バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は車体のお話で『セパレートハンドル』を深掘りしていこう。
そもそも『セパレートハンドル』とは?

サーキット走行を見据えたキャラクターに仕立てられたKTMの990 RC Rのサーキット専用バージョン990 RC R TRACKの『セパレートハンドル』。
『セパレートハンドル』もしくは略して“セパハン”などと呼ばれるけど、読んで字の如く“Separate(分割)Handle(ハンドル)”という構造の意味がそのままパーツの名称になっている。左右のハンドルが一体構造になっていないハンドルは全て『セパレートハンドル』だと思って間違いない。

写真はカワサキのNinja ZX-4RRの『セパレートハンドル』で、左右に分かれたハンドルが倒立フォークにクランプされているのがわかる。
ちなみに左右に分かれてないハンドルはいわゆるバーハンドル。左右の持ち手が1本の棒でつながっているバーハンドルに対し、“何かしらの理由”があってあえて分けられたから『セパレートハンドル』と呼ばれるようになった。この“何かしらの理由”を紐解いていくと『セパレートハンドル』の役割や意味がよくわかる。

左の写真はスズキのGSX-8TTのバーハンドルで1本の棒状のハンドルがトップブリッジの上にクランプされている。右はBMWのR12で、GSX-8TTよりもさらにアップライトでグリップポジションが大きく上に持ち上げられているのがわかる。
またセパレート風の見た目でも左右のハンドルがつながっていたらそれは『セパレートハンドル』ではなく、それはあくまで“セパレート風”のハンドルだ。よくあるのが『セパレートハンドル』のようにハンドルエンドの垂角が強められた“スワローハンドル”。バーハンドルの一種で、その形状が滑空するツバメ姿に似ていることから“スワローハンドル”と呼ばれる。

写真はキジマ製の“スワローハンドル”で、元々バーハンドルのカワサキ・W650をこのスワローハンドルでカフェレーサー風のスタイルにするためのカスタムパーツだ。バーハンドルのクランプをそのまま使って取り付けられるので手軽に『セパレートハンドル』風のルックスが手に入る。
『セパレートハンドル』のここがスゴイ!
前輪荷重が強めであるスポーツバイクの代名詞!!
さて、本題の『セパレートハンドル』からやや脱線しかけたが話を戻そう。『セパレートハンドル』最大の特徴は兎にも角にもそのスポーツ性の高さにある。現在、ロードレースで使われるレーサーのハンドルは『セパレートハンドル』が主流。……というか、いわゆるMotoGPやスーパーバイク選手権などのロードレースを走るレーサーは全て『セパレートハンドル』が採用されている。

バイクの上にへばりつくように跨り、前後左右に荷重移動を行なってマシンコントロールする現代のレーサーには『セパレートハンドル』が必須。写真は「#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM(YFRT)」の2026年8耐仕様のYZF-R1。
では、なぜロードレースにおいて『セパレートハンドル』が使われるのか? それはレーサーをはじめとする現代のスポーツバイクは前輪と後輪の分担荷重がほぼ50:50で、昔のバイクに比べて前輪にかかる荷重がものすごく増えているからだ。つまり現代のスポーツバイクはフロントタイヤにしっかり荷重をかけて曲がっていくようにできているというワケだが、この“フロントタイヤにしっかり荷重をかける”という動作においてとても重要な役目を果たすアイテムが『セパレートハンドル』なのだ。
というのも高めのアップハンドルではそもそもライダーがコーナリングで車体を抑え込めないため(荷重がかけられず)、速く走るにはハンドルを低い位置にセットする必要がある。トップブリッジと同じ高さか、さらに低い位置にハンドルを取り付けて効果的に前輪に荷重をかけたり、ハングオンポジションを取ったりするために進化したのが『セパレートハンドル』というワケなのだ。

KTMの990 RC Rの『セパレートハンドル』は、倒立フォークのアウターチューブにクランプされ、トップブリッジよりも低い位置にセットされているのがわかる。
実はこのグリップ位置の低いスポーツ走行向きの『セパレートハンドル』は、80年代初頭の日本では禁止されていた。そんな中で登場したのがスズキのGSX750Sで、法令順守のために通称“耕運機ハンドル”と呼ばれる極端にアップライトなハンドルが取り付けられていた。このアップハンドルを嫌ったオーナーたちは、こぞって“低くてカッコいい”GSX1100S KATANA用のハンドルへと換装したわけだが、これが警察の違法改造取り締まり対象としてマークされる事態に……。この警察による取り締まりは、豊臣秀吉の“刀狩令”にちなんで“カタナ狩り”と呼ばれた。

1982年発売のスズキ・GSX750S。構造的には『セパレートハンドル』なのは間違いないのだが、そのアップライト具合がとても大きく、その形状から“耕運機ハンドル”と揶揄された。『セパレートハンドル』は低い方がレーシーでカッコいいというわけである。
ポジショントライアングル比較
『セパレートハンドル』によってどれだけグリップポジションが下げられているか? を可視化するために、バーハンドル系のバイク、『セパレートハンドル』系のバイクの“グリップ”、“シート”、“ステップ”の3点を結んでポジショントライアングルを作ってみた。このトライアングルを見てみるとセパレートハンドルを採用するモデルのグリップポジションの低さがよくわかる。

スポーツクルーザースタイルのBMW R12(バーハンドル)。見るからにシートにドカッと座って乗るクルーザー系のポジションになっている。

スズキ GSX-8TT(バーハンドル)。ほんの少しだけ上体が前傾するスポーツネイキッド系に多いポジション。街乗り、ツーリングと公道を走るにはとてもバランスがいい。
上のバーハンドルの2車種はシートポジションよりも随分と上の方にグリップポジションがあるのが見て取れる。一方、下の2車種は『セパレートハンドル』。カワサキ・Ninja ZX-4RRは公道走行メインで作られたスーパースポーツモデルで、ハンドルポジションに対してシートポジションがやや低く、“いくぶん”快適性を考慮しているのがわかる。その下は本格的なサーキット走行を見据えたKTMの990 RC Rのサーキット専用バージョンである990 RC R TRACK。ハンドルとシートポジションがほぼ同じ高さになるようなスパルタンなポジションが設定されている。

公道での使用を前提としたフルカウルモデルのカワサキ Ninja ZX-4RR(セパレートハンドル)。『セパレートハンドル』車ではあるが、“ツーリングができなくもない”レベルの前傾姿勢ポジションが設定されている。

日本国内未導入のサーキット専用モデル、KTM 990 RC R TRACK(セパレートハンドル)。もうハンドルとシートがツライチになるくらい前傾が強められたレーシーなポジションになっている。
こんなにハンドルが低いうえにシートが高くて疲れないのか? ……当然疲れる(笑)。ついでに言えば『セパレートハンドル』車はえてしてハンドル切れ角が少ないモデルが多くUターンもしにくい。筆者は、公道バージョンのKTMの990 RC Rにも試乗した経験があるが、カワサキ Ninja ZX-4RRに比べるとかなり前傾姿勢が強くよりレーシーな雰囲気を感じた。あくまでサーキットでタイムを削るためだけに作られたストイックなポジションであり、“ラクかどうか?”とか“徐行でUターンする”なんて次元でポジショントライアングルを作っていないのだ。
そんなレーシーな前傾ポジションで、ストップ&ゴーの多い街乗りや長時間に渡るツーリングをすれば疲れるのは火を見るよりも明らかであるが、それでも“レーシーでカッコよければいい!!”……と伊達を通すところに『セパレートハンドル』の美学があるのだ。それにしっかりニーグリップで下半身を固定し、背筋と腹筋で上半身を支えるクセがつくと『セパレートハンドル』のスポーツ車がよく似合う腹筋バキバキのスポーティなボディが手に入れられるぞ!
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