄金メニューが揃う!

↑給水機がまたレトロだ。


店内は割と広く、先客に年配のカップルがいらっしゃる。

壁のメニューを見ていると、焼き肉ライスとハンバーグライスが1600円と飛び抜けて高いのが気になった(ともに味噌汁、おしんこ付き)。考え抜いて、私と妻が頼んだのは醤油ラーメン(650円)とカツカレー(980円)! どちらかが片方を食べるのではなく、二人でシェアしようという考えだ。こういう時、本当にソロでなくてヨカッタと思う笑。

待つこと10分ほど。まずはラーメンが着丼。おぉ惚れ惚れするほどのザ・ラーメンだ。

↑ナルトにしなしな系のメンマ、ネギ。そして黄金色に透き通るスープ。まさに王道の醤油ラーメンだ。ドンブリにも味がある。

↑さっそく実食。痛恨のピンボケ! 麺は細く縮れて黄色い中華麺だ。


あぁ……ウマー!(『まんが道』風味)。全てがやさしいのに深い。スープは油が控えめで、アッサリしているのに鶏ガラ系などの複雑な旨味がある。

麺はコシがほどよくあり、量もなかなか。さらに、適度にやわらかい豚チャーシュー、こりこりしたメンマ、ネギがいいアクセントになっている。妻も「やっぱこれだなー」とウマそうに食べていた。

やさしくて深い味わい、これは癒される……

続いてはカツカレー。

↑まさしく食堂のカツカレー! 赤い福神漬けにスープ付き。これまたお皿が味わい深い。もちろんボリュームもたっぷり。


薄い黄色でダシが利いているソバ屋風のカレー。粘りがあって辛さはほぼ感じず、ドッサリ入った玉ねぎと豚肉が複雑なハーモニーを奏でている。カツは揚げたてで衣がサックサク。噛むと、肉の旨味がジュワッと浸み出してきた。これまた深い。

↑カツカレーは主に妻が担当! フェイジョアーダでは戦力にならなかったが、本来は頼りになる胃袋の持ち主なのだ笑。


どちらも主張は控えめなのに味が深いのだ。そして安心できる。やっぱり自分が落ち着くのはこういう料理だ。もちろんブラジル料理が悪いわけではなく、長い間慣れ親しんできた食事はそうそう変えられない。このシリーズの1回目でもさんざん言ったけど、こうした食事で体も文化もできあがっているのだから仕方ない。

店員のおばさまと少しお話をすると、高齢のため営業時間と定休日は突如変更する場合がある。しかしながら営業時間などを「ネットに書かれて迷惑している」とのこと。もし行ってみようと思った人は事前に確認を。なお、ブラジルの方(かた)の印象を訊ねてみると「みんな陽気でいい人」と仰っていた。

妻とダラダラ旅を振り返る① 一番強烈だったのは「宿」!

田中食堂を出て、あとはもう埼玉の家に帰るだけ。休憩で寄った「道の駅 はにゅう」で妻に今回のツーリングについて色々訊いてみた。

一番印象深かったのは……「宿!」。“日本”というものへの信頼? 期待? があって、そこにあの宿を見せられ「アジア旅行で培った緊張感が弛んで、すっかり油断してしまっていたことに気づいた」と言う。

以前ForRで少し書いたけど「アジア旅行」というのは、私と妻が出会ったキッカケの出来事。1999年から1年半かけてユーラシア横断のバックパッカー旅行をした際、タイのチェンマイで妻と会ったのだ。

妻はその後、帰国し、私は旅を続けた。妻とはチベットで再び合流し、ネパール、インド、パキスタン、イランを経由して、トルコのイスタンブールまで一緒に旅をしたのだ。妻は、アジアの端っこまで旅して満足したことに加え、ヨーロッパはオカネがかかるという理由で帰国。私は旅を継続することになった。

なんだかんだ紆余曲折があり、2002年に結婚と相成った次第だ。

宿についての感想はまだ続きがあった。
「でも、あの老夫婦の“商魂たくましさ”が見られた嬉しさ楽しさもあった。悪びれもなく『ピアノは私』『うちは料理がメインだから今度は是非』と言えてしまう精神力は、お客としては勘弁してほしい反面、“いいもの見たな”という充実感があった笑」という。

妻とダラダラ旅を振り返る② ヤシの新芽は最高! 左折と下道も最高!!

大泉市のブラジルタウンについては「ブラジルだった笑」。特にスーパーで香水とセクシーランジェリーと原色衣装になかなかの重きを置いていたことが面白い。食文化は「とにかく濃いめの調味とオイルコーティングで素材の味をぶち壊していくスタイルが日本と真逆の発想で面白かった」とのこと。

なかなか過激なご意見だが「でも衝撃だったのは豚のしっぽだけで、それ以外は美味しかった! 特にサンドイッチ屋(TOMI)の“ヤシの新芽”が最高」と意外にも好評だ。

そしてツーリングについて。妻と短距離のタンデムはあったものの、ここまで長距離(と言ってもさほどではないけども)のツーリングは初めてだった。

するといきなり「右折より左折が楽しい」と一言。
どういうことだ?
「左折の方がタイトにって言うの?(笑) 大きくバイクが傾くし、対向車がいないから」
なるほど笑。
「ただ風に吹かれて進んでいくのが楽しくて、下道をてくてく走るのは眺めがいい。畑の御老人方の作業が見えるし、すれ違う人の生活音も声も聞こえて面白い。左折の一体感とか囲うものがない解放感とか、バイク乗りから感じる“快適空間でハンドル握ってるだけの車乗りとは一味違うぜ感”を少しわかった気がした」
なるほどなるほど笑。
「空調が効かない天気と共にある、エンジンに跨がってアゴに響く振動、路面状況をダイレクトに感じて、同乗者もお客さんじゃなくてバランスと居眠り厳禁の緊張とか、バイクならではだった」
なるほどなるほどなるほど笑。

「ふだん異国のカルチャーショックがない中、日本でこんな目に遭うとは……。でも、CDショップに行った時みたいに自分で買わないものに出会ったり体験したりできる、いい機会だった。アジアの旅の先に、今、日本でアジアのようなヒロさん(筆者)との縁を感じるような旅だった。まぁ色々不快適な目に遭ったけど(笑)、楽しかったのは楽しかった」

――――その後、再び帰路についたのだが、妻に「眠いから停めて」と言われ、停車できるスペースがなかったため、軽いケンカもあった(こう書くと恥ずかしい笑)。

↑道の駅で見知らぬ方にシャッターをお願いしてパチリ。おかげでいい記念になりました。この旅をいつか思い出すことになりそうだ。

実はこのツーリング、自分だけの裏テーマがあったんです……

その後も運転しながら、ブラジルから来日した方はもちろん、鳥順の夫婦もみんな強(したた)かだったな! と、妻と似たような感慨が沸き上がってきて、ヘルメットの中でニヤリとしてしまった。

実はこのツーリング、“妻と出会って25年を祝う企画”が裏テーマだったのだけど、妙に濃ゆく思い出深いものになった。妻にはまだ言っておらず、この裏テーマを明かしたら妻がどんな顔をするのか、と思うと、またヘルメットの中でニヤリとしてしまった。

もう一つ去来するのは、ブラジルタウンが出来た100年の経緯だ。自分も時間の流れに浮かぶ小さな泡にしか過ぎない。そして妻との25年=四半世紀とこれからの時間もいずれ時の流れに飲み込まれていくのだなと思うと虚しい。が、それは少なくとも今この瞬間ではない。

ともあれラーメンとカツカレーのおかげか、あるいは前日のフェイジョアーダの影響か、満腹だ。いい陽気も手伝って私も眠くなってきた。ウトウトしている妻を背中に感じながら、そしてニヤニヤしながら、何とか眠らずにスーパーカブを走らせ続けた。

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