「那須MSLライディングカレッジ」編の3回目は、速度が高い8の字とスラロームを学習。コーナリングの基本を学んだ!

リーンウィズの可能性を引き出すための第一歩

いよいよ実技走行がスタート。まず挑戦したのは「ロング8の字」だ。那須MSLライディングスクール(以下、スクール)でやった「8の字」と違い、パイロンの間隔が約1.5倍に広がっている。

これは、速度を高めてコーナリングの練習をするのが目的。スクールのような安全運転のための「8の字」では速度を落としてリーンアウトでパイロンを小さく回る。一方、カレッジの「ロング8の字」では速度をある程度維持したままフロントブレーキ(以下Fブレーキ)を使い、リーンウィズで大きく曲がるのだ。

↑安全運転のスクールや小回りする時に使うリーンアウト。上体は直立で車体のみ寝かせる。

 

↑ロング8の字は速度レンジが高いため、リーンウィズを使用。上体と車体の中心が一直線に並ぶ。

 

「カレッジの“ロング8の字”はコーナリングだと思ってください。Fブレーキを使って荷重をかけてターンすれば効率よく曲がれます」(中井さん)

つまり、Fブレーキでフロントフォーク(以下Fフォーク)を沈め、前輪を路面に押し付けた状態で曲がる練習を行う。そう、まさに過去記事(教習所じゃ教えてくれない、中上級者はみんな使ってるワザを学びたくないか?)で解説した「フロント荷重」を活かした曲がり方だ。

詳細は次回で解説するが、要点は次のとおり。
バンクを開始すると同時に、コーナー進入前にかけていたFブレーキのレバーをじわりと緩める。Fブレーキを残して前輪に荷重をかけたまま旋回に入り、バンク角を深めるにつれ、レバーの握りも弱めていく。
これによって前輪を路面に強く押しつけることができ、高いグリップ力を引き出せる。また、減速と旋回が一体になっているため、減速後に旋回するよりも効率的など様々なメリットがある。

↑ブレーキレバーをじわりと緩めながら旋回している状態。しっかりフロントが沈み、前輪が路面に食いついている。車体と上体も一直線でまさにお手本の走りだ。


「旋回中は自分の体重をバイクへ垂直に掛けることを意識してください。人間の感覚は凄い。意識をしていればブレーキングでサスが縮んでいる感覚や、タイヤが路面に押し付けられている感覚、お尻の圧力の変化などが感じとれます」(中井さん)

また、通常の「8の字」よりもパイロンの間隔が広く直線区間が長いため、スロットルが開けやすい。スクールでも練習したとおり、車体が出口を向いたらスロットルを開けて上体を前傾。ブレーキングでは上体を起こす動きをしっかり意識する。

フロントブレーキの引きずりで効率的に曲がる!

ここで悪い例と良い例を動画で見比べてみよう。

悪い例では、車体の向きが変わりきっておらずダラダラとバンクしたままで、直線区間がない。そのためスロットルがしっかり開けられず、ブレーキングもできない。またバンクしている時間が長いため、ウエット路面の場合、立ち上がりで転びやすい。

良い例では、FブレーキでFフォークを縮めた状態でターンイン。ブレーキングと旋回が一体化して、実にスムーズに旋回している。きっちり向き変えをして立ち上がっているため、直線区間が長い。そのためスロットルを開けやすく、安定してブレーキングすることが可能だ。

直線区間をしっかりつくるのはスクールの「8の字」と同じ(「ライテクUP講座 2」参照)。ただしスクールのように「大きく入って小さく回る」を重視するのではなく、カレッジでは速度レンジを上げてフロント荷重を練習する点が違うのだ。

数人のグループに分かれ、実際にやってみる。スクールから1か月ぶりだったせいか、スクールで学んだ「視線」「下を固めて上を抜く」「加減速に応じた上体の動き」といった基本を忘れており、ギクシャクの連続だった(笑)。

最初はリーンウィズでの旋回が難しく、リーンアウト気味で回っていた。慣れないうちはこれでもOKとのこと。動作と操作の連動を意識して、感覚をつかむのが大事だ。

↑最初は腕に力が入って、リーンアウトで何とか曲がっていたという有様・・・・・・。

 

インストラクターの指導を受けながら反復練習すること、約40分。ようやく肩の力も抜け、リーンウィズでFブレーキを引きずったまま曲がる感覚をつかめてきた。

↑反復練習のおかげでだいぶスムーズに曲がれるように(汗)。数人のグループに分かれて行うので、すぐに順番がきて練習しまくれる!

 

これでリーンウィズの可能性を引き出すことに少しは近づけた?

スラロームでもリーンアウトは使わない!

続いてはスラローム。こちらもスクールと違い、速度レンジが高いのが特徴。パイロンの間隔はスクールで5m、カレッジでは7mに広げられる。

「先ほどのロング8の字で練習したメリハリのある加速とリーンウィズを意識してみて下さい。スクールでは股下で操るリーンアウトを使いましたが、カレッジではリーンウィズで車体の真ん中に乗ってバイクを曲げましょう」(中井さん)

コースを分割し、グループ分けして実践。直列スラローム、オフセットスラロームの2種類を行い、ここでも動作と操作の連動を意識する。

↑オフセットスラロームの一コマ。短い区間でも上体の動きと操作の連動を意識する。スロットルオンではニーグリップで下半身を固め、上半身はフリーに。右手の動きに連動するように前傾させる。

 

↑ブレーキングでは体を起こし、下半身で踏ん張って腕が減速Gの影響を受けないようにする。これをサボるとブレーキレバーの繊細な操作ができない。

 

↑インストラクターが一人ひとりを追走して走りをチェック。走行後、的確にアドバイスしてくれる。

 

スラロームに苦手意識がある筆者。8の字と同様、リーンアウト気味で曲がろうとしてしまうが、これも徐々に慣れてきた。40分ほど練習すると、リーンウィズで曲がれるように! また、後輪が路面を押し付けている感覚がわかってきた(気がする)。

↑直列スラローム。何とかリーンウィズでできるように! 前後ブレーキを使うことと、大きく入って小さく回るライン取りが重要。

 

↑ちなみにコチラは那須MSLライディングスクールの直列スラローム。パイロンの間隔が狭く、リーンアウトでコンパクトに回っている。

 

こんな風に、バイクに乗っていると自分の感覚が研ぎ澄まされる気がする。この感じは何年乗っても飽きない、と思う。

速いほどブレーキは効かない。その特性を体感

ウォーミングアップでフルコースを数周した後、1時間の休憩タイムに。場内の売店でドライカレーや焼きそばなどを購入できる(500円)。もちろん昼食を持ち込んでもOKだ。

午後1時からの講義では、ブレーキング、コーナーへのアプローチ、ライン取りを学び、フルコース走行を行う。

まず、これらのカリキュラムに関する座学から午後の部がスタートした。

↑座学。ホワイトボードとパネルを使ってわかりやすく解説してくれる。

 

お腹も膨れ、眠気が襲ってきたが、とても興味深く、寝てるヒマなどない。その内容は各講義ごとに解説していこう。

続いて、第1コーナーでブレーキングの練習を行った。ストレートで60km/hまで速度を出し、目印のパイロンを通過したらフロントブレーキをメインに使って完全停止する。スクールでも同様のカリキュラムがあった(「ライテクUP講座3」参照)が、スクールでは50km/h。カレッジでは60km/hまで速度を上げる。

 ここで重要なのがブレーキレバーへの入力を一定にキープすること。

ブレーキの特性として、速度が高いほど効きにくく、速度が低いほど効きやすい。ブレーキの入力が一定だと、この特性が体感しやすく、途中でレバーを握り足したり弱めることがないからギクシャクしにくいのだ。

↑ブレーキングのイメージ。低速になるにつれブレーキの効力が二次曲線的に高まる。スクールでも同様のレッスンをやったが、より詳しい理論をレクチャーしてくれるのもカレッジならでは。

 

「この特性を知っていれば、長いストレートでブレーキが遅れても、コースアウトせず止まれるぐらい速度は落ちます」と中井講師。
「それを知らないとパニックになって、目線もアウト側に行ってしまう。ブレーキの特性を知っておけば慌てる必要がなくなります。これをぜひ経験してほしい」とのこと。

さらにポイントは2つ。
1つは車体を垂直にすること。強い減速Gがかかったり、止まる寸前に前輪がロックしても転倒しにくい。
2つ目は下半身のホールド。腕で減速Gを踏ん張るとハンドルに強い力がかかり、転倒する可能性が高まる。これは車体の高い位置に力がかかるからだ。一方、下半身をホールドすれば、車体の低い位置で減速Gを受け止めることになり、転倒のリスクが減る。

↑エンジンブレーキがかかりにくいよう3速までシフトアップし、60km/hまで上げる。

 

↑パイロンを越えたら、一定の力でブレーキレバーを握り続ける。最初は効力が薄いが、速度が落ちるにつれギュワーと効く。当たり前の理屈ではあるけど、知識として蓄え、体感しておくことが財産になる。

 

続いて、同じコーナーを使い、今度は止まらずにブレーキングからコーナリングにつなげる練習へ。大きなテーマの一つである「フロント荷重を引き出す」ためのカリキュラムだ。タイムアップのためには必須なので、心してかかりたい! <以下次回!>

●ライディングカレッジ編のおさらいはコチラ

ライディングカレッジを受講すると本当に速くなる? タイム計測で実証!【ライテクUP講座5】

ヒザすりの前に「リーンウィズの可能性」を引き出せ!【ライテクUP講座6 カレッジ編】

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事