バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は車体の話、ブレーキ用語の『メッシュホース』だ。
そもそも『メッシュホース』とは?
カスタムパーツでお馴染みのステンレスメッシュブレーキホース、いわゆる『メッシュホース』は、その名のとおり、金属メッシュのチューブでできたブレーキホースのことだ。
そもそもとして、ブレーキレバー(ペダル)を操作した時に発生する油圧をブレーキキャリパーへと伝えるのが、ブレーキホースの役割。一般的なバイクのブレーキラインのホースは味気ない黒色のゴム製なのだが、シルバーの『メッシュホース』に換えることで見た目が派手になり、“カスタムやってまっせ!”的なアピールができる。ただ、それ以上にブレーキタッチを“変えてしまう”のもこの『メッシュホース』という代物なのだ。
『メッシュホース』なにが凄いの!?
ブレーキタッチのダイレクト感が大幅アップする
……ってことだ。一般的なバイクのブレーキラインはゴム製、なのでブレーキを操作してブレーキライン内部の油圧が高まった際に若干膨張する。『メッシュホース』は、ステンレスで編まれたメッシュ(布)で被覆されているのでより剛性が高く、ブレーキ操作で油圧が高まってもほとんど膨張しない。つまり、その分エネルギー損失が少なくブレーキキャリパーへと油圧が伝わりやすくなる。結果として、ブレーキのフィーリングによりダイレクトが増すというわけだ。
このためロードレースなど、スピードに特化した競技で使われるハイスペックなマシンには、この『メッシュホース』を使うのが常。そんなレーシーなイメージを求めてカスタム分野では『メッシュホース』に交換するのが定番となっている。実際交換してみるとブレーキタッチのダイレクト感がアップするので、ホース1本換えるだけでブレーキの効きが良くなったように感じることだろう。この『メッシュホース』のダイレクト感に関しては、「カッチリとしたブレーキタッチに……」なんて言葉がよく使われる。
『メッシュホース』にはデメリットもある
ただし、この『メッシュホース』にはデメリットもある。ブレーキタッチがダイレクトであるということは、過敏であるということだ。一般的な公道用のバイクに未だゴム製のブレーキホースを使うのは、“わざと膨張させて”いるようなところがある。というのも、ダブルディスクやABSを説明した時にも書いたけど、バイクのブレーキが最大の効力を得るには、サスペンションによってタイヤがしっかり地面に押し付けられていることが大前提。
もしタイヤがしっかり路面に押し付けられる前にブレーキの効力が高まってしまったら……? ハイっ正解! 簡単にブレーキがロックしてタイヤのスリップが発生、最悪転倒してしまう。いわゆるこれが“握り転け”と呼ばれる状況。全集中してマシンをコントロールするサーキットとは違い、公道では色々な要素が混じり合うため、どうしても“咄嗟のブレーキでガン握り!”なんていうコントロール以前の状況が発生する可能性が高い。自ずと“握り転け”する確率も高くなる。
なので公道をメインとするバイクにはゴム製のブレーキホースを使うのが一般的。キャリパーへと伝わるエネルギーをあえて損失させることで、“咄嗟のブレーキでガン握り!”なんて場合にもサスペンションがタイヤを路面に押し付ける時間を稼いでいるというわけなのだ。なのでドレスアップ効果を狙って『メッシュホース』に交換する際には、ブレーキタッチがダイレクトで硬質なフィーリングになっている分、“握り転け”が発生しやすくなることをゆめゆめ忘れないようにしよう!
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