バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は、オフロードバイクやクラシカルなモデルの車体に使われる『スポークホイール』だ。

そもそも『スポークホイール』とは?

CRF250L

針金を交互に編んだような構造をしている『スポークホイール』。張り巡らせたワイヤースポークの張力でハブを固定しており、ホイール側のスポークニップルを回すと張り具合を変えられる。写真はCRF250Lのフロントホイール。

 

正式には、ワイヤー・スポーク・ホイールで、読んで字のごとく、ワイヤースポークで組まれたホイールということだ。現行のラインナップでは、カワサキのW800などのクラシカルなモデルや、オフロードバイクなどで採用。また最近流行りのアドベンチャーモデルでは、よりオフロードの走破性を高めるオプションとして、スポークホイールが設定されていることもある。

W800

クラシカルなスタイリングのカワサキ・W800シリーズはスポークをホイールを採用する。

 

さてこの『スポークホイール』。他のホイールよりもすごいのか? と言われるとそういう訳ではない。むしろ、実はホイールの歴史からすると鋳物のキャストホイールやアルミ削り出しの切削ホイールよりも歴史が古い、つまりは旧式だ。また重量に関しても、なんとなくその見た目から『スポークホイール』は軽く見えるが、実は逆でキャストホイールよりも重たかったりする。

ハイスピードレンジのスポーツ走行を行うようなロードスポーツモデルはこの『スポークホイール』の重さを嫌い、キャストホイールやさらに軽量な切削ホイールを採用するのが慣例となっている。W800などのクラシカルなモデルが好んで採用するのは、『スポークホイール』の“古臭いイメージ”を重視してのことだ。

NT1100

ロードスポーツモデルの多く用いられるキャストホイール。一体成形のためしなりによる衝撃吸収性が少ないがそのぶん軽く作ることができる。写真はホンダのNT1100。

 

GSX-R1000R

キャストホイールに似ているが、製法が鋳造(ダイキャスト)ではなく、アルミ削り出した切削ホイール。鍛造という金属を強くする製法を用いるため、より部材を薄くすることが可能でキャストホイールよりもさらに軽量なホイールとなる。写真はGSX-R1000R。

 

『スポークホイール』のここがスゴイ!

キャストホイールよりも衝撃吸収性に優れる

『スポークホイール』が重たく剛性的にも劣っているなら使わなければいいじゃない? と思うかもしれないが『スポークホイール』ならではの特性もある。それは衝撃吸収性。オフロードモデルやアドベンチャーモデルが好んで『スポークホイール』を採用するのは、高剛性とは真逆の性能である高いクッション性を求めてのことだ。

CRF250L&RALLY

オフロードモデルの多くは、そのクッション性の高さを求めて『スポークホイール』を採用する。写真左はCRF250ラリーで右がCRF250L。

 

ジャンプやギャップ通過など、路面からのショックを受ける機会が多く、その負荷も大きいオフロード走行。もちろん、サスペンションも衝撃吸収に大きく貢献しているものの、「それでも足りない! 使えるものはなんでも使いたい!」……ということで、オフロードモデルの足回りにはより衝撃吸収性に優れる『スポークホイール』が用いられ、タイヤもより柔らかく衝撃吸収性に優れるバイアスタイヤが採用される。つまり、スポークホイールもバイアスタイヤもサスペンションの一部というわけである。


実際の使用感としても、『スポークホイール』とキャストホイールでかなり乗り味が違う。例えばスズキのアドベンチャーモデル・Vストローム650シリーズには、ほぼ同じ車体構成でホイールの種類が違う、キャストホイールのVストローム650と、『スポークホイール』のVストローム650XTが存在する。

『スポークホイール』のVストローム650XT

 

Vストローム650

キャストホイールのVストローム650。

 

以前、この2台を同条件で街乗り、高速道路、ダートと乗り比べたことがあるが、車体のフィーリングが全く異なっていることに驚かされた。まずワインディングでは、キャストホイールの方が車体の動きがクイックでスポーティなハンドリングに感じるのだ。

高速道路も同じで、クイックなキャストホイールの乗り味に対し、『スポークホイール』は若干直進安定性が強めで、車線変更などを行う場合には、『スポークホイール』のしなりからくる重さを感じる。スポーティなクイックなハンドリングのマシンが欲しいならキャストホイールの方がいい。またゆったりクルージングするのに向く、安定感のある乗り味が好きなら『スポークホイール』を選んだ方がいいかもしれない。

そしてオフロードセクション。まず第一に『スポークホイール』のほうが、岩などの凹凸からくる衝撃の伝わり方がソフトで快適。また、滑りやすい路面では『スポークホイール』の方がより踏ん張るように感じる。とくに横方向の力がかかるコーナリングなどではその効果がかなり顕著。キャストホイールでは横滑りを起こしそうでアクセルを開けられないような場面でも、よく踏ん張る『スポークホイール』なら、グリップが感じられるから安心感がありアクセルが開けやすい。総じて『スポークホイール』のほうがダートでは走りやすく、より速く走れるというわけである。

V-Strom650XT

スポークホイールの難点は、構造による重さと、クリアランスの問題でブレーキキャリパーが大型化しにくいこと。写真はVストローム650XT。

 

V-Strom650XT

スポークホイールというと、構造的にチューブタイヤとなる場合が多いが、最近ではスポークの取り付け方を工夫してチューブレス化するモデルも増えている。写真はスズキのVストローム650XT。

 

 

【関連記事】 バイクのソレ、なにがスゴイの!? シリーズ

エンジン系水冷DOHCハイオク4バルブ可変バルブダウンドラフト吸気ユニカムデスモドロミック過給システムラムエアターボスーパーチャージャーアシストスリッパークラッチ油冷エンジン

車体系ラジアルタイヤアルミフレームダブルディスクラジアルマウントキャリパーラジアルポンプマスターシリンダースポークホイール倒立フォークモノショックリンク式サスペンションチューブレスタイヤシールチェーンシャフトドライブプリロード調整減衰力調整機構その①減衰力調整機構その②

電子制御フューエルインジェクションIMUABSコーナリングABS電子制御スロットルクルーズコントロールアダプティブクルーズコントロール(ACC)ブラインドスポットディテクション(BSD)クイックシフターコーナリングライトエマージェンシーストップシグナルCAN/コントロールエリアネットワークヒルホールドコントロールシステムトラクションコントロール その①黎明期トラクションコントロール その②FI連動トラクションコントロール その③バタフライバルブ連動トラクションコントロール その④ IMU連動モータースリップレギュレーション(MSR)ウイリーコントロールローンチコントロール電子制御サスペンション その①黎明期電子制御サスペンション その②セミアクティブサスペンション電子制御サスペンション その3 スカイフック&ジャンプ制御etc

電装系LEDDRLMFバッテリーリチウムバッテリーイモビライザースマートキーオートキャンセルウインカー

素材透湿防水素材

SHARE IT!

この記事の執筆者

この記事に関連する記事