バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は車体の話、ブレーキ用語の 『大径ディスク/ペタルディスク』をピックアップ。

そもそも『大径ディスク』とは?

円盤状のディスクローターが大きいから『大径ディスク』

ディスクローター(銀色で円盤状のパーツ)が大きいから『大径ディスク』。このディスクローターが大きくなるとどんなメリットがあるのだろうか?

 

『大径ディスク』とは正確には“大径ブレーキディスクローター”で読んで字の如く、ディスクブレーキのディスクローターの直径が大きいということ。主にフロントブレーキのディスクロータのサイズが大きい場合に、カタログやメーカーホームページなどで“φ000mmの『大径ディスク』を採用し、より高い制動力を実現”なんて感じで使われる。

ただ、ひと口に“大径”といっても、排気量やバイクのジャンルによってその大きさの捉え方はそれぞれ、125ccクラスのスクーターならシングルディスクでもφ230mmもあれば『大径ディスク』だし、1000ccクラスのスーパースポーツなら、ダブルディスクでφ330mmぐらいの『大径ディスク』も普通にある。

その効用はやはりブレーキ効力のアップにある。車輪と一緒に回転するブレーキディスクローターにキャリパーがブレーキバッドを押し付けることでバイクの速度は落ちる。ならば『大径ディスク』としてディスクローターの直径が大きくなるということは、“支点”、“力点”、“作用点”のテコの原理における、“力点(キャリパー)”と“支点(車輪軸)”“作用点(車輪軸)”の距離が大きくなること。ディスクの径が大きくなれば、より軽い力で高い制動力を産むことができるというわけだ。

例えば、キャリパーやマスターシリンダーなど、ブレーキシステムの装備が同じでも、より『大径ディスク』であればそれだけ大きな制動力を生み出せるのだ。

CRF250L(右)とCRF250ラリー(左)。

CRF250L(右)とCRF250ラリー(左)。同じエンジン、同じ車体をベースとしているこの2台だが、CRF250ラリーはCRF250Lよりも燃料タンクが大きかったりして重いため、ブレーキを大径化して制動力をアップしている。そんな場合に「CRF250Lがフロントブレーキにφ256mmのディスクローターを採用しているのに対し、CRF250ラリーはより大きなφ296㎜の『大径ディスク』を採用」……なんて感じで使う。

 

『大径ディスク』のナニがスゴイの!?

『それだけ速い、もしくは重たいバイクである証拠』

……ってことだ。これまでダブルディスクラジアルマウントキャリパーモノブロックキャリパーなど、高性能なブレーキシステムはこのコーナーで紹介してきたけど、それらと『大径ディスク』の効用は一緒だ。エンジン性能が高くより速度が出せたり、車体が重たい場合にはそれに見合う高い制動力が必要になり、より直径が大きくて強力な『大径ディスク』が採用されるというわけ。つまり、『大径ディスク』を装備するバイクは、よりスピードの出る高性能なバイクか慣性質量が大きい重量車ということになる。

『大径ディスク』と聞いて思い出すのはBuellのバイク

『大径ディスク』と聞いて真っ先に思い浮かぶのがBuellのフロントブレーキシステム、ZTL(ゼロ・トーショナル・ロード)。フロントブレーキディスクがホイールの内側ではなく、ホイールの外側に締結されている。正確には“大径”ではないが、“ディスク径を大きくするなら、いっそホイール外側に付けちゃった方がより大径化できるし、軽くできるし、放熱性や整備性もいいんじゃね!?”という発想だ。

 

当然、鉄の円盤であるブレーキディスクローターは、『大径ディスク』化すると、大きくなったり厚みが増したりして重量的には不利にはなるのだが、それをも増して制動力が欲しいという場合に『大径ディスク』が採用される。

また摩擦抵抗で速度を落とすため、ディスクブレーキはものすごい温度まで発熱することになる。それこそ走行直後のブレーキディスクは触れないほど熱くなっている場合が多く、ひどい場合にはブレーキパッドが焼けてブレーキが効きにくくなるフェード現象を起こしてしまったり、最悪ブレーキフルードの温度が高くなりすぎれば内部に気泡ができてブレーキが効かなくなるベーパーロック現象を起こす。この摩擦抵抗で発生する熱の放熱性においても、『大径ディスク』はよりたくさんの空気と接することになるため、温度が下りやすく有利という図式が成り立つ。

そもそも『ペタルディスク』とは?

ディスクローターの外周が真円ではなく、ギザギザとしていたり、えぐれが設けられている『ペタルディスク』

ディスクローターの外周が真円ではなく、ギザギザとしていたり、えぐれが設けられている『ペタルディスク』。“花”に見えるかはともかく、まん丸ではなかったら『ペタルディスク』と思っていい。写真はスズキのGSX-S750のディスクローターで、右がフロントで左がリヤ。

 

ディスクブレーキの熱の話が出たところで『大径ディスク』とともに説明しておきたいのが『ペタルディスク』だ。ペータルディスクとか、ウェーブディスクなどと呼ばれたりもするが、和名は「花弁状ディスクローター」で、英語の“petal(花びら) disc rotor”そのまんま。

形状も名前のままで、一般的なディスクローターがまん丸なのに対し、ペタルディスクは、外周部がギザギザと花弁状に型抜きされている。

CRF250Lのフロントブレーキ

CRF250Lのフロントブレーキ。外周のデザインも凝っているが、ディスク表面の穴の配置や肉抜き加工もしっかり施され、見るからに放熱性が良さそう。

 

『ペタルディスク』のナニがスゴイの!?

表面積が大きいことで放熱性に優れている

……ってことだ。『大径ディスク』でも説明した放熱性において優れるのが『ペタルディスク』の特徴だ。複雑な形状とすることで、ディスクローターの表面積を増し、走行風に晒すことでより放熱性を高めているというわけ。

ちなみにディスクローターの側面に空いている穴は、ブレーキパッドの削りカスや付着した泥などを掃除する効果があるが、穴自体に放熱性を高める効果もある。このため『ペタルディスク』の中には、外周の形状だけでなく内側の穴の部分も大きく肉抜きしてより放熱性を高めているものもある。

CRF250ラリーのフロントブレーキ

CRF250ラリーのフロントブレーキ。CRF250L比で外径が大きくなっているだけでなく、ディスクの取り付け構造が異なっており、CRF250Lのリジッドマウントに対し、CRF250ラリーは熱膨張に強いフローティングマウントを採用している。

 

 

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