バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は、アダプティブクルーズコントロールと対となる電子制御のレーダー装備、後方死角検知機能 の『ブラインドスポットディテクション(BSD)』を解説しよう。

そもそも『ブラインドスポットディテクション(BSD/後方死角検知機能)』とは?

バイクはヘルメットをかぶって走らなければならない乗り物であり、そのためどうしても視界が狭い。そのうえライダーがバランスをとって走らせるという操作の都合上、三半規管のある頭はあまり大きく首を動かしたくないもの。そもそもとしてバイクは後方の確認作業がしにくいのだ。

教習所では「目視は目線移動だけでなく、しっかり首を動かして行うように!」と耳にタコができるぐらい言われ続けたかと思うが、あの執拗な指摘は、そんな“ちょっと面倒な”後方の確認がおざなりにならないようにする意味合いが強い。

ブラインドスポットディティクション

ミリ波レーダーを使って車体後方の状況をセンシング。死角から迫る車両の存在をライダーに教えてくれる後方死角検知機能。

 

そんなわけでバイクはそもそもとして後方の確認作業がしにくいという特性があるのだが、そんな特性を忘れてしまい車線変更しようとしたら斜め後ろに車がいて「ヒヤリッ!」 こんな経験はライダーなら一度はあるんじゃないだろうか? 後方確認はミラーでしっかりした“つもり”なのだが、死角に隠れた場所にちょうど車がいたという状況だ。

今回紹介する『ブラインドスポットディテクション(BSD)』とは、その名の通り“死角(blind spot)”を“検知(detection)”するための機能で日本語に直訳すれば後方死角検知機能。自車の斜め後方の死角に他車がいるとミラーのLEDが光ることで、車線変更しようとミラーを見た時点で「おっと危ない!」と気付くことができる。まだ登場してから日が浅くて呼称が定着しておらず、メーカーによって『ブラインドスポットディテクション』または略して『BSD』、日本語で『後方死角検知システム』、『後方死角検知機能』と言ったりする場合がある。

センシングの中核となるのはアダプティブクルーズコントロールにも使用するミリ波レーダーユニット(中距離レーダーセンサー)である。アダプティブクルーズコントロールと同じミリ波レーダーユニットが車体後部に取り付けられており、後方の交通状況を常にセンシングしているというワケだ。

ブラインドスポットディティクション

カワサキのニンジャH2 SX SEの『ブラインドスポットディテクション(BSD)』システム解説図。アダプティブクルーズコントロール用のミリ波レーダーは車体前方に、『ブラインドスポットディテクション』用のミリ波レーダーは車体後方にそれぞれ取り付けられている。ARASとは、BOSCHが作るBSDやACCなどの先進のライダーサポートシステムの総称。

 

KAWASAKI NinjaH2 SX SE

KAWASAKI NinjaH2 SX SE

ブラインドスポットディティクション

カワサキのニンジャH2 SX SEのリア周り。ストップランプとナンバーの間に『ブラインドスポットディテクション』のためのボッシュ製ミリ波レーダーが内蔵されている。

 

『ブラインドスポットディテクション(BSD)』のここがスゴイ!

車線変更時の「ヒヤリハット」が大幅に減る

blind spot detection

さてこの『ブラインドスポットディテクション』。筆者はドゥカティのムルティストラーダーV4s、カワサキのニンジャH2 SX SE、トライアンフのタイガー1200GTエクスプローラーといった『BSD』搭載車両を実際に高速道路で走らせた経験があるが、非常に有用な機能であることが実感できた。

僕自身は、高速道路での車線変更時にはしっかり目視しないと車線変更したくない派。ソロだろうが、複数人で一緒に走っていようが、車線変更時には自分の目で確認しないと気が済まない。まぁ、当たり前のことなんだけどね。

ただ30年もバイクに乗っていると、「ヒヤリッ!」と嫌な汗を描く場面もそれなりに経験してきたが、車線変更時の死角車両に気付いて「ヒヤリッ!」とする場面は、その筆頭とも言っていいくらい高い頻度で起こる危険だ。

ブラインドスポットディティクション

死角車両が入るとミラーに内蔵されたLEDが点灯する。写真はカワサキのニンジャH2 SX SEのミラーで、鏡面内蔵式のLEDインジケーターは二輪車で初とのことだ。

 

何度も「ヒヤリッ!」とするなかでナニがナンでも目視するクセを身につけたワケだが、そんなライダーの立場からしても、この『ブラインドスポットディテクション』は有用な機能だと感じる。

というのも車線変更を行うプロセスのうち、車線変更するべくウインカーを出す前には誰でもミラーに目をやると思う。その時点でミラーのLEDが光っていれば、“死角に車両がいる”ということを認識できる便利な機能だからだ。

『ブラインドスポットディテクション』が付いていればウインカーを出す前の予備動作の時点で死角の車両の存在に気付けるのである。「ウインカーを出して目視したところで、“あっそこにいたんですね、スミマセン!”」なんてことはよくあると思うが、そんなニアミス的状況の多くを未然に防ぐことができる。

ブラインドスポットディティクション

①後方からの急速接近。②死角からの接近。③死角並走。この3つの場面でLEDが点灯。逆に“光っていなければ”、死角には(今のところ)車両はいないということ。まぁ、実際に車線変更する際には、目視での後方確認はすることになるが、そもそも車線変更の予備動作の時点で死角の状況がわかるのが非常に便利。

 

2022年現在、『ブラインドスポットディテクション』を搭載するのは、カワサキとドゥカティ、そしてトライアンフ

事故を未然に防ぐ『ブラインドスポットディテクション』。2022年9月現在、この機能を搭載するモデルは3機種。ドゥカティのムルティストラーダV4SとカワサキのニンジャH2SX、そしてトライアンフのタイガー1200GT/ラリーの上級機種エクスプローラー仕様である。このうちムルティストラーダV4SとニンジャH2SXが搭載する『ブラインドスポットディテクション』のシステムは両方ともBOSCH社製のものとなっている。

 

対して、トライアンフのタイガー1200GT/ラリーのエクスプローラー仕様が搭載するのはコンチネンタル社製となっており、名称も『ブラインドスポットディテクション』ではなく、ブラインドスポットレーダー(BSR)となっている。ただ目的やその効用はほぼ一緒だ。

 

タイガー1200シリーズは、アダプティブクルーズコントロールは搭載しておらず、レーダー系の装備は『ブラインドスポットディテクション』のみとなる。

ブラインドスポットディティクション

タイガー1200シリーズが搭載するのはコンチネンタル社製のレーダーで、ストップランプ上部に内蔵されている。

ブラインドスポットディティクション

ミラー下部にあるのがLEDのインジケーターで、車線変更時に自然と目が行く場所に設置されている。写真はトライアンフのタイガー1200シリーズ。

 

 

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