バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は、オフロードバイクやクラシカルなモデルの車体に使われる『スポークホイール』だ。
そもそも『スポークホイール』とは?
正式には、ワイヤー・スポーク・ホイールで、読んで字のごとく、ワイヤースポークで組まれたホイールということだ。現行のラインナップでは、カワサキのW800などのクラシカルなモデルや、オフロードバイクなどで採用。また最近流行りのアドベンチャーモデルでは、よりオフロードの走破性を高めるオプションとして、スポークホイールが設定されていることもある。
さてこの『スポークホイール』。他のホイールよりもすごいのか? と言われるとそういう訳ではない。むしろ、実はホイールの歴史からすると鋳物のキャストホイールやアルミ削り出しの切削ホイールよりも歴史が古い、つまりは旧式だ。また重量に関しても、なんとなくその見た目から『スポークホイール』は軽く見えるが、実は逆でキャストホイールよりも重たかったりする。
ハイスピードレンジのスポーツ走行を行うようなロードスポーツモデルはこの『スポークホイール』の重さを嫌い、キャストホイールやさらに軽量な切削ホイールを採用するのが慣例となっている。W800などのクラシカルなモデルが好んで採用するのは、『スポークホイール』の“古臭いイメージ”を重視してのことだ。
『スポークホイール』のここがスゴイ!
キャストホイールよりも衝撃吸収性に優れる
『スポークホイール』が重たく剛性的にも劣っているなら使わなければいいじゃない? と思うかもしれないが『スポークホイール』ならではの特性もある。それは衝撃吸収性。オフロードモデルやアドベンチャーモデルが好んで『スポークホイール』を採用するのは、高剛性とは真逆の性能である高いクッション性を求めてのことだ。
ジャンプやギャップ通過など、路面からのショックを受ける機会が多く、その負荷も大きいオフロード走行。もちろん、サスペンションも衝撃吸収に大きく貢献しているものの、「それでも足りない! 使えるものはなんでも使いたい!」……ということで、オフロードモデルの足回りにはより衝撃吸収性に優れる『スポークホイール』が用いられ、タイヤもより柔らかく衝撃吸収性に優れるバイアスタイヤが採用される。つまり、スポークホイールもバイアスタイヤもサスペンションの一部というわけである。
実際の使用感としても、『スポークホイール』とキャストホイールでかなり乗り味が違う。例えばスズキのアドベンチャーモデル・Vストローム650シリーズには、ほぼ同じ車体構成でホイールの種類が違う、キャストホイールのVストローム650と、『スポークホイール』のVストローム650XTが存在する。
以前、この2台を同条件で街乗り、高速道路、ダートと乗り比べたことがあるが、車体のフィーリングが全く異なっていることに驚かされた。まずワインディングでは、キャストホイールの方が車体の動きがクイックでスポーティなハンドリングに感じるのだ。
高速道路も同じで、クイックなキャストホイールの乗り味に対し、『スポークホイール』は若干直進安定性が強めで、車線変更などを行う場合には、『スポークホイール』のしなりからくる重さを感じる。スポーティなクイックなハンドリングのマシンが欲しいならキャストホイールの方がいい。またゆったりクルージングするのに向く、安定感のある乗り味が好きなら『スポークホイール』を選んだ方がいいかもしれない。
そしてオフロードセクション。まず第一に『スポークホイール』のほうが、岩などの凹凸からくる衝撃の伝わり方がソフトで快適。また、滑りやすい路面では『スポークホイール』の方がより踏ん張るように感じる。とくに横方向の力がかかるコーナリングなどではその効果がかなり顕著。キャストホイールでは横滑りを起こしそうでアクセルを開けられないような場面でも、よく踏ん張る『スポークホイール』なら、グリップが感じられるから安心感がありアクセルが開けやすい。総じて『スポークホイール』のほうがダートでは走りやすく、より速く走れるというわけである。
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