既存のホンダ・CRF250LCRF250ラリーだけでなく、2024年末にはカワサキからKLX230KLX230シェルパが登場し、スズキからも久々の400ccクラストレールのDR-Z4Sが発表されるなど、最近勢いづいているバイクのジャンルがオフロードだ。ただこのオフロードバイク、いざ始めようとするとちょっとばかり特殊でエントリーユーザーにはわかりにくいことも多い。そこでオフロードバイク遊びをするためのハウツーを毎回少しずつ紹介していこうというのが本企画の趣旨。今回は車体のお話で、“なぜオフロードバイクのシートは高いのか?”を深掘りしてみよう。

オフロードバイクのシートを足が届かないほど高くするのはなぜ!?

GASGASのエンデューロマシンEC300(2018モデル)を走らせる筆者の谷田貝 洋暁。暴れるバイクを押さえ込んで走るオフロード走行ではシートの高さが重要になる!?

跳ねたり、滑ったり、暴れるマシンを押さえ込んで走るオフロードではシートが高いことで有利なことがたくさんある。……ただ、このロケの時は調子に乗りすぎてハイサイドをくらった(笑)。

 

オフロードバイクに乗ろうと思った時、誰もが気になるのがそのシートの高さだろう。フロント21インチフルサイズのモトクロッサーなら1メートルを超すモデルはさすがにないものの、950~980㎜くらいあるのは当たり前。公道用が走れて二人乗りも可能なトレールモデルでも900㎜前後。実例を出せばカワサキのKLX230で880㎜、スズキが発表したばかりのDR-Z4Sなどは920㎜(海外仕様)という強気のシート高が設定されていたりする。

オフロードバイクの車体はスリムでサスペンションもソフトな設定のため、実際に跨ってみると数値ほどの高さは感じないものの、それでもオフロードバイクのシートが高いことに変わりない。では、いったいなぜそこまでシートを高くする必要があるのだろうか? 

  • ①障害物を乗り越える際にエンジンで支えないために大きな最低地上高を確保するため
  • ②ロードバイクよりもはるかに大きなサスペンションストロークを確保するため

一般的によく言われるのはこのあたりの理由だ。

大きなサスペンションストロークと最低地上高の確保だけが高いシートの理由じゃない!?

「大きなサスペンションストローク」と「最低地上高の確保」だけでは、オフロードバイクのシートがここまで高い理由にならない!? ちなみにシート高895㎜のWR250Rの場合、サスペンションストローク量はフロントが270.0㎜でリヤが95.0㎜。最低地上高は300㎜となっている。

 

もちろんこの二つも重要な要素ではあるのだが、それだけでは説明できないくらいオフロードバイクのシートは高い。それに①と②の要素だけでいいならトライアルバイクのように跨り部分である鞍部を下げたっていい。ただトライアルバイクの場合、“スタンディングでしか乗る必要がない”のでそもそもシートがなく、鞍部はより大きなボディアクションができるよう抉られている。トライアルバイクは座らずにスタンディングだけで操ることに特化したバイクだからこそ鞍部が低いというわけだ。

実はここにヒントがある。つまりトライアルバイクは座らなくていいから鞍部が低くて、オフロードバイクは座る必要があるから足着きで困るほど鞍部を高くする必要がある。……やれやれ、なにかのナゾナゾか村上春樹みたいな言い回しになってしまうが、オフロードバイクのシートが高いのは……

  • ③シッティングのライディングポジションでマシンをコントロールしやすくするため

……つまりはそういうことなのだ。

シッティングポジションで暴れる車体を押さえ込んだり、テールスライドをコントロール場合にはシートが高い方が荷重がかけやすくコントロール性が上がるのだ。写真はKTMのエンデューロマシン250EXCTPI(2018モデル)を走らせる筆者の谷田貝 洋暁。

シッティングポジションで暴れる車体を抑え込んだり、テールスライドをコントロールするような場合にもシートが高い方が荷重の加減がしやすくコントロール性が上がる。写真はKTMのエンデューロモデル(2018モデル)を走らせる筆者。

 

滑りやすい場所を走り、ギャップや岩などでマシンが振られることも多いオフロード走行では、ライダーの体重をフルに使って暴れるマシンを抑え込む。そんな場合には、シートが高く荷重の入力点が高い方がより少ない力(荷重)でマシンが抑え込めるようになるというわけ。

オフロードバイクのシートが高いのは、言ってしまえばハンドル幅が大きいのと同じ理由からだ。シートが高いとテコの原理がより効き、上半身の荷重移動でマシンを抑え込むような場合も、より少ないボディアクションで済むというわけ。写真はGASGASのエンデューロマシンEC300(2018モデル)を走らせる筆者の谷田貝 洋暁。

オフロードバイクのシートが高いのは言ってしまえばハンドル幅が大きいのと同じ理由で、テコの原理をより効果的に使いたいからだ。シートを高くすることで“力点”が離れれば、テコの原理がよく効く。頭や上半身の荷重移動でマシンを抑え込むような場合も、より少ないボディアクションで済む。写真はGASGASのエンデューロマシンEC300(2018モデル)を走らせる筆者。

 

ただでさえ足つきの悪いオフロードバイクのシートをさらに高めるハイシートって一体どういうこと!?

オフロードバイクのカスタムパーツには、初心者には皆目理解不能なハイシートなんてモノも存在する。ただでさえ高くて足着き性の悪いオフロードバイクのシートをさらに高くするというアイテムだ。

でもね、このハイシートにもちゃんとした意味がある。シートを高くすればより足着き性は悪くなるものの、やはり荷重の入力点(力点)が高くなってマシンはより抑え込みやすくなるというわけ。なにもレーシーな見た目やシートが厚くなってツーリング時の快適性がアップするだけでなく、ハイシートはオフロードバイクとしてのコントロール性を上げることが主目的というワケだ。

シート高895mmのWR250Rにさらに約30㎜アップのハイシートを取り付けている。苦労は多いがオフロードでのコントロール性は大幅にアップする。筆者(谷田貝 洋暁)の身長は身長172cm/体重75kg。

シート高895mmのWR250Rにさらに約30㎜アップのハイシートを取り付けている筆者。苦労は多いがハイシートのおかげでオフロードでのコントロール性は大幅にアップする。筆者(谷田貝 洋暁)の身長は172cmで体重75kg。

 

筆者のWR250Rには、さらに30mmほどシート高をアップして930mmぐらいにするハイシートを導入してもう15年以上になる。確かに足着き性は悪くなり、両足で支えようとするとつま先がかろうじてアスファルトに届くくらいの“路上のバレリーナ状態”になってしまうのだが、シッティングポジションでのコントロール性は大幅アップ。左右方向の抑え込みがしやすくなるのはもちろん、前後方向へのシッティングポジションの移動がしやすくなり、前輪・後輪への荷重コントロールもしやすくなる。これらハイシートによるダートセクションでのメリットを体感してしまうと手放せなくなってしまった。

オフロードバイクであるにも関わらず“二輪二足”による走破性を求め、830㎜とオフロードバイクとしてはかなりシートが低く設定されたヤマハのセロー250。膝の曲がりに窮屈さを感じているライダーはハイシートを試してみると、膝の曲がりが楽になりシートクッションも増えて快適性もアップ。しかも、シッティングポジションでのオフロード走行が格段にしやすくなるぞ!

オフロードバイクであるにも関わらず“二輪二足”による走破性を求め、830㎜とオフロードバイクとしてはかなりシートが低く設定されたヤマハのセロー250。膝の曲がりに窮屈さを感じているライダーはハイシートを試してみると、膝の曲がりが楽になりシートクッション厚も増えて快適性がアップ。しかも、シッティングポジションでの車体のコントロール性が増し、ハンドルも抑え込みやすくなるなどオフロード走行が格段にしやすくなるぞ!

 

 

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