バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は、前走車を追従する機能が付いた電子制御装置『アダプティブクルーズコントロール(ACC)』だ。
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そもそも『アダプティブクルーズコントロール(ACC)』とは?
『アダプティブクルーズコントロール』。言葉だけだと、前回紹介したクルーズコントロールに、“アダプティブ”という言葉が付いただけなのだが、その機能内容は従来タイプのクルーズコントロールよりも遥かに進化している。なにしろ前走車を検知し車間を空けて自動追従するのが、この『アダプティブクルーズコントロール(ACC)』の機能だからだ。
この『アダプティブクルーズコントロール』、すでに4輪の世界では普及しつつある機能だが、その追従のプロセスを説明すると、
①クルーズコントロール使用中に前走車に追いつくと減速を開始。
②一定の車間をとりながら追従走行。
③車線変更などで前走車がいなくなると、再び設定速度まで加速し、巡航走行へ移行する。
…するというものだ。どうやって前走車を検知しているかというと、4輪の世界では光学カメラを使うのが主流だが、ワイパー付きのフロントガラスを装備しないバイクは、視界確保が不確かなためミリ波レーダーユニットを使用する。
『アダプティブクルーズコントロール』は、このミリ波レーダーによって得られた情報を用いてバイクの車速をコントロールするのだが、通常のクルーズコントロールとのレーダー以外の部分にも大きな違いがある。通常のクルーズコントロールが行うエンジンの出力調整。つまりはバタフライバルブ制御によるエンジンブレーキに加えて、前後車輪のブレーキも積極的に使って減速も行う。つまり、バイクが勝手にブレーキをかけて減速するのである。
ただそのフィーリングは非常に自然でエンジンブレーキの延長という感じでやんわりとしたブレーキ制御をしてくる。ただし、KTMの1290スーパーアドベンチャーSは別。「スポーツモード」にすると最大50%のブレーキ圧を使ってガッツリ減速をかけてくる。
『アダプティブクルーズコントロール(ACC)』のここがスゴイ!
①一定の車間をとりながら追従走行
やはりこれに尽きる。通常のクルーズコントロールは、前走車に追いついたらそこで一度機能をカットして通常走行へ移行。ライダーがスロットルを操作して車間を保つ必要がある。
しかし、『アダプティブクルーズコントロール』は、自動で車間を保ってくれる。前走車が減速したら減速を行い、速度を上げれば設定した速度まで増速しながら追従。もし、前走車が車線変更して隣のレーンへ移ったりしてもやはり設定速度まで増速してそこから巡航走行へと移行する。二輪のACCには、車のACCのように車線キープ機能などはないものの、それでも高速道路での長距離移動が楽になることは間違いない。
②車間は走行速度によって変わり、メーカーごとの味付けも様々
面白いのは、前走車との車間の取り方で、前走車との車間は“距離”ではなく、“時間差”でコントロールしていることだろう。つまりA地点を前走車が通過したとすると、その1秒後とか、2秒後にその地点を自車が通過するような距離を保って走る。このため時速80kmと100kmでは車間の幅が異なるようになっており、速度がアップするほど車間を確保するようになる。
また車間距離設定に関しては、メーカーによって違うものの3段階から5段階くらいの設定があり、一番近い設定では「割り込みされにくい距離感」、また一番遠い設定では、「十二分に距離を保つぐらいの距離感」というような雰囲気だ。
ドゥカティはムルティストラーダV4Sに、二輪としては世界で初めて『アダプティブクルーズコントロール』を採用。ACCのライディングモードは1種類のみで、車間設定は4種類。後方にもミリ波レーダーユニットがあり、後方死角検知システム(BSD)も搭載している。ちなみにACCはオプション設定でレーダーパッケージモデルに装備される。
KTMのアドベンチャーツアラーのトップモデルである1290スーパーアドベンチャーシリーズに『アダプティブクルーズコントロール』を採用。ただしACCを搭載するのは、電子制御サスペンションを備える“S”仕様のみでオフロード色が強い“R”には搭載されない。特徴的なのは2種類のACCモードに「スポーツ」モードがあること。味付けに関してもその名に違わず、加速も減速もスパイシー&スポーティ! 企業理念である“READY TO RACE”なACCという感じ。車間設定に関しては最多の5段階を備える。
R1250RTに加え、クルーザーモデルのR18トランスコンチネンタルにも『アダプティブクルーズコントロール』を搭載しているBMW。「コンフォート」「ダイナミック」の2種類のACCモードを備え、車間設定は3段階。BMWは長年に渡りクルーズコントロールやABSに取り組んできた電子制御界の先駆者であり、ACCに関しても、低速まで設定が切れなかったり操作がしやすかったり、その使いやすさにはやはり一日の長がある。
2022年時点でカワサキの『アダプティブクルーズコントロール』搭載は最後発だが、国産4メーカーとしてACCの採用は初めて。またACCに加えて、BSD、衝突予知警報も搭載しており、ボッシュの先進機能が詰め込まれているといっていい。ツアラー色が強いACC付きモデルの中では一番スポーツ寄りだがが、ACCの味付けに関しては非常に繊細で“安全第一”な印象を受ける。車間設定は3段階で最短設定にしても一番距離を取るイメージ。ACCモードは1種類のみとなっている。
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ヤマハも次期トレーサー9GT +にミリ波レーダータイプのACC搭載を発表。国内モデルとしての発売は2023年8月時点でまだ未定のようだが、ACCの技術を紹介する動画によれば、ACCと電子制御サスペンション、それからブレーキシステムが連動するようなまったく新しい制御を行うレーダー連動のUBS(ユニファイドブレーキシステム)を搭載するもよう。
二輪ACCの世界はこれまでボッシュの一人勝ちだったが、“人機官能”という電子制御技術に対して大きなこだわりを持ち6軸IMUも自社開発しているヤマハは、ボッシュとどう差別化してくるのかが楽しみなところだ。このヤマハのレーダー連動のUBSに関しても、試乗し次第その機能やフィーリングをこの場で取り上げてみたい。
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③『アダプティブクルーズコントロール』があると長距離運転が圧倒的に楽になる
色々、『アダプティブクルーズコントロール』付きのモデルに乗ってみて思うのは、一度使ってしまう…というかその便利さを知ってしまった時点で既存のクルーズコントロールが非常に物足らないというか、未完成な技術に思えてくるほど革新的であるということだ。
というのも、渋滞走行時における周囲の状況把握に相当気をつかっているようで、『アダプティブクルーズコントロール』がこの一部を担ってくれるだけで長時間走った時の疲労の蓄積仕方がまったく違う。ACC付きとそうでないモデルでは、「どちらが遠くまで疲れずに移動できるか?」と問われれば、圧倒的に『アダプティブクルーズコントロール』付きのモデルの方なのだ。そう言い切れてしまうくらい長距離を走った後の疲労感が違う。
最近、遠出に疲れを感じるようになってきた…、なんてライダーは一度この『アダプティブクルーズコントロール』付きモデルを試乗してみてはどうだろう?
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