バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの?」…なんてことは今更聞けないし。そんなバイク関連のキーワードをわかりやすく解説.していくこのコーナー。今回は多気筒エンジンのマフラーに採用される『集合管』を見ていこう。
そもそも『集合管』とは?
『集合管』というからには、何かが“集合”、……つまりは集められているのだろうし、“菅”いうからには管状なのだろう。……ハイッ、正解!! 『集合管』とはエンジンから伸びた排気管(エキゾーストパイプ)が途中で1つにまとめられている状態を指す言葉だ。

写真はスズキ・GSX-S1000シリーズの直列4気筒エンジンとエキゾーストパイプ&マフラー。シリンダーから伸びている4本のエキゾーストパイプがまとめられて最終的に1本なっている……これが『集合管』だ。
“そんなのバイクじゃ普通じゃないの?”なんて思うかもしれないが、昔はこれが普通じゃなかった。昔とは1970年代、カワサキの名車Z1が発売されたころ。この頃までのバイクは、エンジンから伸びたエキゾーストパイプが集合することなくそのままサイレンサーへと繋がっていた。

1972年登場のカワサキ・Z1(900SuperFour)。この頃はまだ『集合管』という発想はなく、単気筒はもちろん、2気筒エンジンも4気筒エンジンもそれぞれの管で別々に排気していた。
そんなバイクの世界で初めて『集合管』を作ったのは、バイクメーカー……ではなくあのカスタムパーツで有名な“ヨシムラ”。当時、四輪の世界ではすでに『集合管』は存在したそうだが、バイクの世界に『集合管』という概念を持ち込んだのは、“ゴッドハンド”と呼ばれた名バイクチューナー・ポップ吉村(吉村秀雄)氏、その人だったのだ。

2024年の東京モーターサイクルショーのヨシムラブース。壁面にはAMA時代のポップ吉村氏の写真が掲げられた。
今では3気筒や4気筒といった多気筒エンジンに『集合管マフラーを組み合わせ、排気脈動によって出力特性を変更したり、ピークパワーを向上させたり……なんてことは当たり前となっているが、そんなバイク用『集合管』マフラーを世界で初めて作ったのがヨシムラだったというわけである。

二輪用として初めて開発された『集合管』第一号を搭載したホンダのCB750(デイトナ200マイルレース仕様車/1972年)。そのデビューは1971年カルフォルニア州のオンタリオスピードウェイだった。

このデイトナ200マイルレース仕様のCB750 K0はホンダコレクションホール所蔵品で、エキゾーストパイプを見ると4本のエキパイを1本にまとめる“4-1(4in1)”構造なのがよくわかる。
『集合管』マフラーのなにがすごいの?
エキゾーストパイプの集合させ方でキャラクターが変わる!
……ってことだ。現代では当たり前の技術となっている『集合管』マフラーであるが、その効用はエキゾーストパイプの途中でまとめて集合させることで排気干渉を起こし、“排気ガスに負圧をかけてヌケをよくしたり”、逆に“圧力をかけて混合気の吹き抜けを防いで低回転域のトルクを稼いだり”できること。以前このコーナーで紹介した「排気デバイス」も、“排気圧をコントロールしてエンジンの特性を変える”という意味では考え方が一緒だ。

ヨシムラの『集合管』“Z1チタンストレートマフラー”が取り付けられたカワサキ・Z1。ちなみにヨシムラでは『集合管』のことをサイクロンと呼んでいる。
しかも、この『集合管』の面白いところは、エキゾーストパイプをどのように集合さるかで、エンジンの出力特性が大きく変わるというところ。代表的なのは“4-1(4in1)”と“4-2-1(4in2in1)”の2つの構造であるが、その効果は真逆と言えるくらいキャラクターが違う。
高回転型で最高速重視の“4-1”構造
『集合管』黎明期からあるのが4本のエキゾーストパイプが1本にまとめられる“4-1”構造。まずエキパイをまとめることで4本出しのマフラーに比べると大幅な軽量化が行える。また4本のエキゾーストパイプの排気干渉によってエンジンのキャラクターが変化。排気のヌケがよくなることで高回転側のエンジン回転数の伸びがよくなり、結果として最高速がアップする……というのが大まかな“4-1”構造の傾向だ。その一方で排気バルブから混合気が抜けやすく(吹き抜けしやすく)なり、低回転域ではトルクが希薄になることも。

CB750(デイトナ200マイルレース仕様車/1972年)に取り付けられた二輪用の初の『集合管』が“4-1”構造。
バランス型の“4-2-1”構造
ヌケがよすぎて低回転域のトルクが希薄になったり、トルクの谷が生まれたりする“4-1”構造の欠点を補うべく、4本のエキゾーストパイプをまず2本にまとめ、さらにその後部で1本に集約させるのが“4-2-1”構造。現在主流のマフラー方式でカスタムマフラーはもちろん、市販車のノーマルマフラー含め多くのマフラーがこの“4-2-1”構造を採用している。

スズキ・GSX-S1000シリーズのエキパイも“4-2-1”構造。途中でバイパスが設けられたり更なる排気圧コントロールが行われているものの、キャタライザー手前で2本→1本にまとめられているのがわかる。
……とここでもう一度ヨシムラの『集合管』“Z1チタンストレートマフラー”が取り付けられたZ1を見てみよう。見た目に関しては『集合管』黎明期の“4-1”構造で、材質も黒の艶消し塗装が施されていたりしていかにもスチールっぽいのだが、実は見えない内部で“4-2-1”構造になっており、材質もスチールよりもはるかに軽いチタン製だったりする。つまり、見た目に関しては70年代の“当時風カスタム”でありながら、そのキャラクターは“現代的で非常に乗りやすい”いうワケである。

ヨシムラの『集合管』“Z1チタンストレートマフラー”。見た目は“4-1”構造だが、内部で“4-2-1”構造となっており、現代的な乗りやすいキャラクターを採用している。材質もチタンでものすごく薄い!
【関連記事】 バイクのソレ、なにがスゴイの!? シリーズ
エンジン系:水冷、DOHC、ハイオク、4バルブ、可変バルブ、ダウンドラフト吸気、ユニカム、デスモドロミック、過給システム、ラムエア、ターボ、スーパーチャージャー、アシストスリッパークラッチ、油冷エンジン、オートマチック変速機構① CVT、オートマチック変速機構② DCT、オートマチック機構③ e-クラッチ、オートマチック機構④ AMT、排気デバイス、集合管、
車体系:ラジアルタイヤ、アルミフレーム、ダブルディスク、ラジアルマウントキャリパー、ラジアルポンプマスターシリンダー、スポークホイール、倒立フォーク、モノショック、リンク式サスペンション、チューブレスタイヤ、シールチェーン、シャフトドライブ、プリロード調整、減衰力調整機構その①、減衰力調整機構その②、メッシュホース、モノブロックキャリパー、大径ディスク、ペタルディスク、フローティングディスク、LMW、
電子制御:フューエルインジェクション、IMU、ABS、コーナリングABS、電子制御スロットル、クルーズコントロール、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、ブラインドスポットディテクション(BSD)、クイックシフター、コーナリングライト、エマージェンシーストップシグナル、CAN通信、CAN/コントローラエリアネットワーク、ヒルホールドコントロールシステム、トラクションコントロール その①黎明期、トラクションコントロール その②FI連動、トラクションコントロール その③バタフライバルブ連動、トラクションコントロール その④ IMU連動、モータースリップレギュレーション(MSR)、バックスリップレギュレーター(BSR)、ウイリーコントロール、ローンチコントロール、電サス その①黎明期、電サス その②セミアクティブサスペンション、電サス その③ スカイフック&ジャンプ制御etc、電サス その④ オートレベリング&アダプティブライドハイト、レーダー連動UBS(ユニファイドブレーキシステム)、衝突予知警報、FCW、フォワードコリジョンワーニング、排気デバイス、
電装系:LED、DRL、MFバッテリー、リチウムイオンバッテリー、イモビライザー、スマートキー、オートキャンセルウインカー、
