バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉なんだけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの? そのメリットは!?」なんて今更聞けないし…。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は車体で唯一地面と接しているタイヤのお話、『ラジアルタイヤ』だ。

BATTLAX ADVENTURE TRAIL AT41

パワーのある大排気量車や速いバイクに使われる『ラジアルタイヤ』。いったいなにがすごいの? 写真は2022年2月発売予定のブリヂストンの新型アドベンチャーツアラー用タイヤ・BATTLAX ADVENTURE TRAIL AT41。リヤタイヤは全てラジアル設定で、フロントタイヤに関しては21インチサイズだけバイアス設定がある。

 

そもそも『ラジアルタイヤ』とは?

ラジアルとは、タイヤの構造・仕組みを表す言葉で、カーカスと呼ばれるタイヤの骨格となるパーツがラジアル構造になっている。だからラジアルタイヤ…うーん、まだ難しいねぇ。もう少し詳しく説明すると、ラジアルとは、英語のradialで、意味は“放射状”。バイクのパーツには、この“ラジアル”という言葉がつくパーツがいくつもあるけど、“何かが放射状、もしくは放射方向に取り付けられている”と思っておけば間違いない。

では、タイヤのラジアルに取り付けられたパーツとはなんぞや? 実はタイヤは単なるゴムの塊ではなく、強度を高めるためにカーカスと呼ばれる繊維状の骨組みが内部に仕込まれている。例えるなら鉄筋コンクリートの鉄筋のような役割であり、このカーカスがあるおかげで本来柔らかいはずのゴムでできたタイヤは、潰れた風船のようにグンニャリと変形することがない。何百キロもあるバイクをタイヤが支えられるのは、この内部のカーカスのおかげなのだ。

ラジアルタイヤとはつまり、この内部の骨組みとなるカーカスがラジアル方向、車輪軸を中心として放射状に組まれたタイヤをいう。

ラジアルタイヤ

ラジアルタイヤの内部構造図。カーカスと呼ばれる繊維状のパーツが車輪軸に対して放射方向に並んでいる。

 

バイアスタイヤ

ラジアルじゃない、一般的なタイヤは“バイアス”タイヤと呼ばれ、内部のカーカスの繊維配列方向がラジアルとは違うのがわかるだろう。この繊維の並び方向がタイヤの構造においては重要なのだ。

 

ラジアルタイヤのなにがスゴイの!?

「ラジアルタイヤを採用しなきゃならないほどハイパワー、もしくは大きく重たいバイク」

…ってことだ。バイクは速度の高いハイパワーなバイクほどコーナリングではタイヤを押し潰そうとする力が増える。またバイクそのものが重たければ、その重さやブレーキング時の荷重に耐える頑丈なタイヤが必要になる。ラジアルタイヤはカーカスの繊維方向が放射状に並んでいることで重さや応力がかかった場合にもタイヤがグニャリと変形することがバイアスタイヤに比べて少ない。つまりラジアルタイヤが必要なバイクは、コーナーで力がかかるハイパワーマシン、重量級の大型車両。逆説的に、“ラジアルタイヤを履いているバイクはそれだけハイパワーで重量級。どうだすごいだろ?”ってことが成り立つワケ。

一方、バイアスタイヤは、“bias(斜線/ゆがみ)”と呼ばれるくらいだからよく変形してショックをよく吸収するような構造になっている。ここでこのラジアルとバイアスの構造違いををわかりやすく縦横に編まれた布地で説明してみよう。布を繊維方向、つまりは縦もしくは横方向に引っ張っても、糸そのものに伸縮性がなければそれほど生地が伸びることはない。これがいわゆるラジアルタイヤの構造。この特性を使って車輪軸の放射方向にカーカスを配列することでタイヤそのものの剛性を上げて変形しにくくしている。

ラジアルタイヤの構造のイメージ

布地を織られた繊維方向に沿って、横方向に引っ張っても伸びない。

 

ラジアルタイヤの構造のイメージ

同じように布地を縦方向に引っ張っても伸びない。

 

一方、同じ生地を斜め45度方向、つまり斜線(bias)方向に引っ張ると、糸そのものに伸縮性がなくても生地はよく伸びる。この性質を利用して作られるタイヤがバイアスタイヤだ。歴史的には“ショック吸収力=乗り心地”を求めたバイアスタイヤの方が古く、“高強度=高スピードレンジ”に対応するラジアルタイヤはより近代的な構造だ。

バイアスタイヤの構造のイメージ

繊維の斜め方向に布地を引っ張ると織物はよく伸びる。これがバイアスタイヤの構造のイメージ。バイアスタイヤは変形することでショックをよく吸収するため乗り心地がいい。

 

ちなみに変形しにくいラジアルタイヤと、変形しやすいバイアスタイヤ、それぞれ性質が違うだけでそこに本来性能の優劣はない。確かにハイパワーなバイクや重たいバイクなど、高級車には頑丈なラジアルタイヤが採用され、またあえて頑丈にしたりスポーツ性を高めるためにグリップのいいゴムを使ったりするので単価も高いということは言える。ただ、バイアスタイヤが悪いかというと決してそういうワケじゃない。バイアスタイヤがよく変形するということは、それだけクッション性に優れているということ。このためバイアスタイヤはタイヤに荷重がかかりにくい軽いバイクに使われるほか乗り心地重視だったり、オフロードバイクなど積極的にタイヤを変形させて衝撃を吸収したい場合などに採用される。

つまりタイヤにより強度が求められる場合にはラジアルを、逆によく変形させたい場合にはバイアスタイヤが適材適所に採用されるだけなのだ。なので最近流行りのアドベンチャーバイクなどは後輪だけにラジアルタイヤを採用していたりする。これはオフロード特性のためにタイヤのクッション性は欲しいのでフロントタイヤはバイアス。一方、大きな負荷のかかるリヤタイヤは、バイアスタイヤでは耐えられないのでラジアルタイヤにするという折衷案。それにビジネス系のバイクの中にも、リヤタイヤだけラジアルタイヤを採用する場合がある。この場合は決して高いスポーツ性が欲しい訳ではなく、二人乗りや荷物をたくさん積んだ場合の負荷を想定して、リヤタイヤだけ強度の高いラジアルタイヤを採用する。

『ラジアル』と『バイアス』タイヤの見分け方

ラジアルタイヤ

ラジアルタイヤには“R”と書かれている。タイヤサイズの130/70R18のうち、70の後ろの“R”がラジアルを表す記号だ。写真はホンダ ゴールドウイングのフロントタイヤ。

 

ちなみにラジアルタイヤの見分け方はとても簡単! タイヤの横に書かれているタイヤサイズを表す数字の列に“R”が入っていたら、そのタイヤはラジアルタイヤだ。またそれ以外にも小さい文字で“RADIAL”と書かれていることもある。つまり、友達のバイクを見た時にすかさずタイヤサイズをチェックして「ふーん、このバイクはラジアルタイヤ履いてんだな」なんて言っておけば、なんとな〜くバイクがわかっているような雰囲気が醸し出せるぞ(笑)

 

 

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