ホンダのCRF250LCRF250ラリーだけでなく、2024年末にはカワサキからKLX230KLX230シェルパが登場。2025年には久々の400ccクラストレールとなるスズキ・DR-Z4SやKTM・390エンデューロRがリリースされ、ヤマハも2026年1月から久々のトレールモデルとなるWR125Rを発売!!
こんな感じで近年にわかに盛り上がりつつあるのがオフロードバイクというジャンルだ。ただこのオフロードバイク、いざ始めようとするとちょっとばかし特殊でエントリーユーザーにはわかりにくいことも多い。そこでオフロードバイク遊びをするためのハウツーや用語を毎回少しずつ紹介していく本企画。今回もオフロードバイクの種類・ジャンルの話でレース競技車である『コンペティションモデル』。その代表格である“モトクロッサー”とその対極に位置する“トレールモデル”との違いについて深掘り!

オフロード系の競技といってまず思い浮かぶのがモトクロス。このモトクロス競技でのパフォーマンスを最大限高めたモデルがモトクロッサーである。写真はモトクロスの花形AMAスーパークロスでヤマハ・YZ450Fを走らせるクーパー・ウエブ選手(2026AMAスーパークロス 第2戦サンディエゴ大会)。

オフロードバイクを使う競技と聞いてまず思い浮かぶのがモトクロス。飛んだり跳ねたりバイクの動きが派手で、バチバチとサイドバイサイドの競い合いが大きな見どころとなるレースだ。このモトクロス競技でのパフォーマンスを最大限に高めた『コンペティションモデル』がモトクロッサーである。写真はモトクロスの花形AMAスーパークロスでヤマハ・YZ450Fを走らせるクーパー・ウエブ選手(2026AMAスーパークロス 第2戦サンディエゴ大会)。

『コンペティションモデル』と市販車ってナニが違うの? どうスゴイ!?

『コンペティションモデル(Competition Model)』を直訳すれば“競技用モデル”、つまりレースに出場することを前提に開発された車両である。広義ではレース出場を前提としていないファンライド目的の車両やキッズ用モデルなど、クローズドコースで走らせるナンバーのないオフロードモデルまで『コンペティションモデル』に含むことも。まぁ、ナンバー登録のできないオフロード走行用モデルが『コンペティションモデル(コンペモデル)』と思っていて“ほぼ”間違いない。

この『コンペティションモデル』の最大の特徴は、トレールモデルのように公道を走ることを目的としていないため、ナンバー取得のために必要な各種制約をいっさい考慮せずに開発されているところ。トレールモデルに課せられるような排出ガス規制はもちろん、ABS装着義務もなく、タイヤもより競技向きのブロックハイトの高い“公道走行不可タイヤ”を装着している。また盗難対策のためのキーシリンダーやハンドルロック機構もなければ、ヘッドライト、ウインカー、ミラー、ナンバーステーといった保安部品も必要ないため『コンペティションモデル』はとにかく車体が軽い

左がモトクロス用の『コンペティションモデル』であるYZ250F(2026年モデル)で、右がトレールバイクのWR250R(2007年モデル)。同じヤマハが作るオフロードモデルであるが全く別物だ。

左がモトクロス用の『コンペティションモデル』であるYZ250F(2026年モデル)で、右がトレールバイクのWR250R(2007年モデル)。同じヤマハが作るフロント21インチホイールの250ccクラスのオフロードモデルで見た目は似ているが中身は全く別物。登場当時(2007年)、トレールモデル最強といわれたWR250Rでも車両重量は132kgで、一方、同じ4スト単気筒のYZ250F(モトクロッサー)は105kg。ABS装着義務のなかった2007年当時のモデルでさえ30kg近い差が生まれている。

 

一方のトレールバイクは二人乗り走行や高速道路走行も考慮した車体剛性やそれに見合ったブレーキシステム、タンデムステップなどに加え、マフラーには排出ガス規制に対応するためのキャタライザー排気デバイスを搭載する必要があるため重いのだ。

またトレールバイクは、耐久性や耐候性が高く、メンテナンスサイクルも長めである必要がある。このためピストンリングの数を増やしてエンジンの耐久性を高めるなんて構造的な工夫はもちろんだが、エンジンオイルやブレーキフルードの量、ブレーキパッドやディスクの厚みなどの消耗品の容量に関しても、トレールバイクはより多くのマージンを確保する。逆に『コンペティションモデル』は軽さやフリクションロスの少なさなど、耐久性よりもレース環境でのパフォーマンスを優先。頻繁なオーバーホールを前提としているからこそ、ピストンリングが1枚しかなかったり、サスペンションの内部構造がシンプルだったり……。レース専用である『コンペティションモデル』は、メンテナンスもそこそこにストップアンドゴーの多い街乗りをこなしたり、高速道路で延々とスロットルを開け続ける……といったトレールバイクが受けがちなハードな使われ方を想定していない

左が『コンペティションモデル』YZ250Fのフロントブレーキで右がトレールバイク(WR250R)のディスクまわり。両車ともフローティングタイプのディスクで片押し2ポッドキャリパーであることも変わりないが、『コンペティションモデル』の方はディスクが薄くいかにも軽そうで、キャリパーもコンパクト。ブレーキフルードのリザーバータンクなどの容量も少なめだ。

左が『コンペティションモデル』YZ250Fのフロントブレーキで右がトレールバイク(WR250R)のディスクまわり。両車とも仕様で言えばフローティングタイプペタルディスクで片押し2ポッドキャリパーであることに変わりはない。……が『コンペティションモデル』の方は軽量化のための肉抜き穴がディスクローターに多く、ディスク自体も薄くていかにも軽そうであり、キャリパーもコンパクト。もちろんブレーキフルードのリザーバータンクなどの容量もトレールバイクに比べると少なめで交換サイクルも短い。

 

走行性能に関してもトレールバイクは、舗装路も未舗装路も両方走ることができるように作られる。軽二輪クラスとなれば苦手とはいえ一応は高速道路も走れなくてはいけない。現代であれば100km/hくらいの巡航走行はこなせないといけないし、二人乗りして質量が大きく増えたような場合にもしっかり止まれるような頑丈なブレーキシステムを備える必要がある。

一方、コース走行にキャラクターを極振りしたモトクロッサーは、テクニカルなコースでのスプリント競技のために、トレールバイクとは比べ物にならない加速力や大ジャンプで着地しても壊れない車体は持っている。その一方、高速巡航性能は必要なく、スロットルレスポンスが過敏で一定の速度で走り続けるなんて使い方がしにくい……というか、そもそもとして快適性が考慮されていない。

KTMのモトクロッサー・250SX-F(2018モデル)。軽量化のためにサイドスタンドがなく、スタンドがないと自立できない。

KTMのモトクロッサー・250SX-F(2018モデル)。軽量化のためにサイドスタンドが付いておらず、スタンドがないと自立できない。

モトクロッサーって未経験者は乗れないってホント!?

モトクロッサーのフロントマスクはヘッドライトもウインカーもなく、ゼッケンを貼る場所になっている。

モトクロッサーのフロントマスクにはヘッドライトもウインカーもなく、ゼッケンを貼る場所になっている。

 

トレールバイクとレースで勝つための『コンペティションモデル』の違いを生む大きな要素として挙げられるのは速度領域だ。高速巡航する必要があるトレールバイクに対し、モトクロッサーは瞬間的に速度域が上がることはあっても基本的に速度領域は低く、コーナーでの立ち上がり加速など、兎にも角にも瞬発力が必要になる。このためギヤ比はローギヤード気味のクロスミッションで、巡航走行のための6速ギヤはそもそもなく、5速にしてエンジンを軽量化するのが一般的。

イグニッションもなければ、速度を表示するメーター(稼働時間を表すアワーメーターはある場合も)もない。ただし最近はモトクロッサーでもキック始動オンリーではなく、セルスターターを備えたモデルが増えた。

ハンドルロックのためのキーシリンダーやイグニッションもなければ、速度を表示するメーター(稼働時間を記録するアワーメーターはある場合も)もない。ただし最近は、軽量化第一のモトクロッサーであってもキック始動のみではなく、バッテリーを備えボタン一つで始動が可能なセルスターター付きのモデルも増えた。250SX-F(2018モデル)の場合、右のスイッチボックスのグレーボタンがスタータースイッチで、左の赤いボタンがキルスイッチ。

KTMの250SX-F(2018モデル)の場合、ギヤは5速。5速しかないのではなく“5速までしか必要ない”からない。実際コースを走らせててみても、使うのは1〜3速がメインで、僕の場合4速や5速に入れた記憶がない(笑)。

KTMの250SX-F(2018モデル)の場合、ギヤは5速。5速しかないのではなく“5速までしか必要ない”からない。実際コースを走らせててみても、使うのは1〜3速がメインで、僕の場合4速や5速に入れた記憶がないくらい(笑)。エンジン特性に関してもレースでのスロットル操作は“開けるか”“閉じるか”がメインで、スロットル開度一定でダラダラと走るなんてことはないので、とにかくスロットルレスポンスがいい。

 

そんな低速加速重視のピーキーなキャラクターから、“モトクロッサーなんて未経験者がいきなり走らせられるもんじゃないよ!?”なんてことが言われたりするが、筆者の経験からするとあながち間違いじゃない。まぁ、操作の仕方は一緒なので、免許さえ持っていればコースをオドオド走らせるくらいはできると思うが、“しっかりスロットルを開けて走らせる”となると話は大きく変わってくる。加速重視のピーキーなエンジンはラフに扱えば容易くフロントタイヤが浮き上がり、大きな衝撃を受ける大ジャンプやより高い速度で曲がることを前提にセッティングされた車体や足回りはオドオド走らせたところでほとんど仕事をせず、兎にも角にも車体が硬く、扱いにくく感じる。

モトクロスコースはクローズドされた環境で公道ではないので、走らせるのにバイクの運転免許の必要はない。当然排気量にも制限はなく、85ccの2ストマシンだろうが、450ccのモトクロッサーだろうと免許なしで乗ることができる。ただ“乗る”のと“扱う”のは話は別だが……。写真は2018年モデルのKTM 250SX-Fを走らせる筆者 谷田貝 洋暁。

写真はKTM 250SX-Fを走らせる筆者。モトクロスコースはクローズドされた環境で公道ではないので、走らせるのに運転免許の必要はない。当然排気量にも制限はなく、85ccの2ストマシンだろうが、450ccのモトクロッサーだろうと免許なしで乗ることができる。ただ“単に乗る”のと“しっかり走らせる”のは話は別だ……。

 

筆者が初めて450ccフルサイズのモトクロッサーに乗ったのは、ホンダが「モトスポーツランドしどき」で行った2008年のオフロードモデルの試乗会。当時WR250Rを購入してオフロードにハマり始めた頃であり、どうせならトップモデルのフルサイズのCRF450Rに乗ってみたいと思った。……のだが、まずキックによる始動ができず(笑)恥をしのんで試乗会スタッフにエンジンをかけてもらい。これでようやく走り出せる! と思ったら、あまりのパワーにマクレていきなりウイリー。そのまま50m以上走っただろうか? たまたま名物の大坂にさしかかったところでフロントタイヤが着地してくれたので難なきを得たが、いまだに僕のウイリー最長距離はあのマクレた時の“まぐれウイリー”を超えられていない。

筆者(谷田貝 洋暁)が初めて450ccフルサイズのモトクロッサーに乗ったのはホンダがモトスポーツランドしどきで行った2008年のオフロードモデルの試乗会。CRF450Rに乗ろうと思ったのだが、まずキックスタートができず試乗会スタッフにエンジンをかけてもらい。ようやく走り出せると思ったら、いきなりマクレてそのままウイリー。たまたま名物の大坂に差し掛かってフロントタイヤは着地したのでことなきを得たが、いまだに僕のウイリー距離の最長記録はあのマクレた時の“まぐれウイリー”を超えられていない(笑)。写真はその時のものでまんまとスタッフにキックしてもらっているところが証拠に残っていた(笑)。

左上写真はその時のもので、まんまとスタッフにキックしてもらっているところが証拠として残っていた(笑)。走行写真は2008年モデルのCRF250Rを走らせる筆者で、やはり排気量のぶんCRF450Rよりも扱いやすかった。

 

あれから約20年。それなりにオフロード経験を積んだ今でも新車発表試乗会などでモトクロッサーに乗ると手強いと感じるし、走らせればやっぱり異常に疲れる。硬いサスペンションや高剛性なフレームのモトクロッサーはライダーへの負担がものすごく大きく、コースを真面目に1、2周もすれば腕が悲鳴をあげはじめる。いわゆる“腕アガリ”というやつに必ずなるのだ。ちなみに『コンペティションモデル』の中にも、モトクロス競技用のモトクロッサーと、エンデューロ競技用のエンデューロレーサー(エンデュランサー)があるが、話がややこしくなるので次回にしっかり説明させてもらおう。

 

 


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> ⑩「湿式エアクリーナーフィルターのメンテナンスはどうやるの!?」
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> ⑬「オフロードグローブって消耗品なの!?」
> ⑭「オフロードバイクは高速道路が苦手!?」
> ⑮「ダート林道は一人で走っちゃいけないの!?」
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> ⑱「オンロードタイヤを履いたオフ車!? モタードモデルってどういうこと!?」
> ⑲「ビッグオフってなに!? アドベンチャーバイクと違うの!?」
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