バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は車体の話、ブレーキ用語の『モノブロックキャリパー』をピックアップ。
そもそも『モノブロックキャリパー』とは?
『モノブロックキャリパー』は、略さず書けば“モノ・ブロック・ブレーキ・キャリパー”で、英語で書くならmono block brake caliper。つまり“mono block(ひと塊)”の“brake caliper(ブレーキキャリパー)”と、名前自体がその構造の特徴を表している。
ブレーキキャリパーとは、ラジアルマウントキャリパーやダブルディスクの回でも解説したけど、車輪と一緒に高速回転するブレーキローターに、ブレーキパッドを油圧で押し付けて速度を落とす部品。ブレーキシステムの中で、最もと言っていいほど重要な仕事をするパーツだ。

“brembo(ブレンボ)”と書かれているパーツがディスクブレーキのキャリパー部分。このパーツの構造が“ひと塊(モノブロック)”なのが、『モノブロックキャリパー』いうわけだ。ちなみにブレンボはブレーキパーツ界の超有名ブランド(イタリア)で、キャリパーに“brembo”と書かれているだけで、“おっ、このバイクのブレーキはブレンボなの!?”と羨ましがられることもある。
ブレーキキャリパーが“モノブロック”とはどういうことか? 一般的なブレーキキャリパーは、半割状態のパーツをボルトで締結して1つのキャリパーが組み上げる2ピース構造を採用しており、これに対しての『モノブロックキャリパー』なのだ。
一方、『モノブロックキャリパー』は、“ひと塊”なので締結するボルトがなく、一体構造になっていることがよくわかる。また一口に『モノブロックキャリパー』といっても、形にアルミを流し込んで作る鋳造(ちゅうぞう)アルミ製の『モノブロックキャリパー』と、圧力整形したアルミから削り出した鍛造(たんぞう)アルミ製『モノブロックキャリパー』がある。
より強度の高い鍛造アルミ製『モノブロックキャリパー』の方が剛性面で有利で、より速いスポーティなバイクや、よりプレミアムなバイクに使用される。
『モノブロックキャリパー』はなにがスゴイの?
『それだけ速い、もしくは重いバイクの証拠』
……ってことだ。ダブルディスクやラジアルマウントキャリパーの回でも書いたけど、バイクはエンジン性能が上がってより高い速度が出せるようになると、それに見合う高いブレーキ性能も必要になってくる。歴史としてはドラムブレーキからディスクブレーキとなり、ダブルディスクが生まれ、さらに300km/h超えのレースの世界ではラジアルマウントキャリパーなんてものが生まれるに至った。
キャリパーそのものの構造に関しても、一般的な2ピース構造では“ボルトによる締結”という構造上の弱点から剛性が足らなくなり、より高い剛性を求めて“ひと塊でより頑丈な”『モノブロックキャリパー』が登場するに至った。
つまり、『モノブロックキャリパー』は、2ピース構造のキャリパーよりもより速い速度が出せたり、より重くてより大きな制動力が必要な高性能なバイクに使われるというわけ。『モノブロックキャリパー』が付いていればそれだけ高性能なブレーキシステムが必要な速い(もしくは重い)バイクである証で、“どうだ、俺のバイクには『モノブロックキャリパー』が付いているんだぜ。凄いだろ?”という図式が成り立つ。
また造作コスト面から考えても『モノブロックキャリパー』は、2ピース構造のキャリパーよりも高価でプレミアム。2ピース構造のキャリパーは、半分ずつ加工できるため鋳造アルミで“型を抜く”にしても、鍛造アルミを“削り出す”にしても造作が比較的簡単で軽量化も可能なのだが、『モノブロックキャリパー』はそうはいかない。特に鍛造アルミの『モノブロックキャリパー』は、一つの鍛造アルミインゴットから、NCマシニングセンタというものすごく複雑な切り削りができる切削機械(当然ものすごく高価)を使って1個ずつ削り出すためものすごくコストがかかる。

鍛造アルミ製『モノブロックキャリパー』は、アルミの塊から削り出すため表面が“いかにも削り出しました!”という雰囲気になる。内側はもちろん外側も全てを削り出すため“総削り出し”なんて呼ばれることもある。
鍛造アルミの削り出し『モノブロックキャリパー』は、剛性が高いものの見た目がゴツく重いということもあったが、最近は5軸、7軸なんていうものすごく複雑な切削加工に対応する高性能なマシニングセンタが登場したことで、随分と軽量にもなってきている。
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