スズキがイタリアのサルディーニャ島で開催した「Vストローム800DE WORLDWIDE PRESS TEST RIDE」に参加してきた模様を4回に渡ってレポートしており、今回はその第3回目。前回はオンロード性能を紹介しましたが、今回はオフロードセクションのインプレッションをお届け!
<主要諸元(海外仕様)> ■全長2345 全幅975 全高1310 軸距1570 シート高855(各㎜) 車重230㎏(装備)■水冷4ストDOHC並列2気筒 776cc 84ps/8500rpm 7.9kg-m/6800rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20ℓ(ハイオク) ブレーキF=ダブルディスク R=ディスク タイヤサイズF=90/90-21 R=150/70R17
※2023年3月17日、大阪モーターサイクルショーのプレスカンファレンスにて、Vストローム800DEの日本モデルの発売日&価格が発表されました! 発売日は3月24日で価格はなんと税込132万円! ヤマハのテネレ700の2023モデルが134万2000円であることを考えるとかなりお買い得です! ちなみに国内モデルの主要諸元は、
<主要諸元(国内モデル)> ■全長2345 全幅975 全高1310 軸距1570 シート高855(各㎜) 車重230㎏(装備)■水冷4ストDOHC並列2気筒 776cc 82ps/8500rpm 7.7kg-m/6800rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20ℓ(ハイオク) ブレーキF=ダブルディスク R=ディスク タイヤサイズF=90/90-21 R=150/70R17
で、抜粋した数値の中では最高出力と最大トルクの数値だけが若干異なっています。
オフロード走行のための21インチホイール採用
Vストローム800DEの“DE”とは、デュアル・エクスプローラーの略であり、その意味は舗装路も未舗装路も両方(Dual)探索できる冒険者(Explorer)ということ。
2023年3月上旬現在、この“DE”を冠するモデルにはVストローム1050DEと、Vストローム800DEの2機種があり、両車ともフロント21インチの走破性の高い大径ホイール&長めのサスペンションストロークを採用している。つまりVストロームシリーズの中でもオフロード性能が高いモデルにこの“DE”の名前が与えられる。前回はデュアル・エクスプローラーたる“舗装路”での走行性能に焦点を当てたが、今回はオフロード性能をみていこう。
新設計パラレルツイン採用はダート走破性アップのため!?
今回のイタリアでの試乗会は2日間に渡って行われたが、これでもかというほどダートセクションを走りまくった。アップダウンの激しい山間部にサンド質の海岸セクション。路面状況もザリザリに砂利が浮くような手強い路面から、ワダチができるような急斜面まで、ありとあらゆるダート路面を100㎞以上に渡ってテストしたのだ。
まず気に入ったのは車体構成だ。オフロード性能アップのためにフロント21インチサイズホイールを採用したVストローム800DEだが、同時にエンジンも新設計で起こしている。
兄弟モデルでロードスポーツモデルのGSX-8Sと共用のパラレルツインエンジンではあるものの、GSX-8Sとはセッティングが違い、スロットルの開けはじめから、“ガッ”とトルクを発揮するようなオフロード走行向きの特性にリファインして差別化したそうだ。
またこの新設計の776ccのパラレルツインエンジンに関してはさらに一工夫。特許を取得した“スズキクロスバランサー”によってエンジンそのものの前後長を短縮したのだ。これにより21インチのフロントタイヤをより車体側へと引き寄せることに成功。オフロード走行に最適な荷重配分を作り上げたというわけだ。
VストロームがなぜV型エンジンじゃないの? なんて疑問に思う方もいるかもしれないが、Vストローム800DEがパラレルツインエンジンを採用したのは、ずばりダートでの走行性能を上げるためである。実際、走ってみてもこの前後タイヤにかかる荷重配分が秀逸で、滑りやすい路面を走ってもフロントタイヤが路面をしっかり捉え続ける。おかげでとても安心してダート路面を走ることができるのだ。
新規軸の“Gモード”でパワースライドがより身近に!
最近流行りの大型アドベンチャーモデルにはスロットルの開けすぎなどでリヤタイヤが空転、あるいはスリップを起こした際に自動的にエンジン出力を抑えてスリップダウンを防ぐ電子制御システム=トラクションコントロールが搭載されている。
滑りやすい未舗装路において、重量車はとにかくスロットルの開けすぎによるリヤタイヤの空転が怖いものだ。この空転を防ぐためVストローム800DEには1~3の介入度のトラクションコントロールを用意。……と、ここまでは既存のVストローム650/1050とあまり変わらないのだが、Vストローム800DEには、新規軸となる“Gモード”というトラクションコントロール制御が追加されることになった。
“G”とはグラベル(未舗装路)のこと。つまり未舗装路を走るための特別なトラクションコントロールのモードというわけだが、この“Gモード”がなかなか興味深い制御を行うのだ。
オフロード走行におけるトラクションコントロールシステムは、重量級のアドベンチャーモデルにとって双刃の剣だ。というのもスロットルの開けすぎによるリヤタイヤが空転は怖くもあるが、走り慣れて技術が身についてくるとこのトラクションコントロールの介入が煩わしく感じることもある。
それにアドベンチャーバイクに乗ったのなら、誰もが一度はスライドコントロールに憧れるもの。だが乗るのは200kg超えの大型アドベンチャーバイクである。トラクションコントロールのシステムを完全にオフにして、パワースライドに挑戦するにはなかなか度胸がいることだ。
そんなジレンマを解決すべく登場したのが、この“Gモード”というわけである。他の1~3のトラクションコントロール設定が、途中でエンジン出力を完全にカットしてしまうのに対し、この“Gモード”では点火タイミングをコントロールすることでエンジンパワーを抑えながらも完全には出力をカットしない。スリップ具合を緩やかにしてライダーが余裕を持ってコントロールできるような制御を行ってくれる。
実際、この“Gモード”を使って未舗装路を走ってみると非常に走りやすく感じるのだ。コーナーでスロットルを開けた際にいきなり空転が始まるのではなく、スライドを起こしながらも穏やかな過渡特性でパワーが盛り上がっていく。おかげでパワースライドをコントロールしやすいと感じるのだ。
アドベンチャーバイクのオーナーとなったならば一度は憧れるスライドコントロールであるが、Vストローム800DEの“Gモード”を使えば転倒の可能性が非常に少なくパワースライドを体感でき、同時にスライド時のマシンコントロールをより安全な状態で身につけることができるというわけだ。
このVストローム800DEに近いキャラクターを持つライバルは、ヤマハのテネレ700やBMWのF850GSあたりになりそうだが、それらのモデルとの決定的な違いはやはりこの“Gモード”の存在にある。
トラクションコントロールに頼って安全に走るか? それともシステムをオフにしてトラクションコントロールに頼らずリスク覚悟で楽しむか? そんな究極の2択しかなかったアドベンチャーバイクの世界に、スズキはトラクションコントロールを使いながらもテールスライドを楽しむ、“Gモード”という新しい価値観を持ち込んだのだ。
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