ライディングカレッジの体験記もいよいよ大詰め。フロント荷重のコーナリング練習に続き、ライン取りと本格的なフルコース走行でフィニッシュだ。

  ブレーキングの力をコーナリングに利用する

 前回記事では、完全停止するブレーキングを学んだ。先ほどまで練習をしていたホームストレートから、今度は止まらずにコーナリングに入る。ブレーキングの感覚をそのまま活して次のステップに進めるのだ。そんなよくできたカリキュラムに思わず感心。

 具体的には、速度が乗るホームストレートで80km/hまで速度を上げ、第1コーナーへフロントブレーキ(以下Fブレーキ)を残して旋回に入る。

↑ホームストレートで停止の練習をした後、コーナリングにつなげる練習を行う。青がコーナリングを始めるアプローチポイント。赤が最もインに寄るクリッピングポイントだ。

 

このようにフロントフォーク(以下Fフォーク)を縮めた状態を維持しつつコーナリングするテクニックは、スポーティに走る上でとても重要だ。

メリットは主に3つある。

まず1つは、前輪荷重を高められる。消しゴムを強く押しつけると滑りにくいように、路面に前輪を強く押しつけられるため、倒し込み~旋回中に高いグリップ力を引き出せるのだ。

↑消しゴムは力を入れないと抵抗が少なく滑るが、ギュッと押し付けると摩擦が増えて滑りにくくなる。タイヤも同様だ。

 

さらに、減速と旋回が一体になっているためムダがない。これを別々に行うと、縮んだFフォークが伸びた状態でバンクに入ることになり、再びサスが縮む時間が必要になったり、ギクシャクする原因になる。

加えて、Fフォークを縮めることで、バイクのキャスター角が小さくなり、トレール量が減少。トレール量が減ると横方向への動き(ロール)に対して、ステアリングが素早く反応する。曲がる際、フロントがスパッと向きを変えるようになるのだ。

↑左が通常の状態。右がFブレーキでFフォークが縮んだ状態だ。このようにFフォークが縮むとキャスターが立ち、トレール量が減少。このままコーナリングに入ると高い旋回性を発揮できる。


フロント荷重は多くのメリットがあるものの、タイヤが減っていたり、滑りやすい路面だと転倒のリスクが高まることを覚えておきたい。

 ここで片平亮輔インストラクターが一言。
「バイクで一番難しいのがブレーキング。皆さんの最大の課題だと思います。ブレーキングができればコーナーが上手く曲がれるようになります。
練習ではFブレーキでいかに前輪を路面に押し付けられるかを意識してください。ただ押し付けるのではなく、グリップを引き出して曲がることを意識するのが大事です」

  ブレーキレバーの開放具合とバンク角を「連動」させる!

 具体的なやり方は次のとおり。過去記事「教習所じゃ教えてくれない、中上級者はみんな使ってるワザを学びたくないか?」のおさらいとなるが、改めて掲載しよう。

↑コーナー進入前の直線でブレーキング。バンクを開始すると同時に、Fブレーキのレバーをじわりと緩める。

 

↑Fブレーキを引きずり、サスが縮んだ状態のまま旋回につなげる。バンク角を深めるにつれ、レバーの握りも弱めていく。


↑バンク角が最大になった状態で、完全にレバーをリリース。バンク角とFブレーキレバーの開放具合がシンクロしているイメージだ。

 

↑午後の座学で提示されたパネル。Fブレーキを弱めながらバンク角を増やし、最もインにつくクリッピングポイントで、Fブレーキを開放。同時にバンク角が最大になるイメージだ。

 

  朝から練習してきた「操作と動作の連動」の一環であり、フロント荷重を活かしたコーナリングの集大成。練習にも気合いが入るというものだ。

パイロンで示されたブレーキングとクリッピングのポイントを目印に、1コーナーを繰り返し走る。やがて、なかなかいいカンジで曲がれて「楽しい~!」とアドレナリンが出てきた。

 走りを見ていた片平亮輔インストラクターからも「いいカンジですよ」とお墨付きが! 

参加者を見ていた山本インストラクターからはこんなアドバイスも。
「ブレーキングで下半身に力が入っていない人が多いです。そのため、体が前に行くのを手で受け止めてハンドルを押している。それではバイクが曲がりません。下半身のホールドを思い出してください。腕をリラックスさせてブレーキの操作に集中しましょう」

また、1コーナーは右コーナーだが、ハンドル右側を手で押している人がいるとの指摘も。
「右コーナーを苦手な人が多いのは、ブレーキングの最中に右手でハンドルを押して身体を支えてしまうから。反対に左コーナーは右手でハンドルを押すことがないので得意な人が多いのです」

なるほど。気を抜くと確かに右コーナーが曲がりにくい気がするのは、そのせいだったのか、と目からウロコがゴッソリ落ちた気が!

講習も大詰め、満腹になるまでフルコースをたっぷり堪能

続いての練習は「ライン取り&フォーム」。S字などタイトな切り返しが続く第2~5コーナーに移動し、インストラクターのデモ走行が披露された。
・・・・・・リーンウィズながら速い! リーンウィズを極めればここまで速く走れるのかと改めて感心した。

↑森の中にある第2~5コーナーでのデモラン。講師はリーンウィズながら抜群に速く、華麗に駆け抜けていく。


ここでライン取りについて学習。切り返しの次にある第5コーナーへの入り方を学んだ。

第5コーナーは先が見通しにくいブラインドになっている。第4コーナーからインベタで曲がったり、早めにインについてしまうと出口でアウトに膨らみ、続く直線で加速体勢に入れない。
一方、第4コーナーをアウト側から立ち上がり、少し奥にクリッピングポイントを取る「大きく入って小さく曲がる」ラインを描けば、次の直線ですぐスロットルを大きく開けることが可能だ。

↑悪い例。クリッピングポイント(丸印)を手前に取り、5コーナーでアウト側に膨らんでしまった。

 

↑良い例。手前の4コーナーをアウト側から立ち上がり、クリッピング(丸印)を奥に取った。おかげで次の直線でスロットルを大きく開けていける。

 

これは峠道におけるブラインドコーナーの走りにも通じる。峠ではサーキットほどの道幅は当然ないものの、先が見えないのに早くインにつきすぎてしまうと危険なだけでなく、次の動作が遅れ、スポーティに走れないというわけだ。

↑コースの半分を使って重点的に第2~5コーナーのラインを学んだ。


続いてはピットエリアの裏手にあるヘアピンに移動。過去記事「安全で速いのは直線的に立ち上がるライン!【ライテクUP講座3】」でレクチャーされたライン取りを実践した。

そして15時過ぎから、いよいよフルコース走行だ。
「これまでのレッスンを思い出しながら走って欲しい。ただ漫然と走るのではなく、考えながら走ってください」と中井講師。

 各コーナーにはアプローチを始めるポイントの目印として青パイロン、クリッピングポイントとして倒された赤パイロンが置かれている。パイロンのとおりに走れば自然と理想的なラインを描けるのだ。タイムを削るためには、「この位置を覚えるのが早道!」と思い、必死に記憶しながら走る(笑)。

↑フルコースを走りまくり。午後からは曇り気味だったが、幸いにも雨は降らなかった。


さらに、インストラクターの先導走行も参考になると思い、ラインを盗もうとガン見しながら(ストーカー?)、走る。

なお、スキルに応じてグループ分けするので、速く走れないライダーも安心。ちなみに走行ペースは1周あたり110秒程度で、自分としては遅すぎず速すぎず、ちょうどいいカンジだった。

最後には目印だったパイロンも撤去され、自分でアプローチ&クリッピングポイントを確認しながら総復習した。
筆者はスクールで走った経験がある上に、タイムアップを目的としていたため、各ポイントをかなり覚えていた。それでも、明確にポイントが示されているのと、ポイントがないのとでは走りやすさに大きな違いがある。

 フルコース走行の時間はライディングスクールより長く取られており、午後の部だけで2回の休憩を混ぜながら合計30分以上(20周程度)走っただろう。普段なかなか走れないサーキットをたっぷり走り込めるのがいい(タイム計測というミッションを抱えている自分にとっても好都合、フフフ)。

こうして16時になり、カレッジのカリキュラムは終了した。次回、いよいよテーマの一つであるタイム計測に。ついに完結編だ!

●ライディングカレッジ編のおさらいはコチラ

ライディングカレッジを受講すると本当に速くなる? タイム計測で実証!【ライテクUP講座5】

ヒザすりの前に「リーンウィズの可能性」を引き出せ!【ライテクUP講座6 カレッジ編】

【動画解説あり】フロント荷重でスルッと曲がれ【ライテクUP講座7 カレッジ編】

●ライディングスクール編で基礎を学びたい人はコチラ

 全ての基礎、ライポジは直立→ジワジワで作れ!【ライテクUP 講座1】

大きく入って小さく回る。これぞ走りの極意!【ライテクUP講座 2】

安全で速いのは直線的に立ち上がるライン!【ライテクUP講座3】

長くバイクを楽しむために。己を知って上達しよう!【ライテクUP講座4】

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