バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は素材の話、 『チタン』を解説していこう。

そもそも『チタン』とは?

『チタン』軽く、熱にも強い素材なので、高性能エンジンのバルブなどに使われる。写真はヤマハのWR250Rのチタンバルブ。

『チタン』軽く、熱にも強い素材なので、高性能エンジンのバルブなどに使われる。写真はヤマハのWR250Rのチタンバルブ。

 

バイクの車体やエンジンには、鉄やアルミなど様々な金属が使われているが、その金属素材のひとつが 『チタン』、いわゆるチタニウムだ。名前の語源は、ギリシャ神話に登場する巨人族の名前タイタン(titan)で、金属を表すニウム(ium)を組み合わせてチタニウム(titanium)と呼ばれるようになった。

金属素材としての『チタン』の特徴は、強度が高くて軽く、しかも耐食性が高い(腐食に強い)ということ。軽さにおいては鉄やステンレスなどのスチール素材の比重が約7.8~7.9であるのに対し、『チタン』の比重はなんと約4.51で6割ほどの重さしかない。ちなみにアルミの比重は約2.7で、『チタン』よりもさらに軽い……のだが、『チタン』はアルミより強度が遥かに高いのだ。

2017年モデルのCBR1000RRには燃料タンクやサイレンサーなど『チタン』素材を多く使用。ただ『チタン』は“プレスにしても、溶接にしても非常に加工が難しい素材だ”と技術者が語っていた。

2017年モデル以降のホンダCBR1000RRには燃料タンクやサイレンサーなどに『チタン』やマグネシウムなど軽量な金属素材を多く使用したことで、それ以前のモデルに対し16kgの軽量化を達成。写真はプレス加工が施され、溶接される前の燃料タンク。プレス加工で設計どおりの形を作り出すのに苦労したという。

CBR1000RRの『チタン』製サイレンサーのカットモデル。張力が非常に強く切った部分が広がっているのが確認できる。『チタン』は強すぎて加工が難しいのだ。

2017モデルのCBR1000RRの『チタン』製サイレンサーのカットモデル。『チタン』の板材は張力が非常に強く、切断面が若干広がっているのが確認できる。“『チタン』はプレスで成形するにしても、溶接で接着するにしても非常に加工が難しい素材で苦労した”とCBR1000RRの開発者が語っていた。『チタン』は強度が高すぎて金属の中でも加工が難しいのだ。

 

『チタン』の強度は鉄の2倍、アルミに対しては3倍もあり、同じ強度パーツのパーツを作るなら、『チタン』を使えばとにかく軽くコンパクトになるというわけだ。しかも『チタン』はわりとありふれた金属で埋蔵量も多い。

ただ、そんないいことづくめの『チタン』だが、工業製品として実用化されるようになったのは割と最近のこと。というのも『チタン』は地中埋蔵量は多いものの、掘り出した『チタン』化合物からチタンを取り出(精錬)したり、加工することが困難でどうしてもコスト面が見合わず、大量生産する工業製品にはあまり使われてこなかったのだ。

モトクロッサーにそのままナンバーを付けたような車体構成のCRF450Lの燃料タンクは『チタン』製。もちろん軽量化を狙ってのことだ。

モトクロッサーにそのままナンバーを付けてしまったような車体構成のホンダCRF450L(2018年モデル)の燃料タンクも『チタン』製。もちろん軽量化を狙ってのことだ。

CRF450Lの『チタン』製燃料タンクの溶接跡が美しい! 『チタン』がバイクの素材として使われるようになったのは、合金化する技術が進歩したからこそなのだ。

均等に並んだ溶接跡が美しいCRF450Lの『チタン』製燃料タンク。 『チタン』がバイクの素材として使われるようになったのは、合金化して溶接や加工をしやすくする技術が確立されたからこそなのだ。

 

精錬後の加工に関しても、『チタン』は硬くて削りにくく、溶接したりするのも難しいといった特徴から実用金属としてはイマイチメジャーではなかったのだが、最近は状況が変化。バイクのパーツに限らず、眼鏡のフレームやアウトドア用のシェラカップといった身近な金属製品まで『チタン』が採用されるようになったのは、『チタン』を“合金化”して加工がしやすくする技術が進んだからに他ならない。バイクではマフラーや燃料タンク、エンジン内のバルブといったところに『チタン』を採用するモデルも出てきているが、これらは全て正確には『チタン』合金というわけだ。ちなみに『チタン』合金にも、バナジウムやコバルトなどと組み合わされた“βチタン”、モリブデンやアルミなどとの合金である“新βチタン”などがあり、混じりけなしの純チタンとは区別されている。

2006年モデルのヤマハのモトクロッサーYZシリーズは、なんとリヤショックのスプリングに『チタン』を採用していた。従来のスチール素材に比べて30%も軽くすることが可能だった……が、現在のYZシリーズはこのチタン製スプリングを採用していない。

2006年モデルのヤマハのモトクロッサーYZシリーズは、なんとリヤショックのスプリングに“新βチタン”を採用。従来のスチール素材に比べて30%も軽くすることが可能だった……のだが、2024年現在のYZシリーズはこの『チタン』製スプリングを採用していない。強度、加工性、調達度においてやはり『チタン』は難しいところがあったというわけだ。

2020年モデルCBR1000RR-Rの鍛造チタン製コンロッド(コネクティングロッド)。ホンダはチタン製コンロッドを1987年発売のVFR750R(RC30)で初採用。CBR1000RR-RのコンロッドはRC213V-Sと同じ仕様でチタン素材はホンダが開発したTi-64Aだ。

2020年モデルCBR1000RR-Rの鍛造チタン製コンロッド(コネクティングロッド)。ホンダはチタン製コンロッドを1987年発売のVFR750R(RC30)で初採用。CBR1000RR-RのコンロッドはRC213V-Sと同じ仕様でチタン素材はホンダが開発したTi-64Aだ。

『チタン』のなにが凄いの!?

軽くて強いのはもちろんだけどやっぱり高価でプレミアム感がある!

……ってことだ。その軽くて強いという金属的特徴からレーシングパーツとしてレーサーなどにも採用されることが多い『チタン』。合金化技術が確立されたことで加工しやすくなったとはいえ、スチール系の素材に比べると加工が難しく生産コストがかかるため製品価格は高くなる。そのため『チタン』は、レーシーなイメージであると同時に高級でプレミアムな素材である印象がものすごく強い。

ヨシムラの隼用の『チタン』製フルエキゾーストマフラー「機械曲R-11Sq R チタンサイクロン 2本出し(JMCA認定)」は、なんとお値段55万円~。とにかくバイクのチタン製品は高価でプレミアムなのだ。

ヨシムラのスズキ・HAYABUSA用の『チタン』製フルエキゾーストマフラー「機械曲R-11Sq R チタンサイクロン 2本出し(JMCA認定)」は、サイレンサーからエキゾーストパイプまで、『チタン』をふんだんに使っており、そのお値段はなんと55万円~。とにかくバイクの『チタン』製品は高価でプレミアムなのだ。

 

特に車体の重心から離れたところにレイアウトするサイレンサーなどは軽量化の効果が高く、バイクカスタムの世界では、サイレンサーやエキゾーストパイプをノーマルから、アフターパーツメーカーの製品に変更するライダーが多い。そんな場合に、ステンレス製よりも『チタン』製のマフラーを選べばさらなる軽量化が見込めるというわけ。しかも、そこに『チタン』ならではの青い焼き色が入っていたりすると、プレミアムな『チタン』製であることがひと目でわかる。『チタン』は、軽量化という実益だけでなく、ドレスアップ効果も非常に高いというわけだ。

マフラーなど、熱の入る部分に使われる『チタン』には、独特の青い焼け色が入ることも。カスタムの分野では、この『チタン』ならではのブルーがいいと『チタン』製パーツをチョイスするというライダーも多い。

エキゾーストパイプやサイレンサーなど、熱の入る部分に使われる『チタン』には、独特の青い焼き色が入ることも。カスタムの分野では、この『チタン』ならではの焼き色が美しいと、ドレスアップ効果を狙ってあえてサイレンサーなどのカバーに焼き色を付けたりすることも多い。“『チタン』のマフラーだぜ!? どうだスゴイだろ!!”と視覚的にアピールできるというわけである。

 

 

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