♪「か~ぎ~り~ないものっ それが欲望ォォォォ~~~ッ」とは筆者が大好きな井上陽水大先生の名曲ですが、本当に人間の欲求というのはキリがないものでございます。1985年の発売当初、市販二輪車トップ・オブ・ザ・トップだった145馬力を誇示しつつ登場した「VMAX」ですけれど、続いていく熱狂のなか車両が広く行きわたっていくにつれ「もっとパワーを~!」と叫ぶ人が現れ、それに応えるショップも登場し……!?
VMAXという孤高の“魔神”【その5】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
Contents
今回のオープニング与太話は孤高のフォークシンガー……m(_ _)m
井上陽水大先生のことをナウなヤングに聞いたなら『少年時代』や『リバーサイドホテル』くらいは、リバイバルヒットのおかげで知っているかな~?
もう少しシニア寄りなら『夢の中へ』や『東へ西へ』だったり「日産セフィーロのCMに出てた人?」なんてネタが出てくるかもしれません。
しかし、そういうライトなファンの方にこそ超大ヒット有名盤『氷の世界』より前に出た初アルバム『断絶』と次の『陽水Ⅱセンチメンタル』も是非聴いていただきたいッ!
冒頭で述べた曲のタイトルはそのものズバリ『限りない欲望』で『断絶』に収録されており、心に迫る熱いメロディと鋭い歌詞との相乗効果が魂を揺さぶります。
魂を揺さぶるといえば「VMAX」(うまくつなげたつもり(^^ゞ)。
存在感と力感がありまくりな1.2ℓV4エンジンを相対的に華奢なシャシーへ搭載したことで、スロットルを捻るたび荒々しい挙動が乗り手の感性を直撃!
その魅力にヤられるライダーは着実に増えていきました。
自分だけの“魔神”を目指したカスタム熱が激しく燃え上がるッ!
1990年に登場し、賛否両論が激しく渦巻いた国内仕様「VMAX1200」も、なんだかんだいって一定以上の支持を得ましたし、円高のおかげもあり買いやすくなっていた海外仕様も絶好調……。
1990年からモーターサイクリスト誌のアルバイトとして編集部に潜り込み、ショップ、市街地バイクスポット、ワインディング、高速道路SA・PAなどへ取材でよく足を運んでいた筆者の目にも、日に日に「VMAX」の勇姿が飛び込んでくるようになったものです。
そうなると必然的に始まるのが「カスタム&チューニング」ですね。
この話題になると、とあるお店の取材で知り合った「VMAX」オーナーの例が記憶の底から浮かび上がってまいります。
その方は初めて会ったとき「やっぱり正規販売ショップはアフターサービスも安心でしょうし、大バーゲン価格だと思ったので国内仕様を購入しました。馬力? 日本国内を走るのですから97馬力で十分でしょ?」といいつつVMAX道をスタート。
しばらくはおとなしくノーマルで乗られていたそうですが、会社の後輩がフルパワー仕様を購入したことで……着火(^^ゞ。
マフラーを換え、サブフレームとステアリングダンパーなども装着し、気が付けば後付けVブーストキットまで組み込んで~などなど。
イベントや取材先で縁あって遭遇するたび、センスよく派手に“ちょっ速”仕様へなっていく“魔神”の変貌ぶりに驚かされたものです。
「知ってます? 日本仕様をフルパワー化したほうが海外モデルより気持ちよ~く、さらに速くなるんですよ!」といったご高説を何度となく賜りました。
興味深く話を聞いていると、くだんの後輩さんもさりげなく張り合っていたようで「近いうちに彼はターボを装着するって言ってたなぁ……」と遠い目をなされていましたので、「あ、このヒトも絶対にマネするぞ……」と思ったものです。
残念ながらそのとき以降会えずじまいで、力の象徴に魅入られし2人のバトルがどうなったのか、今もって気にはなっているのですけれど(^^ゞ。
まさしく鬼に金棒! 「VMAX」にターボチャージャー!!
そうなのです。
ただでさえ馬力が有り余っているように思える「VMAX」なのですが、オーナーのうち数(十?)%は“モアパワー”方向の欲望が限〜り〜なく湧いてしまうようでして、そちらへ対応してくれるショップは一躍脚光を浴びました。
中でも神奈川県川崎市にある「ESPER(エスパー)」は筆者も何度となく取材に伺った超有名店。
何と言っても「VMAX」の各種カスタムはもちろん、ターボ装着のノウハウに関しては右に出る者はいないと言っても過言ではないでしょう。
編集部時代、取材撮影のためESPERさんのターボデモ車を少し運転させてもらったこともあるのですが、中〜高回転域で過給がフルにかかったときのダッシュ力はそれはもう筆舌に尽くしがたいレベル!
周囲の景色がコマ送りで吹っ飛んでいくような加速には身震いしました。
それでいて、ストップ&ゴーだらけな市街地をフツーに走ることもできてしまう柔軟性のあるセッティングには舌を巻きましたね~。
ビッグバイク☆カスタム特需に沸きまくった二輪ギョーカイ……
そんなトップ・オブ・ザ・トップな頂点カスタムの存在が、また高い人気を呼んで販売を加速させ、数多く車両が世に出回ればカスタムパーツも大量に開発&流通するため部品メーカー&ショップも潤う……。
解禁され活性化したオーバーナナハン市場でも「GPZ900R」や「ZZ-R1100」、「GSX1100Sカタナ」、「FJ1100/1200」、そして「ゼファー1100」や「CB1000スーパーフォア」以降のビッグネイキッド群を含め、
1990年代初頭から中盤にかけては限〜り〜ない欲望が充足していくユーザー、メーカー(逆輸入ディストリビューター含む)、カスタムショップの三方が全て“ヨシ”なハッピーに過ぎるサイクルがブンブンと音を立てて回っていたなぁ……と、現状と比較してちょいとばかりもの悲しくなりながら遠い目をしてしまいますネ。
スタイル不変! されど細部は確実にアップデートした「VMAX」!
かくいう時期、「VMAX」本体もまた細かく、かつ着実に進化を遂げていきました。
1993年には北米仕様が登場から8年目にして初のメジャーアップグレードを敢行!
フロントフォークのインナーチューブ直径がφ40㎜からφ43㎜へとサイズアップして前輪まわりの剛性が大幅に向上しました。
それに合わせて制動装置も生まれ変わり、フロントブレーキのローター径をφ282㎜からφ298㎜へ拡大するとともにフローティング化。
なおかつブレーキキャリパーは従来型の単なる2ポッド式から焼結パットまで装備した異形4ポッドタイプへと変更され絶対的なストッピングパワーはもちろん、右手レバーの操作フィーリングまで改善したと大きな話題に……。
従来型オーナーが泣いて悔しがり純正パーツ流用チューニングはもちろん、「ならばいっそ!」とばかりブレンボ、APロッキード、パフォーマンスマシン、トキコなどの社外品スペシャルキャリパーへ付け替えるオーナーが続出したとかしないとか(^^ゞ。
時をほぼ同じくしてリリースされた国内仕様「VMAX1200」には海外仕様同様の前輪周り改良が施されるとともにヘッドライト常時点灯化とハザードランプが追加され、税抜き当時価格(※以下同)は89万円から92万円へ3万円の値上がりを受けました。
国内仕様はこのまましばらく変更なし。
北米仕様は1994年に“イエローマックス”、
1995年には従来の赤とは色味の異なる“レッドマックス”が登場しております(機構面ではカートリッジ式オイルエレメントを新採用)。
そして1995年デビューの国内仕様は“ブラックマックス”へと変化!
こちらは1993年の東京モーターショーでヤマハブースに飾られた参考出品車をさらにモディファイしたモデルとも言え、ブラックアウトされた各部が「VMAX」の精悍さをいや増していました。
当然、海外からも引き合いがあったのでしょう。
“ブラックマックス”のエッセンスは1996年モデルからの北米仕様と欧州仕様にも受け継がれていきます。
翌1997年には海外仕様に“シルバーマックス”が登場し、コチラは日本における逆輸入車市場でも大人気となりました。
やはりいざ自分が購入するとなると派手な黄色や赤色には抵抗があるライダーが多かったのですかね……ジャパニーズはToo shy shyなボーイズ&ガールズが大多数ですから(なお、『TOO SHY SHY BOY!』は観月ありささんの代表曲)。
そして忘れてはならないのが、同年1997年に開催された東京モーターショーにてベールを脱いだ参考出品車です。
金色に輝くブレンボ製フロントブレーキキャリパーとオーリンズ製リヤショック、さらには各部にピカピカな鏡面めっきが施されたスペシャル感満載のモデルで、1993年のショーモデル→翌年に市販された“ブラックマックス”よろしく発売が期待されましたが……ユーザーの願いは届かずお蔵入りに。
その代わり?かどうかはわかりませんが、1998年モデルの国内仕様「VMAX1200」は“シルバーマックス”化して、ホイールやマフラーも銀色がギンギン!
それなのに5万円も値下げされて1990年の国内仕様登場当時と同じ89万円という感動プライスに!
……というのも、この1998年型を持って国内仕様は最終モデルとなり、翌1999年にはラインアップから消え去ってしまいました。
「オイオイ、国内モデルが絶版になっちゃったよ。衝撃のデビューからもう15年にもなるし、海外の『VMAX』もそろそろなくなってしまうのでは?」と、リアル世紀末に2000年問題なども重なってザワつく世間へ呼応するように右往左往しだす「VMAX」ライダー予備軍たち……。
駄菓子菓子!
ここからヤマハ開発陣は驚きの粘り腰を発揮していくのです……。
というわけで次回は1200版「VMAX」の終焉までをお伝えする予定です!
【おまけ】打倒“魔神”!を目指したホンダの最終ウエポン「X4」登場!
あ、というわけで実に40年も前から誠実に「VMAX」を販売してきたレッドバロンでは、逆輸入車と国内仕様の豊富な中古車両だけでなくマフラーを中心としたカスタムパーツも多数在庫しております! 車両購入時にセレクトして納車時までに装着してもらうことも可能! まずはお近くの店舗で相談してみてくださいね~(^^ゞ
VMAXという孤高の“魔神”【その5】は今しばらくお待ちください m(_ _)m