バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回はハイグレードなサスペンションのインナーチューブなどに施される『DLC(Diamond Like Carbon)コーティング』をご紹介。

そもそも『DLCコーティング』とは?

『DLCコーティング』とは、Diamond Like Carbon(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングの略で、読み方は“ディ・エル・シー・コーティング”でそのまんま。意味を直訳すれば、“ダイヤモンド(Diamond)”の“ような(Like)”、“カーボン(Carbon)”のコーティング(膜)ということになる。

フロントフォークのインナーチューブに『DLCコーティング』を施したカワサキのZX-10R(2008モデル)。当時のリリースには、“この低摩擦ハイテクコーティングはフォークの動きを 良くするだけでなく、フリクションコントロールをも向上させる。ストローク初期はゆっく りとした滑らかな動きでブレーキングの安定性を高め、フォークが縮んだ状態では、 フリクションの低減で素早い動きを可能とし、素晴らしいロードホールディングを実現 する”とある。

フロントフォークのインナーチューブに『DLCコーティング』を施したカワサキのNinjaZX-10R(2008モデル)。当時のリリースには、“この低摩擦ハイテクコーティングはフォークの動きを良くするだけでなく、フリクションコントロールをも向上させる。ストローク初期はゆっく りとした滑らかな動きでブレーキングの安定性を高め、フォークが縮んだ状態では、フリクションの低減で素早い動きを可能とし、素晴らしいロードホールディングを実現する”とある。

 

あれ? ダイヤモンドとカーボンといえば化学の授業でダイヤモンドの元素記号は“C(炭素)”、つまりカーボンで炭を高温下で超圧縮してできるものがダイヤモンドだと習ったぞ? なんてことを思い出した人も多いだろう。

そうなのだ。つまり『DLCコーティング』とは、“ダイヤモンドの様な硬い特性を持った炭素膜”という素材の性質をそのまま表した言葉。もう少し言葉を足せば、プラズマを使った気相合成法で金属などの表面に炭素膜を蒸着することで“ダイヤモンドの様な結晶構造で非常に硬く、耐久性があり”ながら“黒鉛(グラファイト/炭素)の様によく滑る”薄膜を形成する技術ということになる。

『DLCコーティング』のなにが凄いの!?

とにかく摩擦係数が低くて高強度

……ってことだ。“よく滑るツルツルの皮膜を作る”という意味ではフライパンのコゲ付き防止のために施されるフッ素コートと役割はいっしょなのだが、『DLCコーティング』のすごいところは、その摩擦係数の低さ(ツルツル具合)に加えて高強度というところにある。ダイヤモンド・ライクの名前のとおり、摩耗にも強く耐久性がとても高い。バイクなどのハードな使われ方をする工業製品にも向くというわけだ。

バイクの場合、『DLCコーティング』と聞いて真っ先に思い浮かぶのはフロントフォークのインナーチューブ(内筒)だ。面積が比較的大きなインナーチューブの表面に『DLCコーティング』を施すことでインナーチューブの表面がツルツルになり摺動抵抗が大幅に減少、より動きがスムーズになる。これにより特に初期の動きだしの抵抗が減り、サスペンションとしての“動きの良さ”の機能が向上するというわけである。

ヤマハのMT-09の上位モデルであるSPのフロントフォークインナーチューブには『DLCコーティング』が施されており、ひと眼で“SP”であることがわかる。

ヤマハのMT-09の上位モデルでハイグレードなサスペンションを装備するMT-09SP(2024モデル)のフロントフォークインナーチューブには『DLCコーティング』が施されて黒く、ひと眼で“SP”であることがわかる。

 

『DLCコーティング』は、その皮膜が黒色であることから『DLCコーティング』を施すと表面色が大きく変わる。このためカスタムとしての視覚的変化も大きく、ハイグレードなサスペンションとして機能アップ目的のほか、ドレスアップ効果も高い。また『DLCコーティング』の皮膜は1μm(1/1000mm)と非常に薄いため、ノーマルサスペンションのインナーチューブに『DLCコーティング』を施すことも可能で、個人ユーザー向けに『DLCコーティング』サービスを行っているカスタムショップやサスペンションショップもある。

ノーマルとは違う色のついたフロントフォークのインナーチューブを見かけたら、「コレ、『DLCコーティング』掛けたんですか? サスの動きに違い出ました?」なんて声をかけてみると、大いに話が弾むことだろう。

ちなみに近年ではフロントフォークのインナーチューブだけでなく、エンジンパーツのタペット部分やコンロッドの摺動部など、メカニカルロスを減らしたり、耐久性を高めるために『DLCコーティング』が用いられることがある。

エンジン内部にも『DLCコーティング』が施されることもある。写真は2020モデルのCBR1000RR-Rのチタンコンロッドで大端部の摺動部(黒く変色している部分)に『DLCコーティング』を採用。このほかCBR1000RR-Rのエンジンパーツではフィンガーフォロワーアームにも『DLCコーティング』が施されている。

写真は2020モデルのCBR1000RR-Rのチタンコンロッドで大端部の摺動部(黒く変色している部分)に『DLCコーティング』が施されている。このほかCBR1000RR-Rのエンジンパーツではバルブ周りのフィンガーフォロワーアームにも『DLCコーティング』が採用されている。

 

エンジン以外では、なんとヤマハの次期トレーサー9GT+(2025モデル)が採用するD.I.D製チェーンのローラー部にも『DLCコーティング』が施されているとのこと。優れた耐久性と抵抗が軽減する『DLCコーティング』を施すことでメンテナンスサイクルを伸ばすのが目的であり、リリースによれば、“チェーンの寿命が延び、調整の必要性が減り、バイクの取り回しも楽になる”とのことだ。

『DLCコーティング』が施されたD.I.D製チェーンを装備する2025モデルのトレーサー9GT+。

『DLCコーティング』が施されたD.I.D製チェーンを装備する2025モデルのトレーサー9GT+。『DLCコーティング』で取り回しが楽になるとはなかなかビックリ!

 

 

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