『那須MSL外国車試乗会』

2022年10月22日、23日に開催された『那須MSL外国車試乗会』の様子。

 

ツーリング先での故障が気になる旅ライダーにとって、外国車という選択肢はかなりハードルが高い。トラブル発生時のケアの薄さが気になるからだ。しかし、レッドバロンなら全国に約300拠点もある直営店があなたの味方。外国車オーナーも安心して旅に出られるってワケである。

そんなレッドバロンが、より外国車を身近に感じて欲しいと行なっているのが、この『那須MSL外国車試乗会』だ。会場は、栃木県那須塩原市にある『那須モータースポーツランド』。完全クローズド環境の同会場では、大型自動二輪免許を持ってなくてもビッグバイクへの試乗ができる『那須MSLステップアップ試乗会』を開催しているが、今回から『那須MSL外国車試乗会』も、普通自動二輪免許で参加可能になった。

『那須MSL外国車試乗会』

今回より試乗条件が、「大型自動二輪免許保有」から、「普通自動二輪免許で経験1年以上」に引き下げられた。

 

参加条件をそのまま書けば、「普通自動二輪免許(AT限定は不可) をお持ちで、免許取得後1年以上経過している方」とのこと。補足すればレッドバロンでバイクを購入した会員はもちろん、非会員でも参加OKなので、「最近、ちょっと外国車に興味が出てきた」なんて場合はもってこいではなかろうか?

『那須MSL外国車試乗会』

熟練のインストラクターが、参加者の技量をみながらほどよいペースで先導する。

 

今回、僕も『那須MSL外国車試乗会』に参加して色々な車両に試乗。仕事柄、普段はバイクメーカーが用意してくれる新型車両ばかりを乗っている僕であるが、中古車に乗ると新型にはない“その年式ならでは”の良さに気付かされる。そんな一台を紹介しよう!

’12年式 TRIUMPH TIGER800XC

『那須MSL外国車試乗会』

’12年式 TRIUMPH TIGER800XC

 

トライアンフのアドベンチャーモデルであるタイガーシリーズ。現行機種のタイガーシリーズには、アドベンチャーらしい大径ホイールを装備するタイガー1200シリーズと、タイガー900シリーズ、タイガー850スポーツ。一方、前後17インチホイールでロードスポーツ色を強めたタイガースポーツ660がある。

今回、『那須MSL外国車試乗会』で試乗したモデルは’12年式のタイガー800XC。現行機種のタイガー850スポーツ、タイガー900シリーズの前身的モデルだ。

2011年に登場したタイガー800は、2015年のモデルチェンジで、トラクションコントロール電子制御スロットルを装備。その後の排気量を800ccから888ccへと拡大。現行モデルでは、排気量はそのままにタイガー900シリーズへと進化している。

トライアンフ・タイガー800XC

2011年のカタログに載っていたタイガー800XCのスペック。

 

今回試乗したモデルを改めて紹介すると’12年式のタイガー800XC。つまり、2011年の登場直後で2015年の電子制御をはじめとする大幅な進化を行う前のモデルで、現在のタイガー1200シリーズに連なるラインが登場する前の型である。近しい2011年当時の税込価格を記せば、タイガー800XCが128万3100円で、タイガー800が113万5050円。当時は、今ほどの電子制御化も進んでおらず新車価格の場合45万円以上もお求めやすかったのだ。ちなみに2022年現在のタイガー900ラリーのメーカー希望小売価格は170万5000円となっている。

12年式トライアンフ・タイガー800XC

タイガー800XCのメーター。走行距離1万4695kmだった。

 

走行距離1万4695kmのタイガー800XCを実走

12年式トライアンフ・タイガー800XC

ロードセクションではモーターのようなフラットな吹け上がりのエンジンフィーリングが非常に楽しいトライアンフ・タイガー800XC。

 

オフロード走行を想定し、大型21インチのホイールを装備したタイガー800XC。今でこそアドベンチャーモデルはフロントホイール21インチモデルが隆盛を誇っているが、当時はまだホンダもアフリカツインシリーズを復活させておらず、現代のアドベンチャーブームのきっかけとなったNC700Xが登場するのも、このタイガー800XCの年式と一緒の2012年のことである。当時はKTMとBMW、そしてトライアンフくらいしか21インチホイールを持つ“オフロード重視”のアドベンチャーモデルをラインナップしていなかったのだ。


改めて乗ってみるとやはり際立っているのは直列3気筒エンジンだ。トライアンフといえば、直列3気筒エンジンというくらいの代名詞的存在だが、この頃のタイガーシリーズでは、非常にトライアンフらしいエンジンフィーリングが味わえるのがいい。

というのも、現行モデルのタイガー900シリーズでは、よりオフロードでのトラクション性能を求めて、「Tプレーンクランクシャフト」が搭載されている。この「Tプレーンクランクシャフト」とは、クランクシャフトの回転軸360°に対して均等に120°ずつコンロッドを配置する従来型ではなく、文字通り“T”型、0°90°180°でレイアウトしている。燃焼タイミングを不均等にすることで後輪が回転するときのトラクションを掴みやすくしている。

……のだが、やっぱりトライアンフの直列3気筒エンジンらしさ、吠えるような咆哮を伴ったフラットな吹け上がりを感じられるのは、120°ずつコンロッドを配置する従来型のエンジンなんだよね。文章で説明するのは非常に難しいけど、吹け上がりがリニアかつトルクのキレがいいというか……。語弊を恐れず言えばモーターのようなフラットな吹け上がりというか。慣性トルクが強く尻上がりな加速をする直列4気筒エンジンとはまったく対極にあるエンジンフィーリングが楽しいのだ。

12年式トライアンフ・タイガー800XC

12年式トライアンフ・タイガー800XCは、オフロード走行を想定して21サイズのホイールを装備する。

 

まぁ、確かにそのフラットでリニアな吹け上がりのおかげで、ダート走行すると発進時などにトラクションが掴みにくくリアがすぐ空転しはじめる。またコーナーでスロットルを開ければズバッと後輪がスライド。とにかくテールハッピーなキャラクターなのだ。

まぁ、スロットルを戻せばテールスライドは瞬間的に収束するので扱いやすくコントロールは効くのだが、ダートを速く走れるキャラじゃない。そういう意味では現行モデルのタイガー900シリーズはトラクションが掴みやすく、バイクがしっかり前へ進む感じ。オフロード性能は確実に向上している。

ただね、ロードセクションではこのモーターのようなフラットな吹け上がりが非常に楽しいのだ。この直列3気筒の特異なキャラクターが中古車でなら、21インチホイールの車体で味わえるのである。

12年式トライアンフ・タイガー800XC

走行距離1万4695kmにしてはコンディションの良かったタイガー800XC。

 

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