レッドバロンによる"絶版車を安全に乗るための取り組み”を探るシリーズも、いよいよ最終回。レッドバロンの「パーツ保証」によってコンディション良好な絶版車をまとめて試乗してきたが、今回はオフロード系や外国車など様々な車両のインプレをお送りしよう!
Contents
ジャンルを問わず様々な絶版車が好調を維持している
レッドバロンでは最長3年間、中古車にパーツ供給を含む修理体制を維持する「パーツ保証」(部品代・技術料は有償)を付帯している。本シリーズではその仕組みを探ってきた。
部品が生産終了した不調バイクに乗ってみた【レッドバロン「パーツ保証」の秘密を探る! 前編】
本社工場に潜入! 絶版パーツをストックする巨大システムを探った【レッドバロン「パーツ保証」の秘密を探る! 中編】
店頭に展示されている中古車は、基本的に全て状態が良好。その品質は豊富なパーツストックと高度な整備技術、充実の設備に支えられている。
それを証明するため、排気量を問わず多種多様な試乗車がプレス向けに用意された。今回はフルカウル編、ネイキッド編に続き、バラエティに富んだ様々なジャンルのインプレをお届け。シリーズ最終回となる。
D-トラッカーX [KAWASAKI '16年型] 扱いやすいパワーと車体が魅力!
[車両解説]
戦闘力の高いオフロードモデル=KLX250に前後17インチのホイールとオンロードタイヤを装備したスーパーモタード仕様。’98年型で登場したD-トラッカーはモタード人気の火付け役となった1台だ。’08年にモデルチェンジを受け、D-トラッカーXを名乗った。
従来のキャブレターではなくFIを導入するとともに専用サスセッティングを採用。KLXと同様、ストリートに似合うV字型のヘッドライトやシャープな外装も獲得している。’16年5月にファイナルエディションが発表され、生産終了となった。
■水冷4スト単気筒249cc 24ps/9000rpm 2.1kg-m/7000rpm ■装備重量138kg
[ミニインプレ]
キャブ仕様の‘05年型Dトラッカーを所有している筆者。FI仕様のXは印象がかなり違う。荒々しいキャブ仕様に対し、Xはレスポンスがジェントルかつスムーズ。頭を使って、トルクが厚いパワーバンドをキープするのが楽しい。
サス設定によるものなのか、乗り心地もカッチリ感がアップした印象。ハンドリングは自然で、積極的に体重移動するとしっかり曲がってくれる。
シート高は860mmと数値的には高いものの、車体が軽量スリムなので威圧感は少ない。’23年型まで後継機のKLX230SMが存在したが、やはり250ccフルスケールのモタードは貴重だ。
XL250ディグリー [HONDA '93年型] 軽量パワフル! 完成度の高い4スト250オフ
[車両解説]
オンロード寄りのデュアルパーパス=AX-1をベースに、フロント21インチ&リア18インチや独自の出力特性でオフロード志向を強めた万能モデルがXL250ディグリー。本格オフのXLRに対し、より身近で、軽快さを重視している。
当時のライバルだったセロー225がSOHC空冷エンジンなのに対し、DOHC水冷ユニットを搭載しているのが特徴。マフラーをフレーム構造材の一部に組み入れ、軽量スリム化を実現しているのもポイントだ。'91年型として登場し、'95年型で殿堂入りした。
■水冷4スト単気筒249cc 25ps/8000rpm 2.5kg-m/6500rpm ■装備重量129kg
[ミニインプレ]
エンジンはセロー225どころか250よりパワフルながら、実に扱いやすい。中低速トルクがしっかりあるのにスムーズに吹け上がる。4スト250ccのトレール車としてはかなりパワーのある部類だ。
車体は軽快スリムそのもので、ハンドリングが素直。普段の足からツーリングのお供まで活躍しそうだ。そしてデザインがカワイイのも気に入った(笑)。
生産は'91~'95年のみというマイナー車なので部品確保は大変だと思うが、しっかり整備されていて実に好調だった。
フォーティエイト [HARLEY-DAVIDSON '17年型] 独自のテイストに心から浸れる
[車両解説]
‘11年に登場したスポーツスター1200シリーズのファクトリーカスタム仕様。アンダーミラーと低いハンドル、小ぶりなピーナッツタンク、前後16インチのファットタイヤによるグラマラスなフォルムが魅力だ。
シリーズの中でも特に高い人気を誇ったが、’20年型で他の空冷スポーツスターと同様、ファイナルを迎えた。
■空冷4ストV型2気筒1202cc 9.78kg-m/3500rpm ■装備重量195kg
[ミニインプレ]
初めて見た時はインパクトが強烈だった。特にライディングポジションは印象的。低く前寄りにマウントされたバーハンドルと、フォワードコントロールのステップを採用し、手足を前に突き出し、体が「く」の字型になるライポジに驚いた。だが、過激なスタイルとライポジにより、乗っていると何となく自分がカッコよく思えてしまう(笑)。
デビュー当時はライポジに違和感を覚えたが、改めて乗ってみると、慣れたせいかそこまで不自然さは感じない。今はなき1200cc空冷Vツインのエボリューションエンジンは、古きよきメカニカルなサウンドと鼓動感がやはりいい。低速域から豪快にトルクを発生し、乗っているだけで愉快。走りは安定感に溢れ、ドッシリした直進安定性が優秀だ。
長時間のライディングはライポジのせいもあって少々厳しいが、ショートツーリングなどで軽く流せば、最高の気分転換になりそうだ。
グロム [HONDA '13年型] 愛らしいのにキビキビした走りがイイ!
[車両解説]
125ccレジャーバイクブームの先駆けとなった存在で、当初はタイホンダが発売。その人気から’13年に国内導入が開始された。
心臓部は、通称タイカブと呼ばれるWAVE125iの横置き空冷単気筒をベースに、アップマフラーなどの吸排気系を専用設計。これを独自のスチール製モノバックボーフレームに搭載する。さらに、丸みを帯びた外装とφ31mm倒立フォーク+ファットタイヤを与え、愛らしいスタイルを形成している。
’16年型でモデルチェンジし、角形基調のデザインやダウンマフラーの2代目にバトンタッチした。
■空冷4スト単気筒124cc 9.8ps/7000rpm 1.1kg-m/5250rpm ■装備重量104kg
[ミニインプレ]
今や懐かしい初期型グロム。個人的には、現行型のデザインよりコッチの方が好みだ。最高出力が9.8psなのでパワーはそれなりだが、低中速トルクがキッチリ確保され、スムーズな加速を見せる。4速マニュアルミッションなのでスポーティな走りも可能だ。
車体は非常にコンパクト。前後12インチの小径ホイールと、しっかり効く前後ディスクブレーキが相まって、キビキビとコーナリングできる。可愛らしいスタイルながら、走りはいいというギャップも面白い。なおシート高が低く、横幅もスリムなため、小柄な人でも足着きは安心だろう。
基本構成は2代目や現行型と共通する部分が多いが、気になるのは専用の外装。生産終了から8年が経ったが、筆者調べではまだ純正パーツが供給されている。とはいえ、今後どうなるかは不明なので、やはりレッドバロンのパーツ保証は安心だろう。
[まとめ]絶版車に乗り続けるために「パーツ保証」はより重要な存在になる
絶版車ばかり試乗させてもらったけど、どの車両もコンディションは好調だった。今後、電動バイクが全盛になれば、エンジンパーツを中心にますます部品は入手しづらくなり、コンディションの維持が難しい車種が増える。となれば、高額で取り引きされる人気絶版車はともかく、マイナーな古いバイクはどんどん消え去ることになるハズだ。
しかし、レッドバロンの「パーツ保証」があれば、まだまだ乗り続けることが可能。個人的にパーツ保証は「ノアの箱船」のように未来へ絶版車を伝えるためのシステムだな(笑)と思った。正直な話、メーカーがこうした取り組みを行うべきではないか、とも思うのだが、コストを考えれば仕方がないのかもしれない。
マイナーな絶版車が消えゆくこと防ぎ、乗り継いでいくために。レッドバロンの「パーツ保証」は今後より重要な存在になっていくだろう。