バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は素材の話、 『チタン』を解説していこう。
そもそも『チタン』とは?
バイクの車体やエンジンには、鉄やアルミなど様々な金属が使われているが、その金属素材のひとつが 『チタン』、いわゆるチタニウムだ。名前の語源は、ギリシャ神話に登場する巨人族の名前タイタン(titan)で、金属を表すニウム(ium)を組み合わせてチタニウム(titanium)と呼ばれるようになった。
金属素材としての『チタン』の特徴は、強度が高くて軽く、しかも耐食性が高い(腐食に強い)ということ。軽さにおいては鉄やステンレスなどのスチール素材の比重が約7.8~7.9であるのに対し、『チタン』の比重はなんと約4.51で6割ほどの重さしかない。ちなみにアルミの比重は約2.7で、『チタン』よりもさらに軽い……のだが、『チタン』はアルミより強度が遥かに高いのだ。
『チタン』の強度は鉄の2倍、アルミに対しては3倍もあり、同じ強度パーツのパーツを作るなら、『チタン』を使えばとにかく軽くコンパクトになるというわけだ。しかも『チタン』はわりとありふれた金属で埋蔵量も多い。
ただ、そんないいことづくめの『チタン』だが、工業製品として実用化されるようになったのは割と最近のこと。というのも『チタン』は地中埋蔵量は多いものの、掘り出した『チタン』化合物からチタンを取り出(精錬)したり、加工することが困難でどうしてもコスト面が見合わず、大量生産する工業製品にはあまり使われてこなかったのだ。
精錬後の加工に関しても、『チタン』は硬くて削りにくく、溶接したりするのも難しいといった特徴から実用金属としてはイマイチメジャーではなかったのだが、最近は状況が変化。バイクのパーツに限らず、眼鏡のフレームやアウトドア用のシェラカップといった身近な金属製品まで『チタン』が採用されるようになったのは、『チタン』を“合金化”して加工がしやすくする技術が進んだからに他ならない。バイクではマフラーや燃料タンク、エンジン内のバルブといったところに『チタン』を採用するモデルも出てきているが、これらは全て正確には『チタン』合金というわけだ。ちなみに『チタン』合金にも、バナジウムやコバルトなどと組み合わされた“βチタン”、モリブデンやアルミなどとの合金である“新βチタン”などがあり、混じりけなしの純チタンとは区別されている。
『チタン』のなにが凄いの!?
軽くて強いのはもちろんだけどやっぱり高価でプレミアム感がある!
……ってことだ。その軽くて強いという金属的特徴からレーシングパーツとしてレーサーなどにも採用されることが多い『チタン』。合金化技術が確立されたことで加工しやすくなったとはいえ、スチール系の素材に比べると加工が難しく生産コストがかかるため製品価格は高くなる。そのため『チタン』は、レーシーなイメージであると同時に高級でプレミアムな素材である印象がものすごく強い。
特に車体の重心から離れたところにレイアウトするサイレンサーなどは軽量化の効果が高く、バイクカスタムの世界では、サイレンサーやエキゾーストパイプをノーマルから、アフターパーツメーカーの製品に変更するライダーが多い。そんな場合に、ステンレス製よりも『チタン』製のマフラーを選べばさらなる軽量化が見込めるというわけ。しかも、そこに『チタン』ならではの青い焼き色が入っていたりすると、プレミアムな『チタン』製であることがひと目でわかる。『チタン』は、軽量化という実益だけでなく、ドレスアップ効果も非常に高いというわけだ。
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