消えゆく昭和のかほりを求めてツーリングする「昭和レトロ紀行」。何やらレトロで強烈な店が多く残っているらしいとの評判を聞きつけ、栃木県足利市に足を運んだ。さらに今回は特別ゲストも参戦。さて、どんな珍道中になるのやら……。

Z世代vs昭和オヤヂ、奇妙な旅のはじまり

(ごく一部で)大評判の昭和レトロ紀行シリーズ。お陰様で今回、サードシーズン(笑)を迎えた。今回向かうのは、栃木県南西部にある足利市だ。鎌倉時代に足利尊氏を輩出した歴史ある土地柄で、日本最古の学校である「足利学校」もある。室町時代は関東の文化を一手に担った。

――そんな都市のせいか、昭和の古い店が今でも多く残っている模様。となれば、行かない手はない。1泊で市内のあちこちを巡るつもりだ。

↑足利市のHP。足利学校の写真がトップになっている。


今回はぜひ連れていきたい相手がいる。自分の息子=16歳の高校2年生だ。彼はZ世代にありがちなデジタルの世界に閉じこもりがち。今のうちに少しでもリアルの肌触りや経験値を積んでほしいと思ったのだ。もちろん仕事のついでなら旅費が経費として浮くので一石二鳥である(冗談ですよー)。

足利市まで、筆者の住む埼玉県南部から高速で1時間少々、下道でも2時間程度とかなり近い。息子に道中の苦労を味あわせるために、もちろん愛車のスーパーカブ110で下道一択だ(笑)。

息子はバイクにほぼ興味がなく、もちろん免許もない。近所に10分くらいのタンデムをしたことがある程度で、ツーリングも初めてだ。車でのキャンプや国内旅行は中学生までたまに行っていた。
……そんな息子をツーリングに誘ってみると、迷いながらも一応YESの返事だった。

後日、詳細を説明したところ「バイクにはどれぐらい乗るの?」との質問。
「あー近いよ、片道2時間ぐらい」と答えると「2時間!? 想像がつかない」と驚いている。そうか、バイクに乗らない人にとって「2時間」は決して近くないのだ(笑)。

初めてのツーリングについて、どんな心境か訊ねてみると「楽しさ8割、緊張2割」という。
「なんで緊張?」
「だって僕が原稿を書くんでしょう?」
いや、そんなこと言ってないんだが(笑)。もちろん私としては書いてもらっても差し支えないが……。

さらに息子は「足利って小江戸って呼ばれているらしい」と、私も知らない豆知識を披露。自分で検索していたそうだ。なお昭和レトロに関しては「嫌いじゃない」と偉そうな回答。息子は、司馬遼太郎やら昭和のアニメを嗜んでおり、間違いなく素養はあるはずだ。

――なんだかんだで迎えた当日。いわゆる2000年代生まれのZ世代vs昭和オヤヂ(筆者 昭和46年生まれ)の珍道中、果たしてどうなるか。

出発から30分でいきなりアクシデント発生!

↑出発前の一コマ。1月末なので2人とも重装備だ(息子の服装は私のおさがり)。ホムセン箱を外して、ラフ&ロードのフロントバッグとデイバッグに荷物を積んだ。

↑ちなみにリアシートは買わずに、文字通りの「即席」で対応(笑)。オフィス椅子用のクッション(6000円ぐらいの結構いいやつ)をタイダウンベルトで縛り、その上にダイソーの100円座布団を重ねた。


この日は凄く寒い。午前8時の気温はマイナス1度。大寒波到来の翌日だったが、その余波が残っているようだ。グローブはレッドバロンがプロデュースし、好評の「ゼロスグラブヒート2」! 電熱のぬくもりがとてもありがたい。

122号線を北上していると、グーグルの導きによって幹線道路を逸れていく。走り始めて30分ほど、道中にあった埼玉県白岡市の芝山沼公園に寄ってみた。

ここで早速アクシデント発生! 

↑長細い沼のある芝山沼公園。自然沼としては埼玉県第2位の面積を誇るという。タンデムの具合などを息子に聞こうと思い、何気なく立ち寄った。


フロントバッグと車体を固定している右側下部のベルトを屈んでグイッと引っ張ったら、寒さもあってかプチぎっくり腰に(笑)。こんな序盤でいきなりピンチ!

幸い座って運転するだけなら、何とかなりそう。だましだまし走るうちに利根川を越え、最初の目的地である「ドライブイン大番」に到着した。

昭和51年創業、男臭さ全開の食堂だ~!

↑まさに「昭和のトラック食堂」的佇まいの「ドライブイン大番」。足利千代田線(県道38号線)沿いの立地だ。●群馬県邑楽郡千代田町瀬戸井294-1 10:30~20:30


千代田町商工会の公式HPによると創業は昭和51年(1976年)。とても味のある店構えだ。看板「大番」の背景がいい感じで退色している。

ドライブイン大番の名物は「もつ煮込み」。群馬はからっ風で寒いせいか、体が温まるもつ煮が有名なのだ。

↑店内は椅子席(12席)と座敷(テーブル×3)がある。なぜか松嶋菜々子のポスターが2枚も! タバコ自販機が店内にあるのも珍しい。

↑座敷はこんな感じ。腰の痛みをこらえつつ座る筆者(笑)。実家みたいな照明にも注目だ!

↑手書きのメニュー。ラーメン、丼、フライ系の定食、カレーなどがある。すだれの奥が調理場だ。

↑手書きのポップ(?)。「知らない人はまったく知らない」って自虐的な(笑)。いいですね。

↑店内は至る所にマンガがギッシリ。3日ぐらい過ごせそうだ。「馬刺660円」とビールをやりながら漫画読みてぇ!

↑メニュー。ラーメン520円、チャーシューメン620円は安い! ショウガ焼定食(1000円)も名物らしいので皆さんぜひ。


私は名物の「モツ定食」(770円)、息子は謎の「大番定食」(1100円)にした。大番定食は最高値だが、これは息子が図々しいのではなく、店名を冠するほどなのだからどんなものか見たい、という私の勝手なオーダーだ(笑)。

濃厚ピリ辛なモツ煮でドンブリ飯を掻き込め!

昼前だったこともあり、私達以外の客は2人。黙々と食事をしており、店内にはテレビの大音量が鳴り響く。息子に店の印象を尋ねると「古い(笑)。でも隠れ家的でいい」とのこと。
おやっさんが一人で切り盛りしており、待つこと15分ほどで着膳!

↑「モツ定食」(770円)。モツ煮にドンブリ飯、おしんこ、みそ汁。清々しいまでに漢(おとこ)な定食だ~。

↑イチ推しのもつ煮はコクがあってピリ辛。盛りがいいので食べても食べてもなくならない、まさに無限モツ! こんな寒い日は体が温まる!


モツがやわらかくてトロける~。これは美味い! 時折口に入ってくるトロトロのにんじんとこんにゃく、ネギがいいアクセントだ。そして味がなかなか濃厚で少し辛い。濃い味付けのオカズでどんぶり飯を掻き込んでいく。これぞ昭和のストロングスタイルだ!

フライ三銃士が集結! 豪華だぜ大番定食!

そして大番定食は豪勢! 立派なエビフライとイカフライ、とんかつという「フライ三銃士」が大皿に鎮座。小さめのモツ煮が付いて、こちらも当然のようにドンブリ飯だ(笑)。

↑店の名前を冠した「大番定食」(1100円)だけに、最強の布陣。野郎のごちそう=フライの競演だぁ~。


息子も大喜びで食べ始めた。食べてる途中、衣からハミ出たエビとイカの具が見えたのだが、立派な具を使っているようだ。息子は、美味いものを食った時に目を閉じて眉をひそめ、上を向く仕草をするのだが、その顔をしていた(笑)。食べた感想を訊ねると、「エビとイカがプリップリで最高」とのこと。

いくら見かけが古くても中身はいい。これが昭和の魅力だ、となぜか誇らしくなる。

息子、キレイに完食。さすが高校生だ。
一方のオジサンはと言うと、夢中で頬張ったもののドンブリ飯の完食は無理だった……。Z世代vs昭和オヤヂの第1回戦は昭和オヤヂの敗北だ。

店内は昼前だったので席がまばらだったが、私たちが出る頃には満席に。ひっきりなしにクルマで客が訪れていた。

Z世代がチクリ。これも立派な仕事なんだよぉ

おやっさんに話しかけようとするのだが、なにせ一人で昼時の客を捌いているものだから、話すタイミングが難しい。
お会計で「あのモツは相当煮込んでるんじゃないですか?」と訊ねると「いや、2時間!」と答え、奥へ引っ込んでしまった。これ以上、質問してもジャマになるので退散した。

昼になってだいぶ気温が上がり、空も晴れている。相変わらず腰は痛いが・・・・・・。次の目的地に向かって準備をしている私に息子が一言。
「ねぇ父さん、これって仕事なの?」といきなり不審がっている(笑)。えーと、昭和生まれ父親の威厳は保てるか?

<次回に続く!>

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